2017年07月29日

Gary Moore, Back on the StreetsのUKオリジナル

ゲイリー・ムーア(Gary Moore)"Back on the Streets"のUKオリジナルをもう一枚買ってみた。


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奥が以前から持っていたもので、手前が先日入手したものである。
一見してわかるように、今回入手したものには、左上部にステッカーがない。

このステッカー、Discogsを見ると1978年にリリースされたEMI配給のUKオリジナル(MCA Records ‎– MCF 2853)のところのジャケット画像にはなく、翌1979年に配給がCBSに移ったあとの再発( MCA Records ‎– MCL 1622)のところのジャケット画像にはあるので、「UKオリジナルの初盤には貼ってあっちゃいけないんじゃないの?」と、ちょっと疑問に思ってはいた。

もちろん、以前から所有していたステッカー付の盤も、EMI配給のUKオリジナルである。
Matrix末尾は両面1Uで、竪琴のシンボルマールがあるので、ロンドンのユートピア・スタジオ(Utopia Studios)でマスタリングされたものであることがわかる。

ちなみに、CBS配給に変わったあとのCBSプレスでは、両面Matrix末尾1にBILBO TA1PE刻印(ロンドンのマスタリング・スタジオTape OneのDenis Blackhamによるマスタリング)となるようだが、これは聴いたことがない。

そういえば、CBS配給に切り替わった直後は、まだレコード番号もMCF 2853のまま、EMIから引き継いだスタンパーを使ってCBS工場でプレスされていたものがあったようなので(ジャケット裏の下部の配給表記がシールでCBSに修正されているもので、盤のほうは、レーベルはほとんど初盤と同じだが、下部のリム先頭のEMI RECORDS LTDが削られている)、いつ頃にラッカーの切りなおしが行われたのかは、ちょっとわからない。

話がちょっとそれた。
「初盤にはステッカーが貼ってなかったんじゃないか?」という話だった。

ステッカーに書いてあるのが"Includes Parisienne Walkways and Back on the Streets"というのも微妙である。
これが"Hit Single"とでも書いてあれば、("Parisienne Walkways"は先行シングルではなく、翌年にシングルカットされたものなので) 明らかに初盤には貼ってなかったことがわかるのだが、"Includes"というだけなら、初盤に貼ってあってもおかしくはない。

ってことで、買ってみたのである。
えっ?どういうことかわからない?
それは裏を見ればわかる(笑)


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奥が以前から持っていたもので、手前が先日入手したものである。
えっ?光っててよくわからない?
では、拡大しよう(わざとらしいっちゅうの 笑)


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とはいえ、この手のゴールド・プロモ・スタンプは、通常盤に押してあるだけなので、初回リリース時のプロモーション用に配られた可能性もあるが、その後の何か別のプロモーションの機会に配られた可能性もある。
まぁ、EMIのスタンプなんで、CBSに配給が移る前であることだけは確かだが・・・

そこで見るのは、9時3時である。
そう、英EMIでプレスされたレコードのRunoutの9時3時(Runoutを時計に見立ててメインのMatrixを6時に置いたときの9時と3時の位置のこと)にはマザー(9時)とスタンパー(3時)の情報がある。
英EMIの場合、1Gが最初のスタンパーだ。

そう、今回ボクが入手した盤の9時3時は、両面1G(Matrix末尾はもちろん両面1U)だったのだ。
初回リリース時のプロモーション用に配られたものとみて間違いないと思うのである。

もちろん、プロモーション用だからステッカーが貼ってないということもありえないことではないが、逆に、ステッカーがすでにできていたのなら、プロモーション用にはなおのこと貼りたくなるんじゃないかって気もする。

ラミネート・コーティングのジャケットのため剥がそうと思えば綺麗に剥がせるので断定はできないのだが、初回出荷分にはステッカーが貼ってなかった可能性が否定できないと思うのである。

ちなみに、以前から持っていた盤(Matrix末尾はもちろん両面1U)の9時3時は、2RM/1RG(24番目と21番目のスタンパー)でかなり進んでいる。

レーベルはまったく同じである。


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ただ、ステッカー以上に大問題の違いが一つあるのだ。


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以前から持っていた盤のインナースリーブは実に美しい両面ラミネート・コーティングだったのだが、今回入手したプロモ盤のインナースリーブはラミネート・コーティングではないのだ。

このインナースリーブについてはまったく情報を持っていないのだが、仮にレイトでラミネート無しのインナースリーブが存在するとしても、それが入れ替わったということは考えにくい気がする。

「中古なんだから、入れ替わった可能性は否定できないだろう」と言われればその通りなのだが、とにかくレイトっぽくないんである。
この手のインナースリーブってレコードの出し入れをするところや4つの角とかが、かなり特徴的にカットされていて、レイトになると、そのカットの具合が変わることが多いし、紙質も変わる(だいたい薄くなる)ことが多いのだが、ラミネート・コーティングのインナースリーブと、カットも紙質(紙の色自体はちょっと違うが紙の質は同じに見える)もまったく同じなのである。

ってことで、これもごく初期だけ、「インナースリーブはラミネート・コーティングじゃなかったんじゃないか?」という疑問がわいてくるのである。

そもそも、インナースリーブにまで両面ラミネート・コーティングされているのってあんまり見ない。
思い浮かぶのはクイーン(Queen)の"Jazz"ぐらいである。
そして、"Jazz"がリリースされたのが1978年11月10日で、"Back on the Streets"がリリースされた9月30日と一月ほどしか違わないのだ。

インナースリーブにまで両面ラミネート・コーティングしろなんて言い出したのはむしろクイーンで、ゲイリーのほうは「あっ、じゃ、俺も!」なんてことだったとすると、"Back on the Streets"の初回出荷分についてはラミネート・コーティングじゃなかったって可能性もあるんじゃないかと思ったりするわけである。

いやぁ、ここまで空想(妄想?)を繰り広げられるなんて、レコードってホントにいいもんですね(笑)
ラベル:Gary Moore
posted by 想也 at 16:29| Comment(6) | TrackBack(0) | Gary Moore | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月26日

Linda Ronstadt, Prisoner in DisguiseのUSオリジナル

<ツイッターでいただいたホワイト・ラベル・プロモの情報を追記しました。7月26日21時>

2週間ほど前の記事で、所有盤がレイトプレスだったことを思い出させてもらったリンダ・ロンシュタット(Linda Ronstadt)の"Prisoner in Disguise"だが、幸いなことに、早速オリジナル盤を入手することができた。

オリジナルの特徴は、表ジャケット右上の文字部分がエンボス加工されていることである。


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実にはっきりとしたエンボス加工である。
素晴らしいっ!

しかも、表ジャケットの加工は、このエンボスだけではない。
リンダの写真の部分も凹加工がなされている。


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シンプルなジャケットだが、この二つの加工だけで、ずいぶんと魅力的に変身するものだ。


さて、肝心の音のほうだが、これまた素晴らしいっ!
流石ダグ・サックス(Doug Sax)である。

ちなみに、今回ボクが手に入れたのは、西海岸のサンタマリア工場プレスの盤だった。


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レーベル右側のレコード番号の下に(CSM)とあるのがわかる。
Columbia Records Pressing Plant, Santa Mariaだから、頭文字をとるとCSMってことなんだろう。

Matrix等のRunout情報は次の通りだ。

Side 1: 7E 1045-A 1 CSM TML-M
Side 2: 7E 1045-B-6 CSM TML-S RE

Side 2がB-6と進んでいてREがついているのが気になるが、まぁ、良しとしよう。

Discogsを見ると、このレコードのプレスは、レコード・クラブ盤をのぞけば、スペシャルティ・レコ―ズ工場(SP)、アライド・レコード工場(AR)、PRCレコーディングのコンプトン工場(PRC-W)、コロンビア系列でピットマン工場(CP)・テレホート工場(CTH)・サンタマリア工場(CSM)で行われている。
(各工場はレーベル上に括弧内に示した略号で示されている。)

このうち、AR工場が使われたのは1979年以降ではないかということは前に話題にした。
そのほかにも、PRC-W工場は1975年12月にオープンした工場なので、1975年9月リリースの"Prisoner in Disguise"の初盤には間に合わない。

ってことで、初期盤は、SP工場か、コロンビア系のCP工場・CTH工場・CSM工場でプレスされたものと考えられるが、Discogs上に示されているRunout情報を見る限り(これがあんまり信用できないのではあるが)コロンビア系はすべてCSM経由のマザー・スタンパーでプレスされているようなので、初盤道的には、さしあたりSP工場産とCSM工場産に絞ってよさそうな気がする。

アサイラムは西海岸の会社だし、とりあえずCSM工場産(両面TML刻印ありということとSide 1のMatrix末尾1は間違いないだろうが、Side 2のMatrix末尾については不明 笑)を初盤としておこう。

あなたのエンボスジャケ"Prisoner in Disguise"は、どこの工場産ですか?

ツイッターで、「CTH工場産のホワイト・ラベル・プロモ(WLP)のMatrixにCSMがついている」との情報をいただいた。
他工場産のWLPですでにCSMマトだとすると、コロンビア系については、すべてのラッカーがCSM工場向けに切られたと考えてよさそうだ。
posted by 想也 at 21:42| Comment(0) | TrackBack(0) | TMLの仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月16日

Van Morrison, Into the MusicのUSオリジナル

レコード・コレクターズ8月号が届いた。
紙ジャケ探検隊の初盤道第4回は「バーニー・グランドマンの青」ってことで、ジョニ・ミッチェル(Joni Mitchell)"Blue"のUSオリジナル(Reprise MS2038)がお題である。


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ジョニの"Blue"については探検隊に任せておくとして、ボクは、もう一つの「バーニー・グランドマンの青」をとりあげよう。
ヴァン・モリソン(Van Morrison)"Into the Music"のUSオリジナル(Warner Bros. Records HS 3390)である。


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ほら、ジャケットが似てるじゃん?(笑)
まぁ、こちらはあのノーマン・シーフ(Norman Seeff)だけど。

それはともかく、これもバーニー・グランドマン(Bernie Grundman)なのかって?
答えはイエス。
「たぶん」バーニー・グランドマンのマスタリングである。

何故「たぶん」なのかと言えば、クレジットに明示されてもいないし、RunoutにBGの刻印もないからである(笑)

ジャケ裏のクレジットで、A&M Recordsのスタジオでマスタリングが行われたことまではわかる。


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ただ、バーニー・グランドマンの仕事だということまでは書いてない。

ってことで、筆跡鑑定なのである。


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この「る」に見える3が、バーニー・グランドマンの特徴だというのは以前記事にしたことがあるので、詳しくは下記をどうぞ。

http://sawyer2015.blog.so-net.ne.jp/2016-11-26

「る」に見える3が3つもあるのだ。
バーニー・グランドマンの筆跡とみて間違いないだろう。
(ちなみに、うちにあるのは、Matrix末尾LW3/LW4のキャピトル・ロサンジェルス工場産である。)

このレコード、最近手に入れたのだが、内容もすこぶる良い。
"Moondance"に匹敵する名盤と言っていいんじゃないだろうか。
その素晴らしい内容に、バーニー・グランドマンの円熟味を増してきたマスタリングの技が花を添えている。

ってことで、もう一つの「バーニー・グランドマンの青」のお話でした(笑)

そうそう、レコード・コレクターズ8月号のメイン特集になっているプリンス(Prince)"Purple Rain"のUSオリジナルも、何を隠そう、バーニー・グランドマンのマスタリングである。
(特集の記事をまだ読んでないんだけど、どっかに書いてあるのかな?)

これは、「たぶん」ではなく「確実に」彼のマスタリングだ。
だって、インナースリーブに書いてあるもん(笑)

小さい字で筆記体だから見にくいが、"Purple Rain"の歌詞のすぐ上に、"Originally Mastered By Bernie Grundman"とある。
Runoutの文字も Sheffield Lab Matrixで追記されたものはもちろんバーニー・グランドマンの筆跡ではないが、カッティングの際に書かれたとみられるMatrixは彼の筆跡だと判定できる。
(ちなみに、うちにあるのは、Matrix末尾SH2/SH1だ。)

バーニー・グランドマンの青」ならぬ「バーニー・グランドマンの紫」である(笑)

そして、レコード・コレクターズのGraphic Stationには書かれていないが、黒盤もただの黒盤ではなく・・・続きを読む
posted by 想也 at 21:18| Comment(0) | TrackBack(0) | Bernie Grundman(BG)の仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする