2018年04月30日

Hall & Oates, H2OのUSオリジナル

夕べツイッターのボクのTLで、ホール&オーツ(Daryl Hall & John Oates)"H2O"のUSオリジナルのことが話題になった。

Discogsにも、一応情報はすべて出ているようだが、あまり整理されていないので、ボクなりにまとめておこう。

このレコード、1982年のリリース当時、ボクは日本盤を手に入れた。
当時はお金がなかったので輸入盤を買うことのほうが多かったのだが、なぜだか日本盤を買った。
理由はまったく覚えていない(笑)

ってことで、うちのレコード棚には日本盤しかなかったのだが、何年か前にラディック(Bob Ludwig)の仕事を追いかけていろいろ集めているときに、これのUSオリジナルも網にかかってきて、二枚ほど手に入れたのであった。

そんなわけで、うちのレコード棚には日本盤とUS盤2枚の計3枚が並んでいる。


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日本盤だけ向きが違うのは、背表紙の位置で合わせて写真を撮ったからだ。
背表紙の位置を合わせたままひっくり返すとこうなる。


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つまり、日本盤は、ジャケットの表裏どちらも90度間違えている(笑)
日本盤のジャケットは間違えていたわけではないことが判明!
詳しくは、https://sawyer2015.blog.so-net.ne.jp/2018-08-13をどうぞ。


まぁ、日本盤のことはいいよね。ラディック・カットでもないし。

US盤はMASTERDISKでラディックがマスタリング&カッティングをしている。
RunoutにMASTERDISK RLの刻印があるし(手持ちはどちらも片面はMASTERDISKのみだが)、インナースリーブにもはっきりと記載されている。


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このインナースリーブだが、ファースト・プレスとセカンド・プレスでは、ちょっと違っている。


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手前がファースト・プレス付属のもので、奥がセカンド・プレス付属のものだ。
ファースト・プレス付属のものは光沢があり、セカンド・プレス付属のものはマット(というか普通紙印刷みたいな感じ)である。
(実は、ジャケットも、ファースト・プレスは光沢があり、セカンド・プレスにはあまり光沢がないが、これは比べないとわかりにくいかもしれない。)

なにより、ひっくり返すと、セカンド・プレス付属のものには右下端に”RE"とあるので、簡単に判別できる。


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なぜ"RE"とあるかと言えば、歌詞の掲載順序が修正されたからである。


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ファースト・プレスでは、"ONE ON ONE"→"ART OF HEARTBREAK"と収録順とは違っているが、セカンド・プレスでは、"ART OF HEARTBREAK"→"ONE ON ONE"と収録順に修正されている。
ちなみに、日本盤付属の見開きインサートは、ファースト・プレス仕様で"ONE ON ONE"→"ART OF HEARTBREAK"の順だ。


レーベルも若干違う。
字が小さくてわかり難いかもしれないが、ファースト・プレスは、左上のRCAロゴのすぐうえに"1981 RCA RECORDS"とあるのが棒線で消されている。


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セカンド・プレスには、そもそも"1981 RCA RECORDS"という記載がなく、したがって修正もない。


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セカンド・プレスでも、両面MASTERDISKで片面RL刻印なので十分に良い音だが、やはりファースト・プレスは違う。キレッキレの次元の違う音で鳴る。

ちなみに、うちにあるのはどちらもMatrix末尾はR2/R1のRCAインディアナポリス工場産だ(当然R1/R1もあると思うが、差はない気がする)。
ただし、8時あたりにある刻印が、ファースト・プレスのほうはA1のスタンプにHの手書き(A面)/A1のスタンプにfの手書き(B面)なのに対して、セカンド・プレスのほうがA41のスタンプにRの手書き(A面)/A14のスタンプにAの手書き(B面)である。
スタンパーの若さは相当に違っている。

300円くらいでゴロゴロ転がっているレコードだと思うので、ファースト・プレスを見つけたら、ぜひお試しあれ。
posted by 想也 at 14:49| Comment(0) | Bob Ludwig(RL)の仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月22日

レコードのレーベル形状

ツイッターのボクのTLで、レーベル形状がプレス機由来なのか、スタンパー由来なのかということが話題になった。

たとえば、次の写真は、いずれもレッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)『聖なる館(Houses of the Holy)』のUKオリジナル、Matrix末尾A2/B2の盤のレーベルなのだが、中央にあるドーナツ盤のアダプターぐらいの大きさの円が、一枚目は二重に、二枚目は一重になっている。


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この形状の違いが、プレス機に由来するものなのか、それとも、スタンパーに由来するものなのか、という話だ。

問題は、プレス機にとりつけるスタンパーに、どのくらいの穴が開いているかってことだ。
YouTubeを探してみると、1950年代のRCA Victor Presentsの動画が見つかった。





15分15秒くらいのところにスタンパーが出てくるが、けっこうでかい穴があいている。
このぐらいの穴が開いているとすると、その内側にあたるレーベルの形状はプレス機由来ということになる。

これを前提に考えると、50年代のレコードのDGなんかは、プレス機由来ということになる。

もっとも、こういうのは時代によって違うということもある。
実際、比較的最近(2000年頃)の東洋化成でのプレスの工程を記録した動画を見てみると、スタンパーの穴はずっと小さい。





9分30秒くらいのところにスタンパーが出てくるが、穴の大きさはドーナツ盤のアダプターぐらいだ。
この穴の大きさとレーベル中央の円はほぼ同じ大きさってことになる。

こうなると、プレス機の取り付け軸の外周が2段になっているのか、それともスタンパーの穴の周囲が二段になっているのか、という微妙な話になるが、よく見ると、二重のほうの内側の円が一重の円と一致しているので、どうやらスタンパーの穴の周囲が二段になっていると考えるほうが合理的な気がしてきた。

スタンパーの穴がドーナッツ盤アダプター程度なら、レーベルが外側に向かって二段になっているのはもちろんスタンパー由来ということになる。
こうしたスタンパーの形状変化は、プレス機にとりつけるための穴を開けるときに、その穴開け機によって穴の周囲にかけられる圧力で生じる、スタンパーの変形に由来するものなんじゃないだろうか。
もちろん、それは、二段レーベルとか凸リムレーベルとかを考えれば明らかなように、意図的な変形だろう。

そう考えると、いろんなことに合点がいくのだ。

60年代以降のレーベル中央にドーナツ盤アダプター相当の円があるレーベルの場合、レーベル形状のほとんどはスタンパー由来だが、それは穴をあけるための機械によって起こるスタンパーの形状変化に由来する。
このスタンパーに穴をあける機械が工場によって違うと、工場違いでレーベル形状が違うということが起こるんじゃないかと思うのである。

もっとも、話を最初の『聖なる館』UKオリジナルの話に戻すと、二重円のレーベルは、Side1だけが二重円でSide2は一重円なので、実は、このスタンパーの穴開け機由来説が妥当しない(笑)
外側に向かって二段になっているのは、穴開け機由来だと思うのだが、中央の二重円は、案外、プレス機に上側のスタンパーを固定するときに、落ちてこないように軸周りにはめる留め具のようなものに由来するんじゃないかと思うのだが、どうだろう?

さて、真相やいかに?(笑)
posted by 想也 at 17:46| Comment(2) | アナログ・コレクターの覚書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする