2018年08月19日

Joe Sample, Rainbow SeekerのUSオリジナル

ジョー・サンプル(Joe Sample)"Rainbow Seeker"(邦題は『虹の楽園』)というアルバム、内容が素晴らしいだけでなく音も良い。
おまけに、ノーマン・シーフ(Norman Seeff)の写真を使ったジャケットも秀逸で、まさに三拍子そろった名盤である。
しかも、USオリジナル(ABC Records ‎AA-1050)が格安でそのへんにゴロゴロ転がっている。
アナログ・コレクターにとっては実においしいレコードである。


20180819-1.jpg


しかし、ゴロゴロ転がっているだけに、いろいろ落とし穴がある。
何を隠そう、ボクもつい最近までこのレコードの落とし穴にはまっていて、ようやく脱出できたところなのだ。

最初の落とし穴はレーベルである。

最初にボクが買ったレコードは、A面とB面でレーベルデザインが違っていた。
A面は、黒丸の中にabcの入ったロゴがトップにあるマルチカラー・ターゲット・レーベルだった(便宜上「黒丸レーベル」と呼ぶ)。


20180819-2.jpg


そして、B面は、音符の中にabcの入ったロゴがトップにあるマルチカラー・ターゲット・レーベルだ(便宜上「音符レーベル」と呼ぶ)。


20180819-3.jpg


ABCレコードのレーベルは70年代後半に、黒丸レーベルから音符レーベルに変更されたのだが、問題はいつ変更されたのかだ。

Goldmine第3版の簡易レーベルガイドを見ると、1977年中に黒丸レーベルから音符レーベルに変更されたことになっている。
この記述が正しいとすると、"Rainbow Seeker"のリリースは1978年だから、音符レーベル初盤でいいはずである。
そうだとすると、ボクが持っているレコードのA面が黒丸レーベルなのは、音符レーベルに切り替わったばかりの頃に残余レーベルが使われたためということになる。

これが一つ目の落とし穴だ。

Goldmineといえども簡単に信用してはいけない。
試しに、オークションサイトとかで、"Rainbow Seeker"を検索してみてほしい。
両面黒丸レーベルのレコードが山ほど出てくる。
"Rainbow Seeker"が78年の何月にリリースされたのかわからないのだが、少なくともこのレコードがリリースされたときにはまだ黒丸レーベルが使われていたと考えるのが自然だ。

いずれにせよ、このレコードの初盤は、両面黒丸レーベルだろう。

実際、ボクが以前から持っていたレコードのMatrixは次のようなものだった。

A面: AA 1050A-1B
B面: AA 1050-B 1A 1C RE

初盤にしては、B面のMatrixが怪しすぎる(笑)
それによくよく見ると、A面とB面では筆跡が違う。
このレコードは、A&MスタジオでBernie Grundmanがマスタリングしたとクレジットされているのだが、A面は確かに彼の筆跡だと判定できるものの、B面の筆跡はどうも彼の筆跡ではない。

REとあるのはおそらくリカッティングで、BG以外の別のエンジニアの手によるものだろう。
これはもうセカンド・プレス確定である。

このレコード、A面ラストの"Melodies of Love"がとにかく名曲として有名だが、B面ラストの"Together We'll Find a Way"も美しさでは負けていないし、ボクは後者のほうが好きなんである。
ファースト・プレスはおそらくB面もBGカッティングだろうと思ったら、もう居ても立ってもいられなくなってしまった。

で、両面黒丸レーベルを探していたのだが、ここにもう一つ落とし穴があった。
もっとも、ボク自身は、この落とし穴は避けられたのだが、それは偶然にすぎない。

そのへんにゴロゴロしているレコードである。
探そうと思えば両面黒丸レーベル盤も簡単に見つかる。
かくして、ボクも簡単に両面黒丸レーベル盤を手に入れた。
A面はまったく同じだったので、B面の写真のみ載せておこう。


20180819-4.jpg


このレコードのMatrixは次のようなものだった。

A面: AA 1050A-1B
B面: AA 1050B-1A

B面の筆跡もBGのものに間違いない。
両面末尾1Aもあるかもしれないが、まぁ、これもファースト・プレスでいいだろう。

それより、問題はジャケットである。
裏ジャケットが、以前持っていたものと違うのだ。


20180819-5.jpg


向かって左側(右端のクレジットが少ないほう)が今回手に入れたもので、右側(右端のクレジットが多いほう)が以前から持っていたものだ。
何故これほどクレジットの量に違いがあるかと言えば、左側は誰がどの楽器を演奏しているのかのみのクレジットであるのに対して、右側はどの曲でやっているのかも書いてあるからだ。

いずれにも、西海岸のサンタマリア工場プレスの盤が入っていたから、地域による差ではなさそうだ。
ということは、時間的な差ということになる。

クレジットの量をわざわざ減らす変更というのも考えにくい。
むしろ、ファースト・プレスのリリース後、「誰がどの曲でやっているのか、ちゃんとクレジットしろ」というリクエストがあって、裏ジャケットを変更したと考えるのが自然だ。
したがって、クレジットの少ない左側が初盤ジャケットの可能性がきわめて高い。

ここで問題は裏ジャケットの変更がいつ行われたかだ。
Discogsやオークション・サイトに山ほど出ているものをチェックしてみると、まぁ数がけっこう出ているので、ちょこちょこ初盤ジャケットも出ているが、両面黒丸レーベル盤でもジャケットについてはクレジットの多いセカンド・ジャケットというパターンもかなり多く見つかる。
黒丸レーベルってだけで探すと、セカンド・ジャケットの盤を掴む可能性もかなり高そうなのだ。

これが、二つ目の落とし穴である。
ボクはたまたま運よく落ちなかったが、けっこうな確率で落ちそうな落とし穴だ。

まぁ、セカンド・プレスでも三拍子そろった名盤であることに違いはないんだけどね(笑)
posted by 想也 at 21:21| Comment(0) | Bernie Grundman(BG)の仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月15日

終戦の日

終戦の日である。

平和を祈りながら、今年はこのレコードを聴こう。


20180815-1.jpg


UKオリジナルやUSオリジナルはときどき引っ張り出して聴くので、今日はミレニアム・エディションで聴いてみる。

ときどきは聴いてあげないとねぇ。
って、買ったとき聴いて以来の気もするけど(笑)

"Imagine"を聴くつもりでかけたレコードだけど、大音量で降り注ぐ音に身を任せていたら、"I don't wanna be a soldier mama"に宿る強烈なメッセージ性に初めて気づいてしまった。

「兵隊になんかなりたくないんだ」って叫んでいるのは、ジョンじゃない。
未来の子ども達なんだな。
いろんなことが全部腑に落ちたよ。

"Imagine"が理想の世界をソフトに思い描く歌だとしたら、"I don't wanna be a soldier mama"は、未来の子どもたちの視点から、いまのままでは行きついてしまいかねない残酷な未来を痛烈に描き出す歌なわけで、この二つの歌は表裏の関係にあるわけだ。


さて、"Imagine"といえば、エヴァ・キャシディ(Eva Cassidy)のカバーも聴いておかないとね。


20180815-2.jpg


エヴァの歌は、いつ聴いても、心の奥の奥まで沁みてくるなぁ・・・
posted by 想也 at 20:20| Comment(0) | ETC | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月13日

Hall & Oates, H2Oの日本盤

先日、ぶらりと寄ってみた近所のレコード屋で、ホール&オーツ(Daryl Hall & John Oates)"H2O"の日本盤見本盤を手に入れた。


20180813-1.jpg


「これ、ホントに欲しいのか?」と自問自答しつつ、「見本盤」とか「プロモ」とかいう言葉に、すこぶる弱くなっている今日この頃なのである(笑)
まぁ、でも、高ければ思いとどまるんだが、これは安かったしね。

で、ジャケに見本盤シールが貼ってあるだけでなく、レーベルにもちゃんと「見本盤」と印刷してある。


20180813-2.jpg


Runoutを見ると、A 111/B 111だ。
手持ちの日本盤はA 117/B 116だったから、流石見本盤である。

盤自体は通常盤と同じく半透明盤で、透け方もまったく同じだ。
ってことで、2枚並べて撮ってみた。


20180813-3.jpg


音は日本盤らしい優等生的なものだが悪くない。
というか、ずっと日本盤で聴いてきたので、こっちのほうが慣れ親しんだ音ではある(笑)
RLカットでキレッキレのUSオリジナルではなく、日本盤を聴きながら昔を懐かしみたい日もある(かもしれない)。

っていうか、そんなことより、前の"H2O"に関する記事の中で一つ訂正しなければならないことを発見したのだった。


20180813-4.jpg


背表紙を基準にして撮ってみたので、この写真でわかるだろうか。
帯付きが前から持ってた日本盤で、上に載ってるのが見本盤だ。


20180813-5.jpg


ひっくり返すとこんな感じ。

そう、前の記事でボクは、「日本盤は、ジャケットの表裏どちらも90度間違えている」と書いたが、日本盤も最初はUS盤と同じだったのである。
つまり、「90度間違えた」のではなく、後から「あえて90度ずらした」んだと思う。

でも、どうしてこんな変更をしたんだろう?
なにか手がかりがないかとジャケを眺めていて、ボクはあることに気づいた。

この謎は、日本盤にあって、US盤にないものに気づくと解けるのだ(そんな大げさなもんじゃない 笑)続きを読む
posted by 想也 at 23:32| Comment(0) | アナログ・コレクターの覚書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする