2018年10月12日

Caravan, In the Land of Grey and PinkのUKオリジナルとその周辺

<THE PARLOUR BANDに関する貴重な情報をいただいたので、追記しました。>(2018年10月7日)
<キャラバン『グレイとピンクの地』とダリル・ウェイズ・ウルフ『Canis-Lupus』に関する情報をいただいたので、追記しました。>(2018年10月12日)

キャラヴァン(Caravan)『グレイとピンクの地(In the Land of Grey and Pink)』のUKオリジナル初盤に関する記事を書いてから、すでに1年になる。
その後、新たにいただいた情報もあるし、別のレコードを掘ったり別の角度から調べてみたりして明らかになった事実もあって、少しばかり研究が進められた気がするので、このレコードとその周辺についてあらためて書いてみたい。

まず、『グレイとピンクの地』UKオリジナルの情報をまとめておこう。 ボクが所有している3枚に加えて、11枚分の情報をいただいたところまでは、随時更新して追加していたが、その後4枚分の情報をいただいている。
つまり、現時点で18枚分の情報になっているというわけだ。
(さらに1枚の情報が増えて、19枚分の情報になりました。2018年10月12日)
















































































































































レーベルSide1のマザー・スタンパーSide2のマザー・スタンパーCSの日付情報提供者
茶デラ小1 B1 UCSなしたっとんさん
茶デラ小1 U1 BCSなしハウさん
茶デラ小1 U1 C71年8月xxxeizoooxxxさん
茶デラ小1 C1 I71年4月オオヒラヒロモトさん
茶デラ小1 K1 UCS?71年特撮ピストルズさん
茶デラ小1 K1 U71年3月マイクさん
茶デラ小1 N1 UCSなし紙ジャケ探検隊さん
茶デラ小1 N1 U71年5月Rumblin' Boysさん
茶デラ小1 A1 CCSなし他力本願寺さん
茶デラ小1 G1 H71年9月Sawyer
茶デラ大1 BC1 M71年11月Neuさん
茶デラ大1 BC1 BUCS日付なしマイクさん
赤デラ小1 UB1 BI73年8月Sawyer
赤デラ小1 BU1 UU73年9月ハウさん
赤デラ小1 KC1 CA75年10月Rumblin' Boysさん
赤デラ小1 KC1 CA75年10月xxxeizoooxxxさん
赤デラ小1 IB1 IM76年3月Neuさん
赤デラ小1 IG1 KMCSなしSawyer
赤デラ小1 NN1 II78年7月Rumblin' Boysさん


この18枚分19枚分の情報を素直に読み解けば、『グレイとピンクの地』は、1971年4月に茶デラ小レーベルで初盤がプレスされた後、71年の暮れか72年の初頭には茶デラ大レーベルでリリースされ、さらに、72年中か少なくとも73年8月頃までには赤デラ小レーベルでリリースされたということになると思う。


少し角度をかえて、『グレイとピンクの地』から始まるDERAMのSDLシリーズに関する情報を見てみよう。

レコード番号、リリース年月、アーティスト、タイトルの基本情報は、Record Information ServicesのDERAMの下記ページを参照した。

http://www.record-information-services.info/uk_labels_discography/LPs/a-d/deram_LPs.html

レーベル・デザインの確認は手持ちで確認できたものもあるがそれはごく僅かなので、基本的にはDiscogsとebayで地引網チェックしたものである。
〇が存在を確認したもので、存在を確認していないものは空欄になっている。
(〇がついていないもので存在を確認できるという情報をお持ちの方は、ぜひお知らせください。もちろん、UK盤のみの話です。)





















































































































































レコード番号リリース年月アーティストタイトル茶小茶大赤小
SDL-R 1Apr-71CARAVANIn The Land Of Grey And Pink
SDL 2Apr-71KEEF HARTLEY BANDOverdog 
SDL 3Sep-71MILLER ANDERSONBright City〇   
SDL 4Oct-71KEEF HARTLEY BIG BANDLittle Big Band〇   
SDL 5Feb-72CHICKEN SHACKImagination Lady〇 〇 〇 
SDL 6Mar-72JERUSALEMJerusalem 〇 〇 
SDL 7May-72MELLOW CANDLESwaddling Songs 〇  
SDL-R 8May-72CARAVANWaterloo Lily 〇 〇 
SDL 9May-72KEEF HARTLEY BANDSeventy Second Brave  〇 
SDL 10Jun-72THE PARLOUR BANDIs A Friend?  〇 
SDL-R 11Jun-72KHANSpace Shanty  〇 
SDL-R 12Oct-73CARAVANFor Girls Who Grow Plump In The Night  〇 
SDL 13May-73KEEF HARTLEYLancashire Hustler  〇 
SDL 14May-73DARRYL WAY'S WOLFCanis-Lupus  〇 
SDL 15Feb-77JUSTIN HAYWARDSongwriter  〇 

※『グレイとピンクの地』のようにレコード番号にRがついているのは、"Restricted"を表すデッカ・コードで、(当該アーティストがその国で別のリリース契約をしているなどの理由で)特定の国々への輸出が制限されているレコードであることを意味する。

<xxxeizoooxxxさんからTHE PARLOUR BANDに関する情報をいただき、空白だった部分が埋まりました。―2018年10月7日>


このSDLシリーズの情報を素直に読み解けば、SDLシリーズにおいては、71年4月の『グレイとピンクの地」から72年2月のチキン・シャック(CHICKEN SHACK)"Imagination Lady"まで茶デラ小レーベルでリリース、72年3月のエルサレム(JERUSALEM)から72年5月のキャラヴァン"Waterloo Lily"まで茶デラ大レーベルでリリース、その後同月のキーフ・ハートリー・バンド(Keef Hartley Band)"Seventy Second Brave"以降は赤デラ小レーベルでリリースということになるだろう。

この情報は、『グレイとピンクの地』の情報と一致する。
したがって、SDLシリーズのレーベルの変遷は、次のように考えるのが合理的だと思う。

71年4月から(SDL-R1から)72年2月まで(SDL-5まで)―茶デラ小レーベル
72年3月から(SDL-6から)72年5月まで(SDL-R8まで)―茶デラ大レーベル
72年5月以降(SDL-9以降)―赤デラ小レーベル

このレーベルの変遷は、茶デラ・レーベルには、小レーベルでも大レーベルでも、DERAMロゴの右下にRマークがついていないという事実によっても補強される。

確かに、DERAMのシングルなどを見ると(調べやすかったのでWhite Plainsで調べた)、1971年の半ば頃にはRマークがつくようになるようだ。
しかし、LPでは、73年になってもRマークがついていないものが存在する。

ここにダリル・ウェイズ・ウルフ(DARRYL WAY'S WOLF)"Canis-Lupus"のUKオリジナルが2枚ある。

20181006-1.jpg

何故二枚あるかといえば、あるとき、そのとき持っていた盤について、Rマークが片面にしかないことに気づいたからである。
片面にしかないのなら、両面にないやつもあるんじゃないかと思って探してみたら、運よく発見したので買ってみたのだ。

20181006-2.jpg
20181006-3.jpg
<最初に買った盤のSide1にはRマークがないがSide2にはRマークがある。)


20181006-4.jpg
20181006-5.jpg
<両面ともRマークのない盤>

どちらもメインのMatrix末尾は両面P-1だが、片面Rマーク付きのスタンパーは1G/1H(CSの日付は73年5月)、両面Rマーク無しのスタンパーは1K/1Uである(CSではなく当時の汎用ISなので日付はない)。
このアルバムのリリースは73年5月なので、ごく初期の段階で、R無しからR付へと変更されたのだと思う。

(その後、1 BN/2B BGというスタンパーの盤が両面R付だという情報をいただきました。私の仮説と矛盾しないもので、一応補強証拠といえるかと思います。)

では、LPでは73年の半ばにR付きになったと言い切っていいかというとそういうわけでもない。
というのは、Rというのは登録商標マークであり、その登録は国ごとに行われるものだからだ。

商標登録が済んでいる国ではRマークをつけてよい(つけなくてもよい)。
商標登録が済んでいない国ではRマークをつけてはならない。
これが原則だったはずだ。

シングルは基本が国内向けなので、英本国で商標登録が済んでいればRマークをつけることができる。
LPでも、まったく輸出の予定がない完全に国内向けのものであればRマークを付けることができる。

しかし、輸出が想定されているLPは、輸出先のすべての国での商標登録が済んでいなければRマークをつけることができない。
"Canis-Lupus"で言えば、ドイツや北欧に輸出されることが想定されているから、これらのすべての国で商標登録が済んでいなければRマークがつけられない。

つまり、英国内の商標登録は71の半ばには済んだが、ヨーロッパ諸国における商標登録が済んだのは73年の半ばだったということなんだと思う。
ってことで、輸出の可能性があるLPは、73年半ばまでRマークがついていないのである。

茶デラの小にも大にもRマークがついていないのは、最初は英国内でも商標登録が済んでいなかったからだろうし、71年の半ばからは、輸出の可能性があったためにつけられなかったということなのだろう。

赤デラ小になったあとも、73年の半ばまではRマークなしでリリースされていたはずである。
つまり、Rマークがついた赤デラ小のレコードは、まったく輸出の予定がない完全に国内向けのものでなければ、73年半ば以降のプレスである。

そこで、一瞬慌てた貴方!
大丈夫、キャラヴァンの『夜ごとに太る女のために』は、レコード番号は若いけれど73年10月リリースなので、R無しレーベルは存在しない(はず)。


<追記>

記事をアップした後に気づいたことがあるので、ちょっと追記である。
キャラヴァンの『夜ごとに太る女のために』は73年10月リリースだからR無しレーベルは存在しないはずと書いたが、逆に、キャラバンの場合は、それ以前でもR付きレーベルしか存在しないかもしれない。

というのも、キャラバンはレコード番号に付されるR(同じRでややこしいが、商標登録のほうではなくデッカ・コードのほうね)が付く、輸出制限がかかったアーティストである。
ってことは、そもそもUK盤は「まったく輸出の予定がない完全に国内向けのもの」であった可能性がある。
実際、手持ちの赤デラ小には、ドイツや北欧の著作権管理団体の表示がない。
だとすると、72年5月頃に赤デラ小に変更になった直後からR付きでリリースされていたとしてもおかしくないということになる。
同じことは、KHANについても言える。

そんなわけで、KHAN, "Space Shanty"のUKオリジナルはR無しだとは言いません(笑)


<追記2>(2018年10月7日)

Discogsにもレーベル写真がなく、ebayにも出品がなくて確認できなかったTHE PARLOUR BAND, "Is A Friend?"について、xxxeizoooxxxさんから情報をいただいて、情報の空白を埋めることができた。

しかも、しっかりR無しレーベルで、ボクの仮説が裏付けられている。


The Parlour Band.jpg


KHANは、上述の通り、レコード番号にR付きの輸出制限のかかったアルバムなので初盤から登録商標を示すR付きレーベルだったかもしれない。
しかし、KEEF HARTLEY BANDの"Seventy Second Brave"、KEEF HARTLEYの"Lancashire Hustler"あたりについては、DiscogsでもebayでもR付きレーベルしか確認できなかったが、初盤はR無しレーベルだった可能性が否定できない。

というか、THE PARLOUR BANDのR無しレーベルの存在が明らかになったことによって、その可能性がますます高まったんじゃないだろうか。
posted by 想也 at 23:18| Comment(0) | アナログ・コレクターの覚書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする