ロキシー・ミュージック(Roxy Music)の” Flesh + Blood”もそうである。
このアルバムのオリジナルは米盤である(断言)。
まぁ、ボクだって最初は、英盤(POLYDOR SUPER DELUXE – POLH 002)がオリジナルだと思ったんである。
だから、日本盤(POLYDOR EG – MPF 1316)を卒業するために手に入れたのは英盤だった。

(日本盤(帯なしだけどね)と英盤。)
ニス塗りで光沢のあるジャケットはいかにもオリジナルらしい風格を醸し出しているし、インナースリーブも厚手の紙でがっしりと作られていて、これまたいかにもオリジナルらしい。

(英盤はニス塗り光沢ありで実に美しい。)

(インナースリーブも厚手でがっしりとしている。)
Matrix末尾はA1/B2だったが(A1/B1も存在するらしい)、A・Bというサイド表記がないレーベルだったので、たぶん初回マトのバリエーションだと思う(中央左に大きくA・Bとサイド表記があるレーベルもあるが、サイド表記有りから無しへの変更は考えにくいので、無しのほうが先だろう)。

(手持ちは、サイド表記がないレーベル。中央左に大きくAまたはBとサイド表記のあるレーベルも存在する。)
しかし、英盤はオリジナルではない。
なぜなら、STRAWBERRY MASTERINGでカッティングされているからである。

(英盤アーリー・プレスのSTRAWBERRY刻印。レイトのマト4あたりから、420 M表記のMASTER ROOMカッティングになるようだ。)
英盤の裏ジャケットにも、ほら、MASTERED by ROBERT C. LUDWIG at MASTERDISCって書いてあるじゃん!
オリジナルはRLカッティングじゃなきゃいけないんである。
(MASTERDISKの最後のKがCになっている間違いがあるのは日本盤も英盤も米盤もすべて同じ。)

(英盤の裏ジャケット。日本盤にもこのクレジットはあるが、もちろんRLカットではない。)
もちろん、英盤もマスタリングまではMASTERDISKでやって、カッティングのみSTRAWBERRYだったという可能性はある。
しかし、そうだとしても、米盤がカッティングまでMASTERDISKだとしたら、やはり米盤がオリジナルってことになるだろう。
ってことで、米盤(ATCO Records – SD 32-102)を買ってみた。
Matrix末尾は両面Cの東海岸Specialty Recordsプレスである。
MASTERDISK RLの刻印が両面にある。

(最初に買った米盤。何かが違う 笑)

(米盤のMASTERDISK RL刻印。)
いやぁ、素晴らしいっ!
英盤もそれだけ聴いていれば十分素晴らしい音なのだが、RLカッティングの米盤はさらに輪をかけて素晴らしい。
しかーし、この米盤、大事なものが欠けている。
そう、レコードがおさめられていたのは、オリジナルのインナースリーブではなく、カンパニースリーブだったのである(「何かが違う」の答えです)。
オリジナルのインナースリーブがあるのにカンパニースリーブが使われているのは、多くの場合、レイト・プレスだ。
オリジナル・インナースリーブ付属の完品が欲しいというのもあるが、とにかくアーリー・プレスが聴いてみたくて我慢できなくなってしまった。
そんなわけで、オリジナル・インナースリーブ付きを手に入れた。
Matrix末尾が両面Cの東海岸Specialty Recordsプレスで、両面にMASTERDISK RLの刻印がある点は、レイト盤とまったく同じである。

(インナースリーブ付き完品の米盤。これは果たして初盤なのか?)
しかし、この盤、さらに輪をかけて素晴らしい音で鳴る。
個々の楽器の輪郭が明快で、一点の滲みもない。
比べなきゃレイトだって十分素晴らしい音だが、このアーリー・プレスを聴いてしまったら、もうレイトには戻れない。
スタンパーがへたってないって、なんて素晴らしいんだろう!
あとから気づいたことだが、実はこの盤、単にアーリーというだけでなく、ホントの初回盤かもしれない。
アーリーとレイトのレーベルを比べてみよう。

(レイト盤のレーベル。)

(アーリー盤のレーベル。)
そう、レイト盤にはレーベル中心部にぐるっとエンボスでEASTと記されているが、アーリー盤のほうにはこれがない(このEAST、存在する場合でも片面にしかないが、アーリー盤は両面にない)。

(レイト盤のEAST刻印を拡大してみよう。)
このエンボスのEASTはSpecialty Recordsでプレスされたことを示すものであるが、いつから使われるようになったのか、Discogsとかを見ても明記されていない。
仕方がないので、アトランティックとかアサイラムとかワーナーとかSPプレスを地引網的に調べてみると、ボクが見つけた限りでは、80年6月24日リリースのジャクソン・ブラウン(Jackson Browne), “Hold Out”のWLPに最初にこのEASTが現れる。
“Flesh + Blood”のリリースは80年5月23日なので、わずか一か月後だ。
このEAST、位置的にプレス機由来だと思われるが、おそらく上側に設置するスタンパーが落ちてこないようにするストッパーに凹で刻まれていたものだろう(だから片面にしかない)。
そうだとすると、この種のものはある時期から一斉交換で使われるようになったと考えるほうが合理的だと思う。
ってことで、“Flesh + Blood”の場合、EASTが刻まれていないのは、ホントの初回盤だけなんじゃないかと思うのである。
Specialty RecordsプレスのEAST刻印の開始時期については、地引網調査による暫定的なものなので、何か情報をお持ちの方はぜひご提供くださいな。
ラベル:ROXY MUSIC Bob Ludwig