2018年12月30日

King Crimson, In the Court of the Crimson KingのUKオリジナル

以前、『宮殿』(言うまでもなく、キング・クリムゾン(King Crimson)『クリムゾン・キングの宮殿(In the Court of the Crimson King)』のこと)のUKオリジナル(Island Records ILPS 9111)のことを記事にしたことがあるが(https://sawyer2015.blog.so-net.ne.jp/2015-10-11-1)、そこで問題にした「マト2/2のレーベル違い問題」は、その後、問題がすっかり解決したのに、まったく報告していなかった。


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(『宮殿』のUKオリジナル、ピンクiレーベル盤は、手元に3枚ある。)



まず、問題を確認しておこう。

『宮殿』のUKオリジナル、ピンクiレーベルのマト2/2盤については、次の二つの事実が確認できる。

・レーベル形状の違う2種類のものが存在する。
・Runoutは下記の1種類しかない。
  Side A ILPS 9111 A▽2 1 4
  Side B ILPS 9111 B//2 1 5


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(『宮殿』マト2/2のレーベル形状その1。リム以外の全体がテクスチャー加工のもの。)



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(『宮殿』マト2/2のレーベル形状その2。中央部分のみテクスチャー加工のもの。)



Runoutが1種類しかないことから、ボクは、スタンパーが1枚しか存在しなかったという前提で考えた。
スタンパーが1枚しかないのなら、レーベル形状の違いはプレス機由来ということになる。
そうすると、同時期に2種類のプレス機が同一工場にあって、1枚のスタンパーを使ってプレス機をかえながらプレスしたということになる。

でも、一つの工場に二種類のプレス機があるなんてことがあるんだろうか?
仮にあるとしても、どうして別のプレス機でプレスしたんだろう?
ここで壁に突き当たって、先に進めなかったのだった。

しかし、この推論は、最初から間違っていた。

Runoutが1種類しかないからといって、スタンパーが1枚しかないとは限らない。
そもそも、このPhonodisc Ltd.(イギリスにある、フィリップス系のプレス工場)・カッティングのマトでは、A▽2やB//2などのラッカーを示す数字のあと、最初の数字(1しか見た記憶がない)がマスター、次の数字がマザー、その次の数字がスタンパーを示すはずで、最低限3つの数字が並んでいないといけないのである。
つまり、A▽2 1 4とかB//2 1 5とかは、ありえないのだ。


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(『宮殿』のマト2/2盤のSide 2のRunout。凸(マスター)の1と凹(マザー)の5のあとに、凸(スタンパー)の数字がなければならないのに、存在しない。)


ありえないと言ったって、実際に存在しているわけで、では、いったい何故そんなことが起こったんだろうか?

この謎を解くカギは、レーベル形状に隠されている。
リム部分を除いて、全体にテクスチャー加工されたようなこのレーベルは、Orlake Records(イギリスのプレス工場で、Movilex Ltd.というプラスチック会社の子会社)でプレスされたレコードの特徴である。

Orlakeはカッティングもやっているが、その場合は、Matrixが+A/+Bというような感じで+がつく。
そして、ここが重要なのだが、Orlakeでカッティングおよびプレスされたレコードは、そのラッカーを示す文字のほかには、Runoutには何も刻まれない。
マザーやスタンパーを示す数字は刻印されないのである。


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(Fairport Convention, What We Did On Our Holidays-Island Records ILPS 9092のRunout。マザーやスタンパーを示す数字は刻まれていない。)


つまり、こういうことだ。
『宮殿』の場合、Matrixの打ち方からして、Phonodiscでカッティングが行われたんだろう。
とりあえず、マト2/2でGoサインが出て、委託プレスを依頼していたOrlakeには、1 4(Side 1)と1 5(Side 2)のマザーが送られた。

ところが、マト2/2にストップがかかり、Phonodiscでは再度カッティングが行われた。
そこでGoサインが出たのは、マト2/3、マト2/4、マト3/3だったが、Orlakeには新たなマザーは送られず、そのままマト2/2でプレスされた。

マト2/2のRunoutが1種類なのは、Orlakeでは、マザーやスタンパーを示す数字をRunoutに刻印しないのがルールだったからである。
実際には、スタンパーは何枚も作られていたはずだ。

レーベル形状が異なっているのは、スタンパーが作られた時期が違っていたからだ。
当然、リム以外のレーベル全体にテクスチャー加工があるものが初期で、中心部分のみテクスチャー加工なのはレイトである。

Orlakeはずっとこのマト2/2のスタンパーでプレスしていた。
ピンク・リム・レーベルあるいは島レーベルと呼ばれるレーベルにデザインが変更された後もマト2/2のスタンパーでプレスしていたので、ピンク・リム・レーベル(島レーベル)の2/2というのも存在するわけである。

さて、マト2/2がOrlakeの委託プレスだとすると、オリジナル・ファーストプレスの条件の一つにオリジナル工場のプレスであることを加える考え方では、条件を欠くことになる。
つまり、Phonodiscプレスのマト2/3、マト2/4、マト3/3の盤がオリジナル・ファーストプレスというわけだ。

とはいえ、同じカッティングならともかく、Side 2についてはマトが進んでいる。
Phonodiscプレスをオリジナル・ファーストプレスとした場合、Orlakeプレスのマト2/2はボツカッティングのテスト・プレスみたいなもんである。
鮮度的には、有利だ。
Side 2のカッティングも、ボクは、マト2のほうが好きだ。

まぁ、ボクがマト2/2盤を手に入れた15年くらい前に比べると、いまやバカ高くなっちゃってるので、あんまりオススメはできないんだどね・・・
ラベル:King Crimson
posted by 想也 at 21:30| Comment(0) | アナログ・コレクターの覚書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月24日

ラスト・クリスマス

毎年、クリスマス・イブの夜は、それなりにクリスマスらしく過ごしているが(ボクの場合、クリスマスらしい音楽をかけて、クリスマスらしい食事を用意するというだけだけどね 笑)、クローゼットの奥にしまい込んだ大きなツリーを引っ張り出して飾り付けるようなことは、もう何年もやっていない。

あのツリー、最後に飾り付けたのは、もう7年も前になるんだなぁ。

昨日、ガラにもなく恋の記憶と戯れていたせいか、7年前のクリスマス・ホーム・パーティーのことをいろいろ思い出してしまったよ。

で、あのパーティーの間ずっとかけていたこのCDを久々に聴いている。


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デンマークのジャズ・シンガー、マレン・モーテンセン(Malene Mortensen)が2008年にリリースしたクリスマス・アルバム"To all of you"だ。


ボクの持っている日本盤CD(T.A.C.S. records TACM-0001)は、ダニー・ハサウェイ(Donny Hathaway)の"This Christmas"のようなクリスマス・ソングやジュリー・ロンドン(Julie London)の"Warm December"のようなウインター・ソングの定番を10曲収録した本編(カーペンターズ(Carpenters)の"We're Only Just Began"(邦題「愛のプレリュード」)もやっている)にくわえ、ボーナス・トラックとしてライブ音源が5曲収録されている("Desperado"のライブ・バージョンも聴ける)のだが、やっぱり"Last Christmas"に胸が締めつけられてしまうな。


いま知ったのだけど、デンマーク盤オリジナルでは本編が16曲で日本盤より6曲多く、フランス盤は、ライブ音源9曲入りのボーナスCD(日本盤のボーナストラックより4曲多い!)がついた2枚組スペシャル・エディションでリリースされてたみたいだ。
このフランス盤のほうを買えばよかったな(笑)



(画像をクリックするとAmazonにとびます。)
ラベル:Malene Mortensen
posted by 想也 at 22:05| Comment(0) | 思い出 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月23日

恋の記憶のback number

back numberといえば、4thアルバムの『ラブストーリー』が出た頃までは、よく聴いていた。

LPやCDなどのメディアで音楽を聴くことが多いボクは、iPodやiTunesを利用することが少ないので、「プレイリストを作って聴く」という習慣もないんだけど、back numberについては、その頃作ったプレイリストがある。

題して「恋の記憶のback number」。
嗚呼、なんて恥ずかしい!

以前のブログに、このプレイリストに合わせて書いた記事があるので、転載してしまおう(笑)


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1.わたがし

    ♪ 想いがあふれたらどうやって
    ♪ どんなきっかけタイミングで
    ♪ 手を繋いだらいいんだろう

中学のときに好きだった女の子の顔が、何となく思い浮かぶ。
夏祭りデートをしたことがあるわけじゃないけれど、彼女と二人、肩を並べて歩いたことは何度かあって、そのとき、こんなことを考えてたような考えてなかったような・・・(笑)
思い出してキュンとするのである。


2.恋

    ♪ ぼんやりと君を眺めていたんだ
    ♪ 校舎の窓から やっぱりかわいいなって

高校の頃の片思いは、隣のクラスのあの子。
一足早く登校しては、教室の窓から彼女が登校するのを眺めるのが日課だった時期がある。
ある意味、ストーカー的である(笑)
まぁ、でも、このぐらいはかわいいもんでしょ?(えっ?だめ?きもい?)


3.高嶺の花子さん

    ♪ 君の恋人になる人は モデルみたいな人なんだろう
    ♪ そいつはきっと君よりも年上で
    ♪ 焼けた肌がよく似合う 洋楽好きな人だ

その「隣のクラスのあの子」っていうのが、これまた、ものすごーくかわいい子で、まさに「高嶺の花子さん」だったのである。
清水さんじゃないけど、「どうせ俺なんか君」が心の中を支配して、ろくに話もできなかったなぁ。

高校を卒業したあと、思い切って彼女の誕生日にカードとプレゼントを贈った。
彼女からお礼の電話がかかってきて、なんとデートの約束にこぎつけた。

でも、デートのときには、緊張のあまり(緊張してたのはボクだけだけど 笑)会話もまったく弾まず、何日かあとに電話で話したときもまったく脈は感じられず・・・
結局それだけで終わってしまった。

やっぱり、「高嶺の花子さん」に恋してもダメなのである(笑)


4.fish

    ♪ さよなら まだ私を呼ぶ声が 頭の中をまわるまわる
    ♪ さよなら ねぇまだ間に合うから 私の震える肩を抱きしめてよ

ボクにだって、これまで実った恋はいくつかある。
理由はいろいろだけど、まぁ、最後はボクがふられて終わったなぁ・・・
あっ、でも浮気してふられたことは一度もない。
こう見えて(見えないか・・・)一途なんである。

だから、実った恋の終わりの場面を思い浮かべると、そこには未練タラタラのめめしい自分がいつもいた。
女性目線の歌だけど、この歌は、そんな自分を思い出させるのである。


5.エンディング

    ♪ あの日二人で観た映画のエンディングみたいだねと
    ♪ 君がふと笑いだす
    ♪ 最後の最後になっていま
    ♪ 君の代わりなどいないと気付いたのに

デートで観に行った映画には恋愛映画も多いけれど、別れの場面で終わる映画を二人で観た記憶はない。
ただ、記憶の中で映画のワンシーンのように残る別れの場面というのはある。

最後の別れ話が終わったとき、夜はすでに明けはじめていた。
早朝のはりつめた空気のなか、ボクは、彼女のアパートをあとにした。
車にのりこみ、発進させ、走り去ってゆくボクを、彼女はずっとベランダから見送っていた。
それが、車のミラー越しに見えた。

ここまでは、もうずいぶん昔の記憶・・・


6.風の強い日

    ♪ 公園の角の桜の木が綺麗だねって
    ♪ 貴女に言いたくなる
    ♪ ああそうか もう逢えないんだった

素敵な音楽や素敵な映画に出会うと、ボクはすぐに彼女に話した。
直接話すこともあれば、メールを送ることもあった。

逢えなくなったあとも、素敵な音楽や素敵な映画に出会うと、ボクはすぐに彼女に話したくなる。

    ♪ 貴女を想うたびに 心が苦しくなるよ
    ♪ 貴女を思い出すたびに 心が割れそうになんだよ

こんな痛み、いったいいつまで続くのかなぁ?


7.思い出せなくなるその日まで

    ♪ たとえばあなたといた日々を
    ♪ 記憶のすべてを消し去ることができたとして
    ♪ もうそれは私ではないと思う
    ♪ 幸せひとつを分け合っていたのだから

    ♪ 私の半分はあなたで
    ♪ そしてあなたの半分は私でできていたのね
    ♪ それならこんなに痛いのも
    ♪ 涙が出るのも仕方がないことだね

瞬間の積み重ね、その記憶の積み重ねが、その人を形作ってゆく。
二人で過ごした時間が長く、二人の結びつきが強ければそれだけ、積み重ねられ、自分を形作っている瞬間の記憶の多くは、自分ひとりで作った記憶ではなく、二人でいっしょに作った記憶だ。

「あなたとの記憶」を消し去ってしまえば、もうそれは「私」ではない。
「私の半分」は、「あなた」でできている。

そんな関係になれることを夢見てたんだけどな・・・


8.チェックのワンピース

    ♪ これからチェックのワンピースを どこかで見つけるたびに
    ♪ あぁ 君を思い出すのかな? やだなぁ やだなぁ
    ♪ それでもいつかまた出会えたら
    ♪ 僕ならもう大丈夫だと言えるように
    ♪ 君のいない明日を光らせよう

彼女がチェックのワンピースを着ていた記憶はまったくない。
だから、チェックのワンピースを見ても彼女を思い出すわけじゃない。

でも、彼女に似た後ろ姿を見つけるたびに、こんな場所にいるはずないって思いながら、彼女のことを思い出すってことはある。

生涯もう二度と逢うことはない人だから、「いつかまた出会えたら」ってことはないのだけれど、それでもいつか偶然会ったときのことを想像してみる。

「僕ならもう大丈夫」って言えるように「彼女のいない明日」を光らせるためには、新しい恋でもするしかないんだろうけれど、うーむ・・・


9.花束

    ♪ 君とならどんな朝も夜も夕方だって
    ♪ 笑い合って生きていけるんじゃないかと思うんだよ

これからの人生で、こんな風に思える人が、果たして現れるんだろうか?


10.日曜日

一昨年の彼女の誕生日。
ボクは午後から夕方まで仕事で、彼女は休み。
夜、誕生日のお祝いをする予定だったけれど、朝から彼女はうちに来て、映画を観たりして留守番しながらボクを待つことになった。

二人で軽いお昼を食べたあと、仕事に出かけるボクを見送るために、鞄をもって玄関まで出てきてくれた彼女が、「いってらっしゃい」とボクに鞄を差し出した。

    ♪ あの日君がこっちを向いて「おかえり」って笑ってくれたとき
    ♪ きっとあの時に変わったんだ こんな毎日を願う僕に

さて、もう一度、あんな気持ちになる出来事が、ボクの人生に訪れるんだろうか?


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あぁ、そうだった。
あの頃、ものすごーく好きな人がいたんだった。

何もすることがない日曜日、恥ずかしげもなく恋の記憶と戯れてしまったよ(笑)
ラベル:BACK NUMBER
posted by 想也 at 12:52| Comment(0) | back number | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする