2019年06月09日

To Five Spot

水曜日の夕方、仕事が終わった後時間が作れたので、レコード・ショップに行った。
そこで、「書き込み」ありということで、このレコードが叩き売られていた。

ジョー・ザヴィヌル(Joe Zawinul)が1971年にリリースしたこのレコード、まぁ、美品でも高いレコードではないんだが、少なくともこの「書き込み」のせいで、ジャケットの状態がかなり悪いものと評価され、それが販売価格に反映しているように思われた。


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このレコードのUSオリジナル盤(Atlantic SD 1579)には、ジャケットにラミネート・コーティングが施されたものも存在するが、今回ボクが入手したものにはコーティングはない。
では、このレコードはファースト・プレスではないのかというと、そんなことはないと思う。

確かに、ファースト・プレスにはコーティングが施されたものも存在するが、どうもPR工場産またはRI工場産のもののようである。
しかも、PR工場産やRI工場産では、1973年のRockefellerアドレス・レーベルになってもコーティング・ジャケットだ。

一方、ボクが今回入手した盤は西海岸のMO工場産だが、Broadwayアドレス・レーベルである。
MO工場産は、最初からコーティングがなかったんじゃないかって気がしてくる。


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それに、このカンパニー・スリーブだ。


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SD 1570までしか載っていない。
ファースト・プレスのときに付属していたものに間違いないと思う。
(まぁ、CSは入れ替えられてる可能性もあるんだが 笑)
やはり、MO工場産のファースト・プレスは、コーティングがなかったんじゃないだろうか。


さて、問題は、この「書き込み」である。
すでに気づいている方も多いと思うが、おでこの文字は”Josef Zawinul”と読める。
ネットでザヴィヌルのサイン画像をいろいろ見てみたが、このサインはホンモノで間違いない気がする。

それに、サインの前に書かれているのって、これ、”To Five Spot”だよね?
Five SpotというとNYのジャズ・クラブがすぐに思い浮かぶが、1967年にはすでに閉店しているから、このレコードがリリースされたときには存在していない。

ほかにファイブ・スポットと言えば、思い浮かぶのは、そう、ジャズ評論家のいソノてルヲさんが自由が丘でやっていたジャズ喫茶(夜はライブも行われていたという)だ。

当時ファイブ・スポットで演奏していたというジャズ・ベーシスト鈴木勲さんのインタビュー記事が下記URLで読めるが、そこには、いソノさんが「来日した海外のミュージシャンを自分の店によく連れてきてご飯を食べさせたりして」いたとある(鈴木勲さんは、いソノさんが連れてきたアート・ブレイキー(Art Blakey)に見染められて渡米することになったそうだ)。

https://www.shibuyabunka.com/keyperson/?id=134

ザヴィヌルは、1972年にウェザー・リポート(Weather Report)のメンバーとして来日している。
そのとき、いソノさんがザヴィヌルをお店に連れてきてご飯を食べさせ、記念に所蔵レコードにサインをしてもらったんじゃないかとか、想像は膨らむのである。

レコードの左下隅には、整理番号のステッカーが貼り付けてあって、いかにもジャズ喫茶の所蔵レコードらしい。


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左上隅についている赤い丸は、おススメの印?

やはり、このレコードは、ファイブ・スポットにあったものなんじゃないか。
客のリクエストに応えて、ザヴィヌル来店のときの話をしながら、いソノさんが幾度となくターンテーブルに載せたものなんじゃないか。

そんな風に、一度も行ったことのないファイブ・スポットに思いを馳せながら、ボクもこのレコードをターンテーブルに載せるのである。
ラベル:Joe Zawinul
posted by 想也 at 20:35| Comment(0) | 思いを馳せる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月04日

テレホートだって悪くない

<マスタリング・エンジニアについて言及することをすっかり忘れていたので、追記しました。>(2019年6月4日)

読もうと思ってすっかり忘れていた中山康樹さんの著書『ウィントン・マルサリスは本当にジャズを殺したのか?』(シンコーミュージック)を、ひと月ほど前、ツイッターでのやりとりがきっかけで読んだ。

必ずしも全部が全部同感というわけではないが、中山さんの本はやっぱりおもしろくて、ウィントン・マルサリス(Wynton Marsalis)のレコードやCDはあんまり持っていないのだが、この本をガイドに、少しづつ集めていこうかなと思った。

少しづつ集めていこうというのは、もちろん、持っていないものを少しづつ買っていこうということである。
しかし、つい悪い癖が出てしまった(笑)


中山さんの本を読んだときは、セルフタイトルのデビュー・アルバムは、日本盤(CBS/Sony ‎25AP2278)しか持っていなかった。
このレコード、半分は1981年7月に「ライブ・アンダー・ザ・スカイ'81」で来日した際にCBSソニー・スタジオで録音されたものだし、日本盤も半分オリジナルだろーなんて思っていたのである(笑)


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ところがどっこい、当然といえば当然だが、残り半分のニューヨーク録音をくわえて、最終的なマスタリングはニューヨークで行われている。
日本盤でいいはずがない。

そんなわけで、US盤(Columbia FC 37574)を買ってみた。


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ジャケットはあんまり違わないように見えるが、US盤は光沢があって、裏ジャケットではかなりその差がはっきりしている。


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でも、まぁ、大した違いではない。

しかし、音のほうは、これはもう笑っちゃうくらい違う。
日本盤が平面的で個々の楽器の輪郭もはっきりしないのに対して、US盤は実に立体的で明快である。

手持ちの日本盤はMatrix末尾がA2/B2(A1/B1が存在するのかは知らない)なので、そのせいかと思ったのだが、US盤のほうだって、手持ち盤のMatrix末尾は1C/1D(つまり、3番目と4番目のラッカー)だ。
末尾が進んでいるせいではないと思う。

しかも、手持ち盤はテレホート(Terre Haute)工場産なんである。


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(機械刻印のメインMatrixの隣に、手書きで1Tとある。ほかに、NYのコロンビア・スタジオでのマスタリングを示すCOLUMBIA NYという機械刻印が両面にある。)


USコロンビア盤でCOLUMBIA NY刻印があったら、ニュー・ジャージーのピットマン(Pitman)工場がオリジナル工場だろうし、音の好みではカリフォルニアのサンタマリア(Santa Maria)工場が好きということもあるだろうが、テレホート工場産はまぁ一番落ちるだろう。

しかし、それはUS盤の中での違いであって、日本盤との笑っちゃうくらいの違いからしたら、小さな差なのである。
日本盤からしたら、テレホート工場産だってぜんぜん悪くないのだ。

でも、やっぱり、ピットマン工場産が一番いいんだろーなー
そしてボクは、見つけたら、やっぱりまた買ってしまうんだろうな(笑)

おっと、ボクとしたことが、音質が良い良いと言いながら、エンジニアに言及するのを忘れていた。


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US盤のマスタリングは、NYのCBS Studiosのエンジニア、ジョー・ガストワート(Joe Gastwirt)によって行われている。
これまであんまり意識したことがなかったエンジニアだが、これからちょっと気にすることにしよう。
(2019年6月4日追記)


ちなみに、このレコード、ニューヨーク録音のA1、A2、B3が聴きものだと言われているし、それを認めるのに吝かではないが、ボクはB2の"Who Can I Turn To"がとにかく好きだ。
エンディングに向かうところのロングトーンに凝縮される抒情性は、筆舌に尽くしがたいのである。

くぅ~たまらんっ!
ラベル:WYNTON MARSALIS
posted by 想也 at 20:39| Comment(0) | アナログ・コレクターの覚書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月01日

1998年7月 パリにて

6月1日は「写真の日」らしい。
ということで、久しぶりに「君がいる風景」なんぞをアップしてみる。


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21年前かぁ・・・
posted by 想也 at 17:21| Comment(0) | 君がいる風景 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする