読もうと思ってすっかり忘れていた中山康樹さんの著書『ウィントン・マルサリスは本当にジャズを殺したのか?』(シンコーミュージック)を、ひと月ほど前、ツイッターでのやりとりがきっかけで読んだ。
必ずしも全部が全部同感というわけではないが、中山さんの本はやっぱりおもしろくて、ウィントン・マルサリス(Wynton Marsalis)のレコードやCDはあんまり持っていないのだが、この本をガイドに、少しづつ集めていこうかなと思った。
少しづつ集めていこうというのは、もちろん、持っていないものを少しづつ買っていこうということである。
しかし、つい悪い癖が出てしまった(笑)
中山さんの本を読んだときは、セルフタイトルのデビュー・アルバムは、日本盤(CBS/Sony 25AP2278)しか持っていなかった。
このレコード、半分は1981年7月に「ライブ・アンダー・ザ・スカイ'81」で来日した際にCBSソニー・スタジオで録音されたものだし、日本盤も半分オリジナルだろーなんて思っていたのである(笑)

ところがどっこい、当然といえば当然だが、残り半分のニューヨーク録音をくわえて、最終的なマスタリングはニューヨークで行われている。
日本盤でいいはずがない。
そんなわけで、US盤(Columbia FC 37574)を買ってみた。

ジャケットはあんまり違わないように見えるが、US盤は光沢があって、裏ジャケットではかなりその差がはっきりしている。

でも、まぁ、大した違いではない。
しかし、音のほうは、これはもう笑っちゃうくらい違う。
日本盤が平面的で個々の楽器の輪郭もはっきりしないのに対して、US盤は実に立体的で明快である。
手持ちの日本盤はMatrix末尾がA2/B2(A1/B1が存在するのかは知らない)なので、そのせいかと思ったのだが、US盤のほうだって、手持ち盤のMatrix末尾は1C/1D(つまり、3番目と4番目のラッカー)だ。
末尾が進んでいるせいではないと思う。
しかも、手持ち盤はテレホート(Terre Haute)工場産なんである。

(機械刻印のメインMatrixの隣に、手書きで1Tとある。ほかに、NYのコロンビア・スタジオでのマスタリングを示すCOLUMBIA NYという機械刻印が両面にある。)
USコロンビア盤でCOLUMBIA NY刻印があったら、ニュー・ジャージーのピットマン(Pitman)工場がオリジナル工場だろうし、音の好みではカリフォルニアのサンタマリア(Santa Maria)工場が好きということもあるだろうが、テレホート工場産はまぁ一番落ちるだろう。
しかし、それはUS盤の中での違いであって、日本盤との笑っちゃうくらいの違いからしたら、小さな差なのである。
日本盤からしたら、テレホート工場産だってぜんぜん悪くないのだ。
でも、やっぱり、ピットマン工場産が一番いいんだろーなー
そしてボクは、見つけたら、やっぱりまた買ってしまうんだろうな(笑)
おっと、ボクとしたことが、音質が良い良いと言いながら、エンジニアに言及するのを忘れていた。

US盤のマスタリングは、NYのCBS Studiosのエンジニア、ジョー・ガストワート(Joe Gastwirt)によって行われている。
これまであんまり意識したことがなかったエンジニアだが、これからちょっと気にすることにしよう。
(2019年6月4日追記)
ちなみに、このレコード、ニューヨーク録音のA1、A2、B3が聴きものだと言われているし、それを認めるのに吝かではないが、ボクはB2の"Who Can I Turn To"がとにかく好きだ。
エンディングに向かうところのロングトーンに凝縮される抒情性は、筆舌に尽くしがたいのである。
くぅ~たまらんっ!
ラベル:WYNTON MARSALIS