学食の端っこでぼんやりしていた僕に、彼女はそう言いながら『君に読む物語』のブルーレイを見せた。
彼女とボクは、1年ほど前だったか、好きな映画と音楽の話で盛り上がったのがきっかけで親しく話をするようになった。
良い映画や素敵な音楽に出逢うと、僕は真っ先に彼女に知らせたくなる。
それは、彼女も同じなんじゃないかと思う。
でも、僕たちはそれだけの関係だった。
”これまで何度観たかわからないけど、これからもきっと、ことあるごとに観るんだろうなと思って。”
”やっぱり、その映画みたいに愛されることを夢見てたりするわけ?”
”まさか!”
”現実には起こらないってわかってるから、映画の中で夢を見るの。”
彼女は、笑いながら続けた。
”現実の私は、ささやかなシアワセで満足するのです。”
”ささやかなシアワセって?”
”まず、映画を観ることでしょ。それから、好きな音楽を聴くこと。”
”それは、まったく同感。”
”あと、おいしいものを食べること!”
”くいしんぼ!”
僕は、そう言って笑いながら、心の中でつぶやいた。
”僕にとっては、こうして君に逢っている時間が、一番シアワセなんだけどな。”
少し意味ありげな顔をして微笑んだ僕を見て、彼女が、不思議そうに、微笑を返した。
♪「音楽が奏でる情景」は、好きな音楽にインスパイアされて書きとめた(たぶん 笑)フィクションです♪