かぐや姫の伊勢正三さんと猫の大久保一久さんによって結成された風は、その経歴から「フォーク・デュオ」と言われることが多いが、風がフォークだったのはセカンド『時は流れて・・・』までで、サードの『windless blue』以降は、まったくもってフォークではない。
ボクがリアルタイムで風を聴くようになったのは『海風』からなので、風を「フォーク・デュオ」だと言われると、おそろしく違和感がある。
それに、風がリリースしたアルバム5枚のうち、フォーク・アルバムは最初の2枚しかないのだがら、その意味でも「フォーク・デュオ」というのは違う気がする。
とはいえ、当時はどう呼べばいいかわからなかったのだが、いまなら、相応しい呼び方が思い浮かぶ。
そう、「シティ・ポップ・デュオ」というのがもっとも相応しいだろう。
今回とりあげるサード『windless blue』も、どう聴いてもフォークではない。
これは、アメリカ西海岸のAORの音だ。
ジャケットだって、思いっきりAORである。

スティーリー・ダン(Steely Dan)へのオマージュがそこかしこに感じられるアルバムで、とにかくかっこいい。
おまけに名曲『君と歩いた青春』まで入っている。
一家に一枚では足りない。
二枚は欲しい名盤である。
そんなわけで二枚持っている(笑)
なーんて冗談はこのくらいにして、本題に入ろう。
このアルバムを二枚持っているのには理由がある。
すでに書いたように、ボクが風をリアルタイムで聴くようになったのは『海風』からで、『windless blue』は後追いだった。
最初に聴いたのがいつ頃だったのか記憶が定かではないが、レコードを買ったの自体は、数年前のことだ。
当然のことながら、買うならオリジナル・ファースト・プレスである。
このレコードには、ときどき、ジャケットと別テイクの写真が使用されたステッカーが付属していることがあり(わりとよく見るので特にレアではないと思う)、帯とかに「初回限定ステッカー付き」みたいな宣伝文句はないものの、この手のおまけは初回盤についてたものだろうと思った。
で、ステッカー付きを手に入れた。
帯はついてなかったんだけどね。

この盤、音も悪くないし、とりあえず満足していたのだが、つい先日、帯付き盤を見つけたので盤を確認してみたら、なんと手持ち盤よりスタンパーが若い。
しかも、レーベル形状が違う。
ステッカーはついていなかったし、盤の状態もあまり良くはなかったのだが、安レコだし、とりあえず買ってしまった。
ってことで、うちには二枚あるわけだ。
そう、うちの二枚、レーベル形状が違うんである。
以前から持っていた盤のレーベル形状はこうなっている。

日本盤ではあまり見ない(よね?)凸リムである。
他方、新たに入手した盤は、フラット・レーベルだ。

こっちのほうが一般的だよね。
スタンパー情報については、次のような違いがあった。
以前から持っていた盤―凸リム盤
Side 1: 1-B 9
Side 2: 2-C 9
新たに入手した盤―フラット盤
Side 1: 1-A-3
Side 2: 2-A-14
読み方は、おそらく最初の数字がラッカー、次のアルファベットがマザー、最後がスタンパーじゃないかと思う。
最初の数字が同じなので、要は両方ともマト1/2ということで、同じである。
違いはマザー/スタンパーの進み具合ということだ。
興味深いのは、以前から持っていた凸リム盤の場合、スタンパー・ナンバーの前にハイフンがない。
それだけでなく、Side 1の送り溝に、こんな刻印があった。

これは、「11 K 6」で6にアンダーバーがついてるんだと思う。
『windless blue』の発売日は、1976年11月25日だから、この刻印はおそらく製造年月を表しているんじゃないだろうか?
最後の6が1976年。
その前のKは、アルファベット11番目で11月。YMOの『増殖』が凸リムで、送り溝には必ずK刻印があるようだ。ここから、K刻印はプレス工場の識別記号の可能性が高いと推測される。(2021年9月17日20:00追記)最初の11は、
Kと同じく11月を意味するんじゃないかと思う(11日という日付を意味する可能性もないわけではないが、日付までは普通打たない気もする)。
そうだとすると、以前から持っていた凸リム盤も、発売日当月製造盤である。
初回プレスではないかもしれないが、相当に初期プレスということになる。
やはり、ステッカーは初期盤にのみついてたんじゃないかと思う。
ちなみに、フラット盤の送り溝には、この製造年月刻印のようなものはない。
レコード棚にPANAM盤が10枚ほどあったので確認してみたが、凸リム盤は一枚もなかったし、74年くらいまではPANAM盤の送り溝にも製造年月刻印らしきものがあるのだが、凸リム盤のそれとは形式が違っていた。
つまり、ボクが以前から持っていた『windless blue』の凸リム盤は、委託プレスの可能性が高いんじゃないかと思う。
さて、重要なのは、音である。
これがねぇ・・・かなり違う(笑)
凸リム盤は、低域が若干膨らみ気味で、個々の楽器の音やボーカルの輪郭が微妙にぼやけている。
それに対して、スタンパーの若いフラット盤は、低域がタイトで、個々の楽器の音やボーカルの輪郭が実に明快だ。
楽器の音で言えば、A3『3号線を左に折れ』の哀愁を湛えた新井英次さんのトロンボーン、A4『旅の午後』のエモーショナルな水谷公生さんのギターソロが、とりわけ好きなのだが、フラット盤のほうを音量をあげて聴くと、その音色に蕩けてしまう。
凸リム盤も、それだけ聴いていたときは良かったのだが、スタンパーの若いフラット盤のほうを聴いてしまうと、もう戻れない。
しかし、うちのフラット盤、状態がいまひとつなのが残念だ。
安レコだし、状態の良い初回盤をなんとか手に入れたいと思う今日この頃なのである。