そんなわけで、気長に待っておりますので、「『木綿のハンカチーフ』のシングル盤持ってるよ」という方、ぜひ送り溝を見て、スタンパー情報をお寄せください。
さて、本日は、まったく別の話題である。
ここに一枚のピンク・フロイド(Pink Floyd)"Animals"のUKオリジナル(Harvest SHVL 815)がある。

外見上は、ファースト・プレスの特徴を備えている一枚である。
ワイド・スパインのジャケットに、厚紙のインナースリーブは四方がラウンド・カットで、取り出し口に切り込みがある。
マトも両面2Uだ。
しかし、このレコード、たいへん珍しい一枚なのである。
スタンパー刻印がどこにもないのだ。
「無知だなー。このアルバムにはスタンパー刻印のないオーレイク(Orlake)・プレスがあるんだよー。そりゃちょっとは珍しいかもしれないけど、『たいへん珍しい』というのは言いすぎだと思うなー」と思った貴方!
このアルバムにオーレイク・プレスがあることは、ボクも知っているのである。
しかし、ボクのもっているのはオーレイク・プレスではないのだ。

ほらね。
どう見ても、オーレイク・プレスのレーベルじゃないでしょう?
オーレイク・プレスのレーベル形状を知らないという方は、Vernon Fitch氏による"The Pink Floyd Archives"というWEBサイトの関連ページで確認できるので、こちらをどうぞ。
http://www.pinkfloydarchives.com/DUKLPPF.htm#Anim2
で、このWEBサイトにも、スタンパー刻印のないバリエーションについては、オーレイク・プレスしか掲載されていない。
つまり、ボクの持っているレコードは、この膨大な情報量を誇るWEBサイトにも掲載されていないバリエーションなのである。
「たいへんに珍しい」というのも過言ではないでしょ?
このレコード、スタンパー刻印はないが、マザー刻印はある。
Side 1のマザーは3、Side 2のマザーは2で、通常の英EMIプレスと同様、メイン・マトの2Uを6時とすると9時か10時の位置に刻印されている。
レーベル形状的に言っても、限りなく英EMIプレスに近い。
しかし、繰り返すがスタンパー刻印がないのである。
しかも、このレコードには、とても大きな特徴がある。
盤面は塩ビ焼けの気配もなく美しいのに、盛大に歪むのである。
歪み方も塩ビ焼けのような歪み方ではなく、特定の帯域でバリバリと音割れするような歪みが盛大にのるのがずっと続く。
これはやはり塩ビ焼けではない(見た目、まったくくもりもないし)。
長いことレコードを聴いているが、こんな歪み方をするレコードはこれしか聴いたことがないので、原因は皆目見当がつかない。
スタンパー刻印もないことだし、何かプレス上の問題だと思うのだが、いずれにしろ、とても聴けた代物ではないのである。
ただ、SPU-GTで聴いたときは、歪みが多少緩和された。
なんだかその記憶がふっと甦って、同じく針圧の重い丸針カートリッジであるVNLだとどうなんだろう?と思い立ち、交換針Ⅲ針圧4.2gでかけてみたのだが・・・
歪まない!
あれほどバリバリいっていた歪みがすっかり消えて、ストレスなく両面聴き通してしまった。
これは非常にありがたい。
ためしに針圧を3.2gまで軽くすると、多少歪みっぽさが戻ってくるので、針先の形状だけでなく針圧も関係しているようだ。
歪みといえば、グリーンスレイド(Greenslade)のファースト・アルバムのUKオリジナル(Warner Bros. K 46207)である。
詳しくは、ノイさんのWEBサイト(http://www.green.dti.ne.jp/ridingthescree/greenslade.html)を見ていただくとして、このレコードも歪む。
まぁ、うちの"Animals"みたいなひどい歪み方ではないが、カートリッジによってはかなり気になる歪み方だ。
多少ましに再生できるカートリッジもあるので、まぁ聴けないことはないレコードではあるのだが、これを交換針Ⅲ針圧4.2gのVNLでかけてみると・・・

"Sundance"のイントロのピアノだって、まったく歪まないぞ!
歪みの拾い方がカートリッジによって大分違うというのは経験上わかってはいたが、ここまで違うことがあるというのは驚きだった。
アナログの奥深さをあらためて思い知らされた2021年1月最後の日曜日の午後なのであった。
ラベル:PINK FLOYD GREENSLADE