2021年02月23日

CSの迷宮~太田裕美『木綿のハンカチーフ』

太田裕美『木綿のハンカチーフ』のスタンパー情報は、その後、さっぱり集まってこない。
もう少し集まれば何か見えてきそうな気もするので、自分でも少し買ってみたのだが、そしたらこんなになってしまった。


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もう買いたくない~(笑)

って、まぁ、スタンパー情報だけが目的で買ったわけではないのである。

ノイさんが「中古レコードのタチバナ」さんに取材に行って手に入れた情報は、スタンパー情報だけではなかった。
CSが三種類あり、そのうち「ヒット全曲集」CSに入っていたものが、スタンパーも若く、ダントツで音も良かった、という情報もあった。
つまり、CSが初回盤を探す手がかりになる可能性がある。

それからもうひとつ、このブログの記事にコメントを寄せてくれたいまさんから、CBS SONYのCSには製造年月のようなものが印刷されているとの指摘があった。
まったく気づいていなかったが、確認すると確かにある。
これで、CSが初回盤を探す手がかりになる可能性がさらに高まった。

そんなわけで、CSを手掛かりに、何枚か『木綿のハンカチーフ』を買ってみたのである。


では、『木綿のハンカチーフ』のCSについて情報を整理してみよう。

ノイさんが「中古レコードのタチバナ」さんで確認したものの中で、もっともレイトだと思われるCSは、この白いCSだった。


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もちろん、ボクが持っているこの白いCSは『木綿のハンカチーフ』が入っていたものではない。
これには、山口百恵『横須賀ストーリー』が入っていた。
1976年6月21日にリリースされたシングルだ。

で、このCSの製造年月のようなものは、このようになっている。


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M272が何を意味するのかわからないが、その後の7603 YSは、(YSの部分は謎だが)76年3月だとすると辻褄があう。
もっとも、この(M272)7603 YSと記載されている白いCSは80年代になっても使われているので、7603というのも、英DECCAのCSのような製造年月を示すものではなさそうだ。

では、この(M272)7603 YS、何を示しているのだろうか?
ボクは、この白いタイプのCSの型番号のようなもので、使用開始年月が型番号に埋め込まれているんじゃないかと思うのだがどうだろう?
少なくとも製造年月ではなさそうなので、とりあえず型番号と呼ぶことにしよう。


『木綿のハンカチーフ』に一番多いCSは、この青いCSだと思う。


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このCSの型番号はこうなっている。


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(M26)75 7 YSである。
75 7が75年7月であって使用開始年月を示しているとすると、『木綿のハンカチーフ』のリリースは75年12月21日だから、初回盤にもこのCSが使われていた可能性はある。
しかし、「ヒット全曲集」CSが初回盤に使用されたとすると、青の汎用CSは使用が停止されていた可能性もある。

ってことで、「ヒット全曲集」CSがいつから使用されたのかということが問題だ。

では、「ヒット全曲集」CSを確認しよう。


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しかし、このCSには年月に該当するようなものは印刷されていない。


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汎用CSとは異なり、このように(M246)だけなのである。
つまり、手がかりは、この「ヒット全曲集」が発売されたのが1975年11月1日だということしかないわけだ。

まぁ、でも、普通に考えれば、こういうCSは発売予告のために使用されるものだろう。
そうだとすれば、1975年9月遅くとも10月には使用が開始されたと考えられる。
ちょっと調べてみると、山口百恵『ささやかな欲望』(1975年9月21日発売)が、きわめて高確率で「ヒット全曲集」CSだ(ヤフオクで検索してチェック)。
やはり、「ヒット全曲集」CSは、1975年9月から使用されたことは間違いなさそうだ。
そうだとすると、『木綿のハンカチーフ』初回盤のCSは、やはり「ヒット全曲集」CSだということになる。

これでもうCSについては決着がついた気がしていたのだが、ヤフオクの出品を見ていると、緑のCSなのに「ヒット全曲集」CSではないものが付属しているものがあるのだ。

実は、青のCSの前の汎用CSは緑だった。
たとえば、太田裕美『雨だれ』(1974年11月1日発売)は、こんなCSだ。


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このCSの型番号は、こうなっている。


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(M26) 7402 KYである。
M26とKYが謎だが、7402が74年2月を意味しているとすると、このCSが『雨だれ』に使用されているのは辻褄が合うが、『木綿のハンカチーフ』に使用されているのは不可解である。
すでに75年7月には青いCSに切り替わっているはずだからである。

最初の一枚を見つけたときは、単に、どっかで入れ替わったんだろうという程度にしか思っていなかった。
しかし、もう一枚見つけると不安になってきた。
さらにもう一枚見つけたときには、即決だったこともあり、思わず落札ボタンを押してしまっていた・・・


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『雨だれ』のCSよりは少しくすんだ色だが、これは単に汚れとか経年劣化とかのせいか、そうでなくても個体差にすぎないだろうと思った。

しかし・・・


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へ?
(M26)75 7 YS?

そう、『雨だれ』のCSとではなく、青い汎用CSの方とまったく同じ型番号なのである。

これはいったいどういうことなんだろう?


中に入っていたレコードのスタンパーを見てみよう。

すでに報告したように、最初に買った「ヒット全曲集」CS付きはA2/B1というマト2盤だった。
2枚目に買った「ヒット全曲集」CS付きは、A1/B1のマト1盤で、スタンパーは、Side 1が1A7、Side 2が1A13だった。
そして緑の汎用CS付きは、なんと、A1/B1のマト1盤で、スタンパーは、Side 1が1A7、Side 2が1A13、つまり、2枚目に買った「ヒット全曲集」CS付きとまったく同じスタンパーだったのである。
スタンパーが同じだけあって、音のほうも、大きな差はない。

これでは、まったく前後関係が推測できない。
ってことで、CSの迷宮に入り込んでしまったのである。

果たしてこの迷宮から抜け出せる日は来るのだろうか?
ラベル:太田裕美
posted by 想也 at 21:16| Comment(8) | 国内盤研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする