2021年09月19日

Tommy Flanagan, Giant Steps (In Memory Of John Coltrane)

9月16日、ジャズ・ベーシストのジョージ・ムラーツ(George Mraz)が亡くなった。
夥しい作品に参加している巨匠だが、ジャズについてはボクはとても偏った聴き方をしているので、彼が参加した作品ですぐに思い浮かぶのはこのレコードしかない。


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トミー・フラナガン(Tommy Flanagan)が1982年にリリースしたピアノ・トリオ作品"Giant Steps (In Memory Of John Coltrane)"である(ドラムはアル・フォスター(Al Foster))。

「コルトレーンとオリジナルの"Giant Seps"を録音したときには、納得のいく演奏ができなかったトミー・フラナガンが、リベンジで録音した」とか言われているが、全6曲中5曲が"Giant Seps"からの曲(残り1曲ももちろんコルトレーンの曲)というこのアルバム、とにかく素晴らしい演奏である。
ジョージ・ムラーツのベースもとても良い。

で、今夜はずっとこれを聴いていたのだが、一応Discogsをチェックしてみたところ、いやーなことに気づいてしまった。

うちにあるのはドイツ盤(Enja 4022)なのだが、Discogsには二種類のドイツ盤が登録されているのである。
しかし、どちらがオリジナルなのかは、はっきりと書かれていない。

二種類というのは、Bellaphon(Sound-Service Bellaphon International)配給のものとそうでないものだ。
確か、Enja RecordsってBellaphon配給で1983年ごろから一時的に他の配給になったんじゃなかったっけ?
ってことは、Bellaphon配給がオリジナルで、そうでないのが再発?


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うちのはBellaphon配給ではない(Bellaphon配給盤はレーベルの下部中央にDistributed by Bellaphonロゴの記載がある)。
ってことは、うちのは再発なのか?

しかし、うちの盤、もう一つ気になることがある。
そう、GEMAの記載がないんである。

落ち着いてもうちょっと調べてみると、確かに、Enjaの配給は1983年頃に一時的にBellaphonから別の会社に移るが、それはTISだ。
うちのはTIS配給ではなく、Polygram配給である。

それに、Enja Recordsの住所は、1983年には"Nymphenburger Str. 209"から"Frundsbergstr. 36"に移る(DiscogsのEnja Recordsの項目のところでは住所変更が86?となっているが、トミー・フラナガンの83年のアルバム"THELONICA"(Enja 4052)の住所表記がすでに"Frundsbergstr. 36"なので、住所変更は83年で間違いないと思う)のだが、うちのPolygram配給盤の住所は"Nymphenburger Str. 209"になっている。


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どうにも再発とは考えにくいのである。
GEMAがないことも合わせて考えてみると、再発ではなく、輸出用だったんじゃないだろうか。
Bellaphonに配給権がない国への輸出用として、Polygram配給盤が製造されたと考えると辻褄が合う。

そう思いついてよく見ると、裏ジャケ下部には、"Marketed by Polygram Classics, Inc., 137 West 55th St New York, N.Y. 10019."という記載もある。
これって、US市場向け輸出盤てことなんじゃ?

しかし、Bellaphon配給盤もPolygram配給盤もどちらもドイツ盤でありながら、別々に製造されたようだ。
うちのPolygram配給盤は、送り溝に320の刻印もあるし、PRS(PolyGram Record Service GmbH)でカッティングからプレスまで行われたことは間違いない(ジャケットにPRS HANNOVERのスタンプもある)。
Bellaphon配給盤のほうは、Discogs情報を見る限り、どうやらPRS製造ではなさそうだ。

こういう場合、Enja Recordsはドイツの会社だから、オリジナルはBellaphon配給盤ということになるんだろうな。
ってことは、うちのはオリジナルじゃないってことかー
ドイツ・オリジナルだと思って買ったんだけどな・・・

まぁ、でも、同時期に同じ国で製造されているレコードだし、音の良し悪しに関しては、必ずしもオリジナルが優位とも限らない。
実際、うちのPRS製造盤、素晴らしい音で鳴る。

とはいえ、Bellaphon配給のオリジナルも気になるなぁ・・・

R.I.P.
posted by 想也 at 00:22| Comment(0) | アナログ・コレクターの覚書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月18日

トパーズ色の街

大久保一久さんの曲でボクが一番好きなのが『トパーズ色の街』だ。

ちょうどいまの季節にピッタリということもあって、昨夜は、『海風』の繰り返し再生から、そのうち『トパーズ色の街』にだけ繰り返し針を下ろしていた。

一曲にだけ繰り返し針を下ろすのはかなり面倒なのだが、その面倒さも追悼の儀式めいていて、苦にはならなかった。


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「トパーズ色」という表現が、キラキラした夏の名残を少しだけ含みながら、紫外線が弱まって淡くなった陽の光に照らされた感じを、とてもうまく表していて、夏と秋が交差する季節のどこか切なさを漂わせた街並みが、自ずと思い浮かぶよね。


     ♪ 今ではトパーズ色の街が
     ♪ 誰かを淋しくさせてしまう


夏の出来事が思い出になってしまった人は、みんな「誰か」なわけで、当然「僕」も淋しくさせられてしまうんだな。


     ♪ 秋だと云うのに街は
     ♪ いまだ夏のかおりを残しているから
     ♪ 僕はあの娘思い出してしまうのさ


大して記憶に残らないひと夏の恋もあれば、永遠に忘れられない夏の出来事もある。

ボクにも、夏の終りの忘れられない出来事が、なんだか蘇ってきてしまったよ。
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posted by 想也 at 00:23| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月17日

海風

大久保一久さんが亡くなった。
9月12日のことらしい。

大久保さんの訃報に接して伊勢正三さんが出したコメントの中に、こんな一節がある。


  久保ヤンのやさしさがなかったら、「風」は存在せず、
  僕はただの孤独な男に過ぎなかったのです。


大久保さんの包み込むような優しさは、レコードを聴いていても伝わってくるよ・・・

今夜は、初めて買った風のレコード『海風』を繰り返し聴いている。


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中学生のとき一番聴いたレコードかもしれない。

ロサンジェルス録音で、マスタリング&カッティングはArtisan Sound Recorders。
西海岸のAORの音である。

素晴らしい音が部屋中を満たす。


大久保一久さん、心からご冥福をお祈りいたします。
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posted by 想也 at 00:30| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする