
事の発端は、先日の記事に反応して、紙ジャケ探検隊が、送り溝を確認して報告してくれたことだ。
やはりPMはLK2Pだという。
ボクは、K2PというPMでプレスされたのはテスト・プレスで、見本盤はLが追加されたLK2Pのものしか存在しない(つまり、11月にプレスされたのはテスト・プレスのみで、見本盤は12月に入ってからプレスされたものしかない)と信じたいので、PMがLK2Pだったという報告は大歓迎である(笑)
そんなやりとりの中、探検隊から、「マトがLではじまってるから輸入ラッカー使用ってこと?」というような問いかけが・・・
それ、ボクも、謎だったのだ。

確かにマトは2Lではじまっている。
Discogsにも2Lしか出ていないし、2L-1-1はファースト・スタンパーだろう(ちなみにSide 2は2L-2-1)。
で、Lではじまっているマトは、輸入ラッカー使用だったはずだ。
通常、輸入ラッカーを使用した場合には、送り溝に、手書きのレコード番号やらマスター番号やらエンジニアのサインやらの痕跡がはっきり残されている。
しかし、このレコードには、まったくそういった痕跡がない。
送り溝には、マトのほかに、当時のポリドール盤と同じ字体で刻印されたレコード番号があるのみだ(ほかに3という数字の刻印はある)。

このアルバム、UK盤もUS盤も、トライデント・スタジオ(Trident Studios)にいたエンジニア、レイ・スタッフ(Ray Stuff)がカッティングしたようで、Side 1の送り溝に"RAYS"というサインがある(つまり、UKカッティングである)。
輸入ラッカーを使用したんだとすれば、"RAYS"のサインはないといけないんじゃ?
実に不可解なのである。
Lではじまるマトなのに、これは輸入ラッカー使用ではないのか?
そこで、ボクはあることに気づいた。
JISマークが刻印されていないんである。
これはやっぱり輸入ラッカー使用なのか?
だとしたら、いったい誰のカッティングなんだ?
送り溝には、何の手がかりもない。
万事休すである。
頼みの綱は妄想力だけだ。
そこでボクは、妄想を爆発させた(笑)
Lではじまるマトで、送り溝には輸入ラッカー使用の痕跡がまるでなく、しかし、JISマークもないレコード・・・
どっかで見たことあるぞ。
そうだ、井上堯之『WATER MIND』(ATLANTIC/WARNER-PIONEER K-10001A)だ。
下記記事の後半で紹介しているレコードである。
https://sawyer2015.blog.ss-blog.jp/2020-11-08
送り溝にまったく痕跡はないが、ジャケットに記載された情報から、ハリウッドにあるワーナー・スタジオのエンジニア、ボビー・ハタ(Bobby Hata)のカッティングであることがわかる。
つまり、少なくともハリウッドのワーナー・スタジオでカッティングされたラッカーは、送り溝にまったく痕跡を残さずに日本に送られてくることがありうるのだ。
ってことは、この"Coda"日本盤用のラッカーも、ハリウッドのワーナー・スタジオでカッティングされたんじゃ?
当時の状況を妄想する。
UKから送られてくるはずのラッカーが送られてこない。
ラッカーを送る約束だから、マスターテープは来ていない。
つまり、日本でカッティングはできない。
困ったワーナー・パイオニアは、「余ってるマザーでいいから送ってくれー」と、アメリカの親会社に泣きつく。
しかし、ツェッペリンである。
アメリカの親会社だって、余っているマザーなんてない。
しかし、スワン・ソング・レコード(Swan Song Records)にはアメリカ支社もあるから、マスターテープはまわしてもらえそうだ。
ってことで、アメリカの親会社のワーナーは、自分とこのエンジニアにカッティングさせて、日本にラッカーを送った。
こうして、送り溝に輸入ラッカーの痕跡がまるでない(でもJISマークもない)Lではじまるマトの盤ができあがったのであった。
いや、だから、妄想ですよ、妄想(笑)
ラベル:Led Zeppelin