2023年01月16日

サディスティック・ミカ・バンド『黒船』

<初回盤のマトについてお二人から情報をいただいたので、追記しました。>(2023年1月17日21:30)

今宵も高橋幸宏さん追悼である。

サディスティック・ミカ・バンドが1974年11月5日にリリースしたセカンド・アルバム『黒船』を聴くことにしよう。


20230116-01.jpg


クリス・トーマス(Chris Thomas)をプロデューサーに迎え、世界に向けて制作されたアルバムだけあって、このレコードにはUK盤やUS盤も存在するが、ボクが持っているのは日本盤(東芝EMI Doughnut DTP-72003)である。

サディスティック・ミカ・バンドが活動していた1972年から1975年というと、ボクはまだ小学生で、テレビから流れてくる歌謡曲ぐらいしか知らなかった。
サディスティック・ミカ・バンドの存在を知ったのは20代の頃だったと思うが、当時はあえて聴こうと思うこともなく、この『黒船』を聴いたのも、5年ぐらい前のことだ。
「こういう有名なレコードは聴いておかなければなるまい。」と思い立ち、ようやく手に入れて聴いたのだった。

聴いてみると、内容も録音も凄い。
20代の頃に聴いておくべきだったなーと深く後悔したのであった。

ディレクターだった新田和長さんのインタビュー記事が下記URLに掲載されているが、これを読んで聴くと、さらに味わい深くなる。

https://mora.jp/topics/interview/takumi06/


さて、うちの盤、帯はついてないが、音は素晴らしいので、初回盤あるいはそれに近いものだといいなーと期待しつつ、送り溝をのぞいて見たのだが・・・


20230116-02.jpg


PMがなんと0-69だった。
そんなバカな・・・

1980年6月に一度使用されたスタンパーを使って、同年9月にプレスされたものなわけで、初回盤どころか、リリースから6年も後の思いっきりレイト・プレスである。
それでも、スタンパーは、おそらく初回盤と同じラッカーに由来する両面18だったから、日本ではあんまり売れなかったんだねぇ・・・

内容も音も素晴らしいんだけどな。

音については、クリス・トーマスが音にこだわりぬいていたことが、上記の新田さんのインタビュー記事からもわかる。
だから、最終的なマスタリング&カッティングも、東芝EMIでは行われなかった。
どこで行われたのかは上記記事にも書かれていないのでわからないのだが、マトの末尾がLなので輸入ラッカーを使用したということはわかる。
クリス・トーマスのプロデュースだから、おそらくUKカッティングのラッカーを使用したのだろう。


20230116-03.jpg


二重線で消されているZが何を意味するのか不明だが、Side 1は末尾Lだ。
1Sという刻印もあるのだが、二重線で消されている。

Side 2の末尾はL3で、やはり1Sという刻印が二重線で消されている。
こちらはJISマークも、二重線で消されている。


20230116-04.jpg


そういや、これ以前に、輸入ラッカー使用ってあったっけ?

Discogsの登録を見ると、次のようになっていて、うちのとちょっと違う。

DTP-72003-A-Z̶L 1S 12 4-YW
DTP-72003-B-L 1S 11

PMが4-YWなので、発売当月(1974年11月)プレスで、すでにスタンパーは12なのね。

それはともかく、両面とも1Sが二重線で消されていないし、Side 2は1Sなのに、マト末尾がL3ではなくLになっている。
Side 2のJISマーク消しもない。

これで正確に登録されてるの?
もし、そうだとすると、1974年には、輸入ラッカー使用の際の送り溝の刻印の仕方に関するルールがまだ確立していなくて、その後に確立したルールと食い違いがあるのかなーなんて思ったのだが・・・

Discogsの登録は、ホント、アテにならないので、初回盤(もしくはそれに近い盤)をお持ちの方、送り溝を確認して、ぜひ教えてくださいな。


<追記>

ツイッターで初回盤のマトについてお二人から情報をいただいた。

DTP-72003-A-Z̶L 1S 16 4-ZW
DTP-72003-B-L 1S 16
(PMが4-ZWなので、1974年12月プレス)

DTP-72003-A-Z̶L 1S 21 5-1W 7W
DTP-72003-B-L 1S 15
(PMが5-1W 7Wなので、1975年1月に一度使用されたスタンパーを使っての同年7月プレス)

画像も見せてもらったので、間違いない。
両面とも1Sは二重線で消されてはいないし、JISマークは刻印されていない。

ということは、おそらく、この時期にはまだ、「東芝カッティングで通常使用される1Sといったラッカー・ナンバーは、輸入ラッカーには使用しない」というルールが確立していなかったということだろう。
間違えて追記したのなら、消されるはずだからである。
また、輸入ラッカーで、JIS基準を満たしていなかったので、JISマークは刻印されなかった。

うちの盤がプレスされた1980年には、すでに上記ルールが確立していたので、ルールにしたがって、マザー上の1Sを二重線で消した。
Side 2については、うちのも1Sなので、LとL3はマザー違いということだろう。
初回盤に使われていたのが第一マザーで、うちの盤に使われたのは第三マザーということだ。
この第三マザーには、間違ってJISマークを刻印してしまったので、二重線で消した。

Side 1のLの前の消されたZは、輸入ラッカーに使用するアルファベットが、最初はZだったってことかもしれない。

ってことで、初回盤では1Sが消されてなくて紛らわしいが、JISマークが刻印されていないことからしても、このレコードは、輸入ラッカー使用ということで間違いないと思うのである。

1974年当時は輸入ラッカー使用時のマト刻印のルールが確立してなかったとか、なかなか興味深い発見だったなぁ。
posted by 想也 at 21:59| Comment(2) | 国内盤研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする