庶民の味方のカートリッジは、Chuden MG-3605である。
紹介が遅れたのは、最初は気に入らず、そのままカートリッジ収納箱で眠りについてしまったからだ。
気に入らなかった理由は、確かに圧倒的なパンチ力はあるものの、なんだか少し歪みっぽく感じてしまった点にある。
もしかしたら初期不良かもと思いつつ、歪みっぽいというのは、はっきりと歪んでいるというのとは違うので、不良品とは言えないかなーと放置してしまった。
ところが最近、なんとなく引っ張り出してあれこれ試してみたら、歪みっぽく感じるのは針圧を重めにかけたときだけだと気づいた。
このカートリッジの適正針圧は2.5g~3.5gなのだが、ボクの耳には3.5gかけると歪みっぽく感じてしまう。
しかし、3.0gならまったく歪みっぽさを感じない。
歪みっぽさから解放されれば、9.5mVという出力が生み出す圧倒的なパンチ力は、ロックやジャズの再生にとってきわめて魅力的である。
ってことで、いまは日常的に使っている。
今日はちょうど、山下達郎さんがオーディオ・チェックのリファレンス・レコードに使っているというアース・ウィンド&ファイアー(Earth, Wind & Fire)"I Am"のUSオリジナル(Columbia ARC FC 35730)(このレコードのことは、https://sawyer2015.seesaa.net/article/2023-01-22.html をどうぞ。)を引っ張り出したので、Chuden MG-3605の音をチェックしてみることにした。
2年前は、どこをどう聴けばいいのかわからなかった(https://sawyer2015.seesaa.net/article/2023-04-10.html)が、ちょっと調べてみると、達郎さんは、1曲目の"In the Stone"でチェックしているようだ。
(サンデーソングブックを書き起こしているすごいブログ(https://yamashitatatsuro.com/)があって、2020年05月10日放送分の書き起こしに、そんな記述があった。)
ボクも、"In the Stone"でチェックである。

達郎さん的にどこをどう聴くのが正解なのかはわからないのだが、ボク的には、左右の広がり、前後の奥行き、個々の楽器の分離、音色のリアリティ、ボーカルの明快さ、低域のキレ、高域の伸びなどが、満足のいくものになっているかをチェックした。
圧倒的なパンチ力でグイグイ迫ってくるカートリッジなので、繊細さというものはない。
その意味では音色のリアリティは一歩後退するし、その他の要素もパワフルさと両立する限りにおいて認められるようなものではあるが、全体的には非常に満足のいく音である。
音色の点では、リード線を付属の細いものから、WE単線を使った太いものに交換していることも大きい。
リアリティという点では限界があるものの、その艶と深みは、なかなかのものだ。

"In the Stone"を聴いていてとりわけゾクゾクするのは、コーダ?部分で一気に広がる音空間である。
もしかして、ここでゾクゾクできるかが、一番のチェックポイントなのか?(笑)
それはさておき、このカートリッジ、もう一つ大きな魅力がある。
モノラルの交換針CN-36MN1に差し替えるだけで、モノラル・カートリッジになるのだ。

設定はそのまんまで大丈夫である。
針圧は、3.5gまで上げたのほうが好結果に感じられたけど。
この圧倒的なパンチ力でガツンとくるモノラル再生は、なかなか魅力的だと思うよ。