2025年04月13日

Camel, Stationary TravellerのUKオリジナル~Doug Saxのカッティングは何処に?

<urbantango82さんから貴重な情報をいただいたので、追記しました。追記のついでに、前の記事からカスタム記事URLの設定をしていたのを思い出し、記事を差し替えてURLを変更しました。>(2025年4月14日)


今日4月13日は、1984年にリリースされたキャメル(Camel)の10作目のスタジオ・アルバム、"Stationary Traveller"のリリース記念日だというので、引っ張り出して聴いていた。


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佳曲揃いのなかなかの名盤である。
とりわけラティマー(Andy Latimer)節全開のタイトル曲が、ひたすら切なく、美しい。
寂寥感がひしひしと伝わるジャケットを眺めながら聴いていると、涙が零れそうになる。

このレコード、リアルタイムで買った記憶があるので、当時は貧乏学生だったし、うちのあるのはUS盤かなと思ったら、出てきたのはUK盤(Decca SKL 5334)だった。
Discogsを見ると、US盤の登録がない。
つまり、US盤はリリースされなかったってことだろう。
お金がなくても、当時のボクは、UK盤を買わざるをえなかったのである。

ところで、このレコード、二つばかり気になることがある。

一つはこれである。


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うちにあるのは、Side 1のマトが4なのである。

4まで進んでいても初盤なのかが気になるのではない。
Discogsを見ると、UK盤のSide 1のマトは、5しか登録されていないのである。
マト4というのは、そんなにレアなマトなんだろうか?

ちなみに、Side 2のマトには1と2があり、うちの盤は2である。
ただ、うちの盤は、Side 1のマザー/スタンパーが1 1 1で、Side 2のマザー/スタンパーも1 1 3だし、Discogsの登録情報から考えても、Side 2のマト1とマト2は同時にカッティングされたもので、最初からどちらもあったんじゃないかと思う。


マト4のレア度も気になるが、それ以上に非常に気になるのはこれである。


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インサートには、TMLでダグ・サックス(Doug Sax)がマスタリングしたと明記されているのだ。
しかし、送り溝には、どこを探してもTML刻印はない。
実際、TML刻印なんてあるはずがないのだ。

なぜなら、このレコードは、TMLではカッティングされていないからである。

送り溝には、このような刻印があるのだ。


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この▽420は、PRS. Ltd.でプレスされたことを表しているが、その後にEが刻印されているということは、カッティングはUKのEMIスタジオで行われたということである。
このレコードのカッティングが行われたのは、TMLではなく、UKのEMIスタジオなのである。

そのほか、Side 1の送り溝には、こんな刻印もある。


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このBAA、Discogsを見るとマト5にも刻印されているようで、カッティング・エンジニアのサインの匂いがプンプンするが、調べてもわからなかった。

それにしても、ダグ・サックスのカッティングは何処にいってしまったんだろうね?


urbantango82さんから、テスト・プレスに関する貴重な情報をいただいた。

Side 1のマトが2のテスト・プレスでは、冒頭の"Pressure Points"のかわりに"In the Arms of Waltzing Frauleins"が収録されているという。
なるほど、曲の差替えがあったので、Side 1のマトが進んでるのね。
市販盤バージョンの最初のカッティングがマト3なのかマト4なのかは不明だが、うちのマト4は、市販盤バージョンのファースト・カッティングの可能性もあるということだ。
ちょっとうれしい(笑)

Discogsで調べてみると、UK盤CDはこのテスト・プレスのバージョンになっていて、”Pressure Points"はExtended Mixがボーナス・トラックとして収録される構成になっている。
もしかしたら、このバージョンが、ラティマーの頭の中にある、このアルバムの本来の姿なのかもしれない。

マト2もTMLカッティングではなく、BAA刻印があるそうで、ダグ・サックスのカッティングは、差替えのためにボツになったというわけではなさそうだ。
ラベル:CAMEL
posted by 想也 at 23:25| Comment(0) | アナログ・コレクターの覚書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Rush, Grace under PressureのUKオリジナル

今日4月12日はRECORD STORE DAYで、TLには、好天に恵まれる中レコード・ストアに足を運んでいるコレクター仲間のポストが溢れかえっていたのだが、相変わらずボクは蚊帳の外である。

ってことで、RSDはまったく無視して(笑)、今日がリリース記念日だというラッシュ(Rush)の"Grace under Pressure"を引っ張り出して聴いた。


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ジャケットは相当ボロいが、盤の方はキズどころかスレもなく、とても綺麗だ。

そういや、そもそも自分の持っているのが、どこ盤なのか認識していなかった。
US盤だったっけかなと確認したら、どうやらUK盤のようだ。


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Made in UKとかの表記はないのだが、VertigoからリリースされたのはUK盤とアイルランド盤だけ(どちらも品番はVERH 12)だし、この凸リムのレーベル形状はどうみてもUKのPRS Ltd.プレスである。

送り溝をみると、A1/B1という両面マト1で、Discogsの登録を見るとわりと珍しそうだが、そこそこ売れたレコードだから、きっと数はあるよね。
それはともかく、そのマト1の隣がこうなっている。


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▽の隣は何か消されていて、その隣に130だ。
▽の隣に何が消されているかは、B面の方がわかりやすい。


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目をこらせば確認できるだろうか?
42が消されている。
420と刻印しようとして、42まで刻印したところで、間違いに気づいたんだろう。
この頃のPRS Ltd.では、USカッティングの場合は、▽130と刻印するのがルールだ。
このレコードは、MASTERDISKでカッティングされているから、▽130じゃなきゃいけないのだ。
さすがに、この間違い、マト1だけだったようで、Discogsを見ると、マト2からは、最初からちゃんと▽130と刻印されているようだ。

インナースリーブにはマスタリングのクレジットがあって、ボブ・ラディック(Bob Ludwig)の仕事であることが明記されている。
ただ、両面にMASTERDISK刻印はあるものの、その隣にRLというサインは刻まれていない。


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RL刻印のある盤が存在するのかと、UK盤だけでなく、カナダ盤やらUS盤やらチェックしてみたのだが、見つからない。
カナダ盤はほぼMASTERDISK BK(つまりビル・キッパー(Bill Kipper)のカッティング)だし、US盤もMASTERDISKのみかMASTERDISK BKである。
UK盤は、MASTERDISKのみしか登録されていない。

では、このMASTERDISKのみは、第三のエンジニアによるものなのかというと、ボクはあんがいラディックのカッティングなんじゃないかと思っている。
確証まではないのだが、筆跡がね、ラディックっぽい(笑)


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ってことで、UK盤が一番良いんじゃないかなー
比べたことないけど(笑)

ところで、このアルバム、サブスクにはないのね。
けっこう良いアルバムだと思うんだけどなー
ラベル:Rush
posted by 想也 at 00:16| Comment(0) | Bob Ludwig(RL)の仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする