2017年11月02日

Free, HeartbreakerのUKオリジナル~ファースト・プレスと謎のセカンド・プレス

<謎のセカンド・プレスが、Discogsに登録されていたので、追記しました。>(2025年3月18日)

先月、フリー(Free)の伝記本の翻訳版が出版されたこともあって、最近、ボクのTLにもフリーの話題がよく流れてくる。

ボクもフリーのことはかなり好きだが、若い頃から好きだったというわけではなく、2001年から2002年にかけて紙ジャケCDがリリースされた際に友人の影響で聴き始めたので、思い入れという点ではそれほど深くない。

ってことで、今回の翻訳本については、アマゾンにはまだ在庫ありだが(2017年11月2日時点)、とりあえず静観している。
1500部限定生産だというし、ボクより熱心なファンの方優先かなと。

さて、今回のお題は"Heartbreaker"のUKオリジナルである。
なぜこのお題かといえば、TLに流れてきた話題のなかに、ヤフオクで「掲載写真ではセカンド・プレスのジャケットと確認できるものについて初回プレスと銘打って出品されている」という話題があったからだ(当該オークションはすでに終了している)。

この話題に関連して仲間内で情報交換していたら、ボクがいままで知らなかったバージョンのジャケットが存在することを知った。
それから、実はこちらのほうが重要なのだが、ボクが持っているセカンド・プレスが、Discogsにも掲載されていない謎のセカンド・プレスだということに気づいたのである。

<2025年3月18日追記>
その後、いつかはわからないが、Discogsにも登録されていた。
「コントラクト・プレス(Contract Pressing)」とされている。
確かに、言われてみれば、セカンド・プレスというより、コントラクト・プレスという方がしっくりくる。
ただ、"Walking Eye logo"って何だよ(笑)
後述のように、あれはArtisan Sound Recordersのロゴ(ドラムとスティックだと思う。)だろー

そんなわけで、UKオリジナル・ファースト・プレスの特徴をセカンド・プレスとの比較で明らかにしておくのと同時に、謎のセカンド・プレスを紹介しようと思ったのであった。
(いつも通り640×480の画像なのでそれほど表示に負荷はかからないと思いますが、今回は数がとても多いのでご注意ください。全部で15枚あります。)

このレコード、ボクはとくに掘ったわけではないので、2枚しかもっていない。
上(手前のほう)がファースト・プレス・ジャケットで、下(奥のほう)がセカンド・プレス・ジャケットである。
(混乱がないように、すべての写真で、重ねて置いた上のほうをファースト・プレス、下のほうをセカンド・プレスにしてある。なお、あらたに存在を確認したものをセカンド・プレス・ジャケットとすると下はサード・プレス・ジャケットということになるが、あとで説明するように、あらたに存在を確認したものもファースト・プレス・ジャケットとしてよいと思われるので、セカンド・プレス・ジャケットとしておく。)


20171102-1.jpg


手持ち盤の比較では、ファースト・プレス・ジャケットのほうがマゼンタが弱い(タイトルの紺もバンド名の紫も色が薄めになっている)が、これは紫外線の影響でマゼンタが退色したせいだろう。
少なくとも個体差のレベルなので、この点での判定はできないと思う。

それに対して、裏ジャケの差は歴然としている。


20171102-2.jpg


えっ?小さくて違いがわからない?
それでも、右上はわかるだろう。


20171102-5.jpg


そう、セカンド・プレス・ジャケットには、右上にレコード番号のILPS9217が印刷されているが、ファースト・プレス・ジャケットには印刷されていないのである。

他にも違いはある。
一つは右下の印刷会社のクレジットである。


20171102-4.jpg


ファースト・プレス・ジャケットでは、大きなフォントで"Printed and made by Robor Ltd."だが、セカンド・プレス・ジャケットでは、小さなフォントで"Printed and made by Robor Limited"となる。
フォントの大きさは比較なので単体だと判定しにくいが、最後が"Ltd."なのか”Limited"なのかで判定可能である。

また、これはこのレコードに独自のものではなく、アイランドのレコードに共通したことなのだが、中央下部のロゴの部分が、1973年にPeters Squareへオフィスを移動したことに伴って変わる。
ロゴの下が、"island records ltd/basing street london w11"と二段表記だったのが、住所表記が消えて"island records"という一段表記になるのだ。


20171102-3.jpg


背表紙も少し違う。
ファースト・プレス・ジャケットのほうがフォントが大きい。でも、これは比較しないとわからないよね(笑)


20171102-6.jpg


さて、ここで、あらたに存在を確認したジャケットの話をしておこう。
それは、中央下部のロゴの下が"island records ltd/basing street london w11"と二段表記で、印刷会社表記が大きなフォントで"Printed and made by Robor Ltd."なのだが(ここまではファースト・プレス・ジャケットの特徴に一致)、右上にレコード番号の表記がある裏ジャケットだ。

レコード番号表記は有り→無しというのも考えにくいので、無し→有りの順だろう。
ただ、前作"FREE AT LAST"の裏ジャケットにレコード番号表記があることからして、レコード番号表記無しというのは単純なミスだったと思われる。
ってことで、これもまたファースト・プレス・ジャケットと言っていいんじゃないかと思うのである。
(ジャケットと盤は別々に製造されるわけだから、発売日までにレコード番号表記のあるジャケットも印刷されていたとすれば、その中にファースト・プレスの盤が入っていた可能性もあるしね。)

ジャケットの見分け方の話はこのぐらいにして、インナースリーブや盤の話に移ろう。

あいにくボクのもっているセカンド・プレスはインナースリーブが欠品だったので比較ができない。
ファースト・プレスのインナースリーブは下記のようなものである。

20171102-8.jpg
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セカンド・プレスのインナースリーブは写真でしか見たことがないが、若干厚手の紙で、下部の両角がラウンドカットされ、上部の両角も斜めにカットされているようだ。

レーベルについては、ファースト・プレスもセカンド・プレスも同じである。


20171102-9.jpg
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上がファースト・プレスで下がセカンド・プレスだが、セカンド・プレスのほうがリムや背景の色が淡いという違いしかない。
これは個体差の可能性もある。

Runoutに目を移そう。

ファースト・プレスのSide1のRunoutを見ると、手書きのMatrixで末尾にA-1とあるが、1の部分が横線で消してある。


20171102-11.jpg


そして、手書きのMatrixの反対側ぐらいのところに機械打ちのMatrixで末尾にA-2Uとあり、STERLING刻印が重なっている。
そう、このレコードはSTERLINGカッティング、つまりUSカッティングなのである。


20171102-12.jpg


Side2も同じようにB-1の1が横線で消され、機械打ちのMatrixで末尾にB-2Uとあり、こちらは重ならずにSTERLING刻印がある。
STRELING刻印の下にLHのイニシャルがあって、Lee Hulkoのカッティングであることがわかる。

以上がファースト・プレスなのであるが、2Uってことはボツカッティングの1Uが存在するはずである。
まぁ、当然、テスト・プレスにしか存在しない。
このテスト・プレスを友人が持っているのだが、その友人によれば、A-1U/B-1Uは英カッティングで、鮮度抜群なのはもちろん、どうしてボツになったかわからないという素晴らしい音質だという。
スケール感抜群でドバーっと音場が広がるんだそうで・・・

確かに、普通のファースト・プレス(ちなみに、うちの盤のマザー/スタンパーは、2RD/1RDである)はドバーっと音場が広がるような音ではないが、低域のよく効いた厚みのある音がズドーンと鳴るので、これはこれで悪くないと思う。
鮮度はともかく、ボクの好みの音だ。

それに対して、ボクのもっているセカンド・プレスは、音はファースト・プレスより広がるものの、低域が引き締まりすぎて迫力に欠ける。
まったく印象が違う音で鳴るのである。

このセカンド・プレスが、どうして謎なのかって?
それは、こいつが、どうもUSカッティングでフランス・プレスらしいからである。

手書きのMatrixであるが、これはSTERLINGとは違う。
実際、STERLING刻印はどこにもない。


20171102-14.jpg


かわりにこんなシンボルが刻んである。


20171102-15.jpg


スタンプではなくて手書きってところが気になるが、このシンボルはカリフォルニアにあるArtisan Sound Recordersのもので間違いないんじゃなかろうか。

さらに謎なのは、これである。


20171102-16.jpg


これは、フランスのプレス工場A.R.E.A.C.E.M.のシンボルだ。

セカンド・プレスに、STERLINGとは異なるUSカッティングの、しかもフランス・プレスの盤が突如出現するというわけである。

謎でしょ?

この謎の答えは・・・

さっぱりわからない。
(ガリレオの湯川教授風にお読みください 笑)
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posted by 想也 at 23:59| Comment(0) | アナログ・コレクターの覚書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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