20年近く前にジャズのオリジナル盤を集め始めた頃、右も左もわからない中、なんとなくオリジナル盤ぽいというだけの理由で(確か1000円くらいで安かったし)買ってみたもので、ドン・シャーリーのことを知っていて買ったわけではない(笑)
だから、すっかり忘れていたのを、映画『グリーンブック』が思い出させてくれたわけである。

引っ張り出してみると、この”Tonal Expressions”というアルバム(Cadence CLP 1001)、どうやら彼のファースト・アルバムらしい。
Discogsを見ると、レーベル上のクレジットにASCAPがあるものとないものがあるようだ。
ASCAPを後で消すというのも考えにくいので、ないほうが先だろう。

うちのにはASCAPがない。
ってことはファースト・プレスかな?
ファースト・アルバムのファースト・プレスを持ってるって、なんか気持ち良いぞ(笑)
超久しぶりに聴いてみたところ、確かにジャズではあるものの、クラシカルな要素も感じられ、なかなかにおもしろい。
ガーシュインの”The Man I Love”とか、”Rhapsody in Blue”をちょこっと引用したイントロから惹きこまれてしまう。
でも、はっきり言って、音はあまり良くない。
というか、それ以前に、これはRIAAカーブではないんじゃ?
このアルバム、ジャケットにも書いてあるように、ピアノのドン・シャーリーとベースのリチャード・デイヴィス(Richard Davis)のデュオで演奏されているのだが、ベースがほとんど聴こえてこない。
そりゃ、耳を凝らせば聴こえてはくるが、ピアノの低音部も含めて、実に弱いのである。
で、「RIAAから低音をもちあげないといけないカーブなんてあるのか?」と、古いイコライザ―・カーブの可能性があるときにいつも参考にしている資料を見てみると、1952年以前のRCA Victorのカーブでは、Bass(50Hz)を+5dB、Treble(10KHz)を+2dBとある。

Cadenceってのは、RCA Victor系だってことだから、辻褄があう。
Runoutを見たら、やっぱりRCA Victor系のマトじゃないか。

まぁ、このドン・シャーリーのレコードは1955年なんで、教科書通りならRIAAでなきゃいけないんだけど、すぱっと切りかわらずに、52年以降も古いカーブでカッティングされたものもあったのだとしたら、その古いカーブとはRCA Victorの旧カーブのはずだ。
ってことで、とりあえず、アンプのトーンコントロールで、古いRCA Victorのカーブに合わせて聴いてみる。
これでしょ。
どう聴いても、こっちがベストのバランスだ。
それにしても、このイコライザ―・カーブ問題は厄介だなぁ・・・
ラベル:Don Shirley