2019年10月29日

羊の声で

”あなたでも本気で怒ることってあるの?”

お酒が入って少し陽気になった彼女がそう訊いた。

”そりゃ、僕だって怒るときは怒るさ。でも、狼の血筋じゃないから、吠えるとしても羊の声でだけどね。”

”なにそれ?”

なにやらツボにはまったようで、彼女はケラケラと笑い出した。

僕と彼女は「Mr.Childrenが好き」というので意気投合したのがきっかけで親しくなった。
だから、当然通じると思ったのだが、どうやら『SUPERMARKET FANTASY』はあまり聴きこんでいないらしい。

”ミスチルに、「羊、吠える」って曲があるんだけど、知らない?”

”どんな曲だっけ?”

僕はポケットから取り出したiPodで「羊、吠える」を再生して、彼女に渡した。
彼女はイヤホンを耳に挿し込んで、じっと聴いている。
ときどきクスリと笑いながら。

聴き終えた後、まっすぐに僕の目を見ながら、彼女は笑った。

「馬鹿みたい」
ではなく、
「あなたらしい」
と言ながら。





♪「音楽が奏でる情景」は、好きな音楽にインスパイアされて書きとめた(たぶん 笑)フィクションです♪
ラベル:Mr.Children
posted by 想也 at 01:36| Comment(0) | 音楽が奏でる情景 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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