亡くなったのは1980年だから、もう45年になるのね・・・
命日に聴くのに相応しいレコードはどれか悩んだのだが、これを選んだ。
ビル・エヴァンス・トリオが1961年にリリースしたライブ盤、"Sunday at the Village Vanguard Featuring Scott LaFaro"のUSオリジナルSTEREO(Riverside Records RLP 9376)である。
1961年6月25日にヴィレッジ・ヴァンガードで行われたビル・エヴァンス・トリオのライブを収録したものだが、その11日後の7月6日にベースのスコット・ラファロ(Scott LaFaro)が交通事故に遭って亡くなってしまったので、翌1962年にリリースされた"Waltz for Debby"とともに、このトリオの最後の演奏をおさめたレコードになってしまった。
タイトルに"Featuring Scott LaFaro"が付されているのは、追悼盤の意味が込められているのだろう。
内容的にもラファロのベースが堪能できる演奏が集められている。
聴きやすさでは圧倒的に"Waltz for Debby"なので、ジャズを聴き始めた頃は、"Sunday at the Village Vanguard”のほうはいまひとつ地味だなーなんて思っていたのだが、いまは同じくらい好きだ。
さて、このレコードの初盤についてだが、まず、ジャケットの表側が初盤はテクスチャーになっている。
Discogsには、はっきり書いてないのだが、どこかで初盤はテクスチャーだと聴いた記憶がある。
それに、テクスチャーが追悼盤らしい独特の雰囲気を醸し出している。
ボクには、テクスチャー・ジャケットが初盤としか考えられない。
この頃はテクスチャー・ジャケットってあんまり一般的ではなかったはずなので、追悼盤として、最初はちょっとお金をかけたんじゃないだろうか。
(違うぞーという情報をお持ちの方は、ぜひご教示くださいませ。)
問題なのは、レーベルである。
DGありとDGなしが存在するのだが、うちのはDGなしなのだ。
以前、スタンリー・タレンタイン(Stanley Turrentine)"That's Where It's At"のUSオリジナルについて書いたとき(https://sawyer2015.seesaa.net/article/513550419.html)、1962年だとDGなしでもいいんじゃないかというようなことを書いたが、"Sunday at the Village Vanguard”は1961年である。
まだDGありが初盤だろーと言われると、そんな気もしてくる。
しかし、Discogsの登録を確認すると、どうやらこのレコード、3か所でプレスされている。
一つはAbbey Recordプレスで、これにDGがあるのは間違いない。
うちの盤は、送り溝にABと刻まれていないので、Abbey Recordプレスではない。
もう一つはMGMプレスで、これにはDGがないが、うちのとはレーベル形状(リングの位置)が違うし、うちの盤の送り溝には、ブロック形状のS(はためく旗みたいなやつね)もない。
そのかわりに、送り溝にはこんな刻印がある。
これはどう見てもPである。
しかも、Discogsに登録されているMONOのWLPの送り溝にもPが刻印されているらしい。
そのWLPにもDGはなく、うちの盤とレーベル形状が同じに見える。
Pといえばコロムビアのピットマン工場だが、馴染みのあるPはこんなにはっきりとした刻印ではなく、いまにも消えそうな薄い刻印だ。
それに、1961年て、まだピットマン工場は稼働してなかったんじゃ?
なーんて思いつつ調べてみると、なんと1961年から稼働してるじゃないか。
そういえば、60年代のコロムビアのレコードの送り溝に、はっきりしたPの刻印を見たことがあるような・・・
それで、レコード棚を漁ってみたら、発見した。
これは、デューク・エリントン(Duke Ellington)が1960年にリリースした"Blues in Orbit"だが、はっきりとしたPが刻印されている。
プロモなのにマトが1G/2Fと進んでいるのでおかしいなーと思っていたのだが、ピットマン工場プレスってことは、1961年ものだったか・・・
レーベル形状も、うちの"Sunday at the Village Vanguard”と一致している。
ってことで、Discogsでは、プレス工場が特定されていないが、"Sunday at the Village Vanguard”をプレスしていた3つめの工場は、コロムビアのピットマン工場で間違いないんじゃないかと思う。
しかも、このピットマン工場でMONOのWLPもプレスされている。
ってことで、うちのSTEREOも、初盤の一種ということでいいんじゃないかと思うのである。
ラストの"Jade Visions"が、実に追悼盤の最後に相応しく、沁みるのである。
R.I.P.
ラベル:Bill Evans

