2025年04月04日

Heart, Little QueenのUSオリジナル~初回ジャケットの話

<TMさんから、WLP2枚の貴重な情報をいただいたので追記しました。>(2025年4月4日)

またまたハート(Heart)"Little Queen"のUSオリジナル(Portrait JR 34799)の話である。
これで3回目?
(どんだけ好きなんだ? 笑)


20250329-1.jpg


先日、Yuzuさんから、このレコードのジャケットについて、非常に興味深い情報を提供していただいた。
なんとテクスチャーのないジャケットが存在しており、それが初回ジャケットではないかというのだ。

WLPの入っていたプロモ・ステッカーの貼られたジャケットが、テクスチャーなしだったというのである。
しかも、そのジャケットは、通常のテクスチャー・ジャケットとタイトル"Little Queen"の部分も違っているというのだ。
タイトル"Little Queen"の文字は黒と白の二色で構成されているが、通常のテクスチャー・ジャケットでは、黒の上に白が載っているのに対して、テクスチャーなしのジャケットでは、白の上に黒が載っているということらしい。

Discogsで確認すると、確かに、サンタマリア工場プレスの初回ジャケットは、「テクスチャーなしで、タイトルの"Little Queen"は白の上に黒が載った文字だ」と書いてある。

では、うちのはどうかというと、テクスチャー・ジャケットなのに白の上に黒が載った文字なのである(笑)


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これはいったいどういうことなのか、その謎を解く鍵はここにある。


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ジャケットに印刷されている品番はPR 34799で、その上にJR 34799と印刷されたシールが貼ってある。

ボクはずっと、このシールから透けて見えるPRというプリフィックスは、カナダ盤のものだと思っていた。
想定以上に売れたためにジャケットの製造が間に合わなくなって、急遽カナダから取り寄せてシールを貼って間に合わせたのかなと。
しかし、このジャケットには、どこにもカナダ製造であるとは書かれていない。
また、Discogsでカナダ盤を確認すると、裏ジャケット下部のポートレイト・ロゴの下が3行になっていて、2行のUS盤とは明らかに違っている。

うちのは2行なんである。


20250329-4.jpg


つまり、うちのPRからJRに修正されたジャケットは、US盤ジャケットなのだ。

ここで思い当たったのがプリフィックスの変遷である。
品番のプリフィックスは、価格改定に伴って変わる。
ポートレイトはコロンビア系列だから、JRの前はPRだ。
しかも、その変更は77年の初頭である。

このアルバム、マッシュルームとのゴタゴタでリリースが若干遅れたために、PR品番でリリースされる予定が、JR品番でリリースされることになったんじゃないか。
そうだとすると、うちのジャケットこそ、最初期ジャケットかもしれない。

そういう前提で考えてみると、顔の部分だけテクスチャーを消すのは、テクスチャー加工後に部分的にプレスをかけることで可能だろうから、テクスチャーあり→テクスチャーなし→テクスチャーありの順に変遷したんじゃないだろうか。

つまり、こういうことだ。
最初はテクスチャー・ジャケットだったが、それを見たアンとナンシーは、「わたしたちの顔を皺だらけにする気?」とクレームをつけた。
その結果、テクスチャーなしのジャケットが製造されたのだが、やっぱりテクスチャーはあった方がいいんじゃないかという意見も強かった。
そこで、じゃ、手間はかかるが顔の部分だけテクスチャーがないように加工しようということで決着がついた。

タイトルの"Little Queen"の文字については、PR修正JRのテクスチャー・ジャケットとテクスチャーなしジャケットが白の上に黒が載った文字のバージョン、その後のテクスチャー・ジャケットが黒の上に白が載った文字のバージョンということになる。

この流れが、一番自然な気がするなー


TMさんから貴重な情報をいただいた。
2枚のWLPを所有されており、いずれもレーベル上の品番はJRなのだが、背表紙はPR品番(シール修正なし)のテクスチャー・ジャケット(しかも、顏部分のテクスチャーを消す加工もなし!)で、"Little Queen"の文字は黒が上のバージョンだというのだ。
これは、ボクの仮説を裏付けるのに十分なエビデンスだと思う。

特に、顏部分のテクスチャー加工が消されていないPR品番のテクスチャー・ジャケットの存在が確認できたことは大きい。
ただし、WLPでもテクスチャーなしのジャケットが存在するので、この最初期ジャケットは、基本的に市販品=通常盤には存在しないんじゃないだろうか。

ってことで、"Little Queen"のジャケットは次のように変遷したのだと思う。

1.背表紙がPR品番のテクスチャー・ジャケットで、顏部分のテクスチャーも消されていないもの。"Little Queen"の文字は黒が上。―WLP
2.背表紙がPR品番のテクスチャーのないジャケットで、"Little Queen"の文字は黒が上。―WLP&通常盤
3.背表紙がPR品番だがシールでJR品番に修正されているテクスチャー・ジャケットで、顏部分のテクスチャーが消されているもの。"Little Queen"の文字は黒が上。―通常盤
4.背表紙がJR品番のテクスチャー・ジャケットで、顏部分のテクスチャーが消されているもの。"Little Queen"の文字は白が上。―通常盤

3は最初期ジャケット1のシール修正再加工バージョンなので、通常盤の初回プレスには、2と3がどちらも存在していたんじゃないかと思う。

それにしても、まったく想像もしていなかったところにまで辿り着いたなぁ(笑)
ラベル:heart
posted by 想也 at 16:41| Comment(9) | アナログ・コレクターの覚書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
なるほど~、見事な考察です。ジャケが3種類あったとは驚きでした。
当時マッシュルームとは裁判沙汰でごたごたしてましたからね。
タイトル修正はよくある視認性の問題でしょうかね。
記事にしていただきありがとうございました!
Posted by Yuzu at 2025年03月30日 16:38
Yuzuさん

タイトル修正は視認性の問題でしょうね。
白が上のほうが目立ちますし。

いえいえ、おかげさまで、うちのジャケットのカナダ盤ジャケ疑惑を晴らしてあげることができました(笑)
Posted by 想也 at 2025年03月30日 20:07
このアルバム、自分も好きですがうちにUS盤3枚あったので情報を提供します。

1.WLP ストリップ貼り、裏面ゴールドスタンプあり マト1M/1D PR34799でテクスチャーあり。黒上
2. WLPですがストリップなし、スタンプなし。 マト1M/1D PR34799でテクスチャーあり。黒上
3.JR34799(シールなし)、顔面のみテクスチャーなし。白上
Posted by TM at 2025年04月02日 21:38


TMさん


貴重な情報ありがとうございます!
私の仮説のエビデンスと言えそうです。
いくつか確認させてください。

1.背表紙のPR34799はシール修正はされていますか?
2.WLP二枚もレーベル上の品番はJR34799ですよね?
3.WLP二枚のテクスチャージャケットは、顏部分にもテクスチャーがあるんですか?

よろしくお願いしますm(_ _)m
Posted by 想也 at 2025年04月03日 13:41
お役に立てれば幸甚です。

1.背表紙のPR34799はシール修正はされていますか? 
→ 2枚ともシールなくPRのままです。
2.WLP二枚もレーベル上の品番はJR34799ですよね?
→ レーベル上は2枚ともJRです。
3.WLP二枚のテクスチャージャケットは、顏部分にもテクスチャーがあるんですか?
→ 2枚とも顔を含めた全面テスクチャーです。
Posted by TM at 2025年04月03日 22:22
TMさん

お返事ありがとうございます!
確信がもてましたー
追記させていただきましたm(_ _)m
Posted by 想也 at 2025年04月04日 17:51
想也さま

Heartの"Little Queen"今回も楽しい考察、興味深く読ませて頂きました
わたくしは日本盤とUK盤しか手元に無く、US盤は所有していませんので
何かの機会に見つけたら確認してみたいと思います

ちなみに、日本版は"Little Queen"は白が上のタイプで
UK盤は黒が上のタイプでした(気づかなかった)

普通は白抜き文字に対して黒のシャドウを入れるのが定番のような気がしますが
刷りの際に色版の順番を間違ったのか、意図したものなのか?

グラフィックデザインの仕事をしている事もあり興味深いです

キタカツ
Posted by キタカツ at 2025年04月05日 12:01
キタカツさん

いつもありがとうございます!
おそらくUKは米本国とほぼ同時発売、日本は少し遅れて発売だったんでしょうね。

>刷りの際に色版の順番を間違ったのか、意図したものなのか?
>
>グラフィックデザインの仕事をしている事もあり興味深いです

そういうお仕事なんですね。
どっちがありがちなんでしょう?

個人的には、HEARTというバンド名が白文字なので、それに重ねるタイトルは、最初、意図的に黒文字にしたんじゃないかと思いますが。
Posted by 想也 at 2025年04月05日 15:30
たびたび登場で申し訳ないです

実は印刷的には両方とも意図的ではあるのですね

通常印刷する際は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)に、ブラック(K)の4色で
各4版の網点の重なりで絵にしていくわけです。
白い部分は4版の網点が入らないので紙白(もしくは地色)になります

となると、
黒が上にきているは、黒のLittle Queenの文字版があり
白が上にきているものは、黒の影文字部分だけの版になるので
想也さんの考察にもある1~3までの、黒が上にきているものが初期のジャケットで
4から白が上にきて黒が影版に変更になったというのがジャケットの変遷ではないでしょうか

日本盤は本国より遅れて発売されてと考えてもジャケットが4のタイプであるのが頷けますね

ただデザイン的に、なぜ黒が上にくるタイプの白抜きが黒文字に対して左斜め上にしているのか、個人的には白抜きを右斜め下に入れて黒文字をたって見えるようにしますが
これはデザイナーさんの意図なのか? もしくは印刷所のミスなのか?
でも、わたくしも黒が上にくるタイプは初期のものだと思います

想也さんの考察力流石です!

また長くなっちゃいました失礼しました

キタカツ
Posted by キタカツ at 2025年04月05日 18:17
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