2021年08月17日

Madonna, Like a Virginの日本盤

昨日8月16日はマドンナ(Madonna)の誕生日ということで、"Like a Virgin"でも聴いてお祝いしようと思っていたら、ナンシー・グリフィス(Nanci Griffith)の訃報が流れてきた。
亡くなったのは13日ということだから訃報が流れてくるまでにちょっと時間がかかっているが、これはやっぱり日本における知名度が影響しているんだろうか。

なんとなくDiscogsで調べてみると、彼女のLPやCDはほとんど日本盤が出ていない。
日本盤が出てるのって1997年リリースのCD"Blue Roses From The Moons"(邦題は『夜空に輝く青い薔薇』)ぐらいしかないんじゃないだろうか。

そういうボクだって、彼女のことを知ったのは数か月前のことで、いまのところアルバムも一枚しかもっていない。
1989年にリリースされたアルバム"Storms"の高音質再発盤だ(このレコードの詳細については、https://sawyer2015.blog.ss-blog.jp/2021-05-22をご覧ください)。

このレコードをボクはとても気に入った。
だから、これからボチボチと彼女のレコードを集めようと思っていたのだ。
彼女のキュートな歌声は、きっとこれからもずっとボクを癒してくれると思う。
"Storms"を聴きながら、そんなことを考えた。
夕べは、その後も、サブスクで彼女のアルバムをずっと聴きながら、冥福を祈っていた。

そんなわけで、マドンナの誕生日を祝うのは一日遅れである。
まぁ、サードまではよく聴いていたものの、その後はあんまり知らない、ファンと言っていいのかどうかもわからないボクだから、それでいいのだ(笑)


20210817-1.jpg


そんなボクだから、"Like a Virgin"も持っているのは日本盤(ワーナー・パイオニア Sire P-13033)だけである。

っていうか、このアルバムは、帯にも書いてあるように、USカッティングである。
送り溝には、USマトにくわえて、両面にこの刻印が刻まれている。


20210817-2.jpg


天下無敵のMASTERDISK RL刻印である。
日本盤はビニールの材質が高品質なうえにプレス技術も高いから、それにRL刻印が加わったら、鬼に金棒ではないか。

ワーナー・パイオニアは自社工場がないので、東芝EMIとか東洋化成とかCBS/SONYとかにプレス委託しているが、このレコードはCBS/SONYプレスである。
送り溝にCS刻印は見当たらないが、レーベル形状がCBS/SONYだし、こんなPMもある。


20210817-3.jpg


4SZってことは、1984年12月プレスだ。

12月?

"Like a Virgin"は欧米先行で1984年11月12日発売だが、日本盤だって11月28日には発売されている。
12月プレスって翌月プレスじゃん!(泣)

送り溝のうっすい日本マトを確認すると、次のように刻印されていた。

P-13033-1 1M-A-26
P-13033-2 1M-A-30

翌月プレスだと考えると、案外進んでいない。
流石日本盤、音も素晴らしいと思う。
まぁ、若いスタンパーの盤と実際に聴き比べてみたら違うんだろうけど、ボクはもうこれでいいや。

それより気になったのは、Side 2の送り溝に刻まれたUSマトである。
Side 1の方はいたって普通だったのだが、Side 2のほうは、どう見ても凸マト(つまり、ラッカーまたはマザーに刻まれたものではなく、マスターまたはスタンパーに刻まれたもの)にしか見えないのだが・・・
(写真は、どんなに頑張って撮っても凸マトに見えるようには撮れなかったので割愛。)
これって、どういうこと?
ラッカーに刻み忘れて、メッキ処理後、慌ててマスターにカリカリと書き込んだってことだろうか?
それとも、ボクの目がおかしいのか?

"Like a Virgin"日本盤をお持ちの方、ぜひSide 2のUSマトをご確認くださいな。
ラベル:Nanci Griffith MADONNA
posted by 想也 at 21:40| Comment(2) | Bob Ludwig(RL)の仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年12月31日

それは幻?―Hall & Oates, Big Bam BoomのUSオリジナル

昨日、TLでちょっと話題になったので、ホール&オーツ(Daryl Hall & John Oates)"Big Bam Boom"のUSオリジナル(RCA ‎AFLI-5309)―1984年10月12日リリース―を引っ張り出した。

実は、このレコード、ちょっと気になることがあって、レコード・ショップで見かける度に確認していることがあるのだ(って、新型コロナの影響で、もうずいぶんとレコード・ショップには行けてないのだが)。

何が気になっているのかって?
その話は最後にするとして(勿体ぶるのである 笑)、まずは、USオリジナルがどんなものなのか確認しておこう。

ボクの手許にあるUS盤は2枚だ。
いずれもレコード番号がAFLI-5309のもので、AJL1-5336の再発(レコード番号をCD番号に合わせたもの)は持っていない。


20201231-01.jpg


「写真もまともに撮れないのか?ジャケットが寝転んでるぞ。」と思った貴方、これでいいんである。
この状態で向かって左側つまりダリルの足の先に背表紙があるのだ。


20201231-02.jpg


まぁ、背表紙が底にあるトップオープンと理解してもいいのだが、便宜上、サイドオープンの寝転びジャケと理解しておく(笑)
この仕様は二枚とも同じである。

インナースリーブも二枚とも同じだ。
このレコード、Side AがBam Side、Side BがBoom Sideとなっていて、インナースリーブもそれに対応している。


20201231-09.jpg
20201231-11.jpg


Bam Sideのほうには、"Mastered by Bob Ludwig"というクレジットも確認できる。


20201231-10.jpg


レーベルもBam SideとBoom Sideという仕様で、これも二枚とも同じである。


20201231-04.jpg
20201231-05.jpg


うちにある二枚の違いは、マトの違いとステッカーの有無である。

一枚はA10/B10で、もう一枚はA11/B11だ。
いずれも両面にMASTERDISK RLの刻印がある。


20201231-08.jpg
20201231-07.jpg
20201231-06.jpg


送り溝の詳細は次の通りだ。

AFLI-5309-A-10 MASTERDISK RL I A1f
AFLI-5309-B-10 MASTERDISK RL I A1m

AFLI-5309-A-11 MASTERDISK RL I A3o
AFLI-5309-B-11 MASTERDISK RL I A4u

IはRCAのインディアナポリス工場を示す刻印なので、A10/B10のほうはスタンパーがA1f/A1mで、A11/B11のほうはスタンパーがA3o/A4uということだろう。

A11/B11のほうはずいぶん進んでいる感じだが、まぁ、少々レイトのプレスだと推測されるので仕方ない。
このA11/B11の盤のほうには、このステッカーが貼ってあったのだが、このステッカー、おそらく1985年3月~4月頃に使用されたものだと推測できるからである。


20201231-03.jpg


ステッカーの最上部には"INCLUDES THE HITS"とあり、上からシングルカットされた順番に曲名が並んでいる。
"Out of Touch"は先行シングルで1984年10月3日リリース。
セカンドシングルの"Method of Modern Love"は1984年12月15日リリース。
サードシングルの"Some Things Are Better Left Unsaid"は1985年3月16日リリースだ。
"INCLUDES THE HITS"はこの3曲を示しているのだろう。
フォースシングルの"Possession Obsession"のリリースは1985年6月8日になるが、最後から二番目に鎮座しているから、このステッカーが使われたのは、1985年3月~4月頃だと推測できるんじゃないかと思う。

じゃ、このA11/B11、音はダメダメかというと、まったくそんなことはない。
それどころか、ボクにはA10/B10よりずっと良く聴こえる。

マト違いによる音の差はあまり大きくないという意見もあったので、微妙な差がortofon VNLで増幅された結果、まるで違うものに聴こえているのかもしれないが、うちで聴く限り、マスタリングのレシピが違うんじゃないかというくらい違う。

A10/B10は低域が重くて重厚だが高域の抜けがいま一つだ。
それに対してA11/B11は、低域が軽やかにはずみ、高域は爽やかに抜ける。
そのせいか音場が倍くらいに広がって、そこにキラキラとした80年代らしい音空間が充満している。
圧倒的にA11/B11が心地よいのである。

それにしてもA10とかA11とかって、どういうことだろう?
9枚もボツカッティングがあったんだろうか?
謎である。

カナダ盤とかオーストラリア盤とか、INTのついた海外向けカッティングには一桁の数字のものがあるが、Discogsを見る限り、MASTERDISK刻印のみでRL刻印はなさそうだ。
カナダ盤のINT-2/INT-2にはTD刻印があるようなので、これがTony Dawseyのカッティングだとすると、海外向けカッティングには基本的にラディックはタッチしていなかったのかもしれない。

ちょうどCDへの移行期で、ラディックは、自分はCDのマスタリングだけにして、アナログは若いのに任せようと思っていたところ、国内向けのものだけでもラディック自身に切ってもらいたいという要望があって、急遽10と11のラッカーを切ったのかもしれない。
まあ、ただの妄想だけど(笑)


さて、いよいよ、「ずっと気になっていること」の話である。

ボクは、このアルバム、もう一枚持っている。
日本盤の見本盤である。


20201231-12.jpg


写真のとり方は、これで良い(笑)
そう、日本盤はサイドオープンで寝込んでいないジャケットなのである。
向って左、つまり帯側に背表紙がある。


20201231-13.jpg


それだけではない。
裏ジャケットが、US盤と日本盤は全然違うのである。


20201231-14.jpg


日本盤には赤い見本盤シールが貼ってあるのですぐわかると思うが、向かって右がUS盤で左が日本盤だ(全体がわかるように帯は外した)。

個別に見てみよう。


20201231-15.jpg


US盤の裏ジャケには、表ジャケと同じ(ただし色違いの)Hall & Oatesロゴが右上にでーんと鎮座している。


20201231-16.jpg


日本盤の裏ジャケには、Hall & Oatesロゴがないが、Big Bam Boomの文字に寄り添うように収録曲が印刷されている。
左上を拡大してみよう。


20201231-17.jpg


実は、UK盤とかドイツ盤とかも、日本盤と同じ裏ジャケである。

で、何が言いたいかというと、こうしたジャケ違いが起こる理由としてもっとも考えられるのは、初回ジャケットが作られ、その版下が各国に送られた後、本国でジャケット変更があったというパターンなので、もしかしたら、US初回ジャケも、日本盤のような裏ジャケだったかもしれない、ということなのである。

そんなわけで、レコード・ショップでこのレコードのUS盤を見かける度に、裏ジャケを確認しているのだ。
でも、どうもなさそーなんだよなー

ふと思いついたのが、実はCD用のジャケを日本ほか各国はLPに使っちゃったんじゃないかということ。
で、US盤CDの裏ジャケを確認してみると、確かに曲名は散りばめられているのだが、Hall &Oatesロゴが右上に鎮座しているのだ。
ビミョーだなぁ。

ということで、この問題はなお未解決なのである。
ボクが存在するかもしれないと思っっているUS初回ジャケ、それはただの幻なのだろうか?



そうそう、お約束ということで・・・


20201231-20.jpg


日本盤はビクタープレスなので、透けます(笑)
ラベル:Hall & Oates
posted by 想也 at 20:27| Comment(0) | Bob Ludwig(RL)の仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年09月21日

Bryan Adams, RecklessのUSオリジナル~モナーク工場の最後の輝き

"RECKLESS"は、カナダのSSW、ブライアン・アダムス(Bryan Adams)が1984年11月5日にリリースした4枚目のアルバムで、彼の最高傑作である。
まぁ、最高傑作がどのアルバムであるかは主観によるかもしれないが、少なくとも商業的に一番成功したアルバムであることは確かだ。
なにしろ、アメリカだけで500万枚以上、世界的には1200万枚の売り上げを達成したという、大ヒットアルバムなのである。

このアルバム、売れに売れただけにUS盤もゴロゴロ転がっているのだが、悩ましいことに、バリエーションがいろいろある。
それにもかかわらず、Discogsを見ても、ジャケットとインナースリーブについてはバリエーションへの言及すらされていない(2020年9月21日現在―見落としてたらごめんなさい)。

内容が素晴らしいうえに、ボブ・ラディック(Bob Ludwig)がマスタリングした良音盤(ただし、後述するが、彼がカッティングをやった盤は確認できていない)であるにもかかわらず、ひどい仕打ちだと言わざるをえない。
安レコ愛に溢れたボクには、我慢ならないのである(笑)

それからもう一つ、このレコードには、この記事に付したサブタイトルのような、アナログレコード・コレクターの心を動かす事情もある。
(「心を動かされない人は真のアナログレコード・コレクターじゃない」とまでは言いません 笑)

そんなわけで、今日の記事になったわけだ。


では、USオリジナルのバリエーションを見てみよう。
(ボクが所有しているのは2枚だけなので、Discogs等でいろいろ確認もしていますが、他にもバリエーションがあるかもしれません。「違うのを持ってるぞ」という方はお知らせいただければ幸いです。それから、「オリジナルはカナダ盤だろ~」というご意見もあるかと思いますが、カナダ盤もMASTERDISKでマスタリング&カッティングが行われていますし、現時点で私は所有していませんので、ここではUSオリジナルの初盤を確認し、いずれカナダ盤を入手したときにその位置づけについて考えたいと思います。)


ジャケットのバリエーション


ジャケットのバリエーションについては、ほとんどの人が気づいていると思うのだが、言及されているのを見つけることができなかった。

このレコードのジャケットは二種類ある。


20200921-01.jpg


おわかりだろうか?
上端の"BRYAN ADAMS"というアーティスト名と下端の"RECKLESS"の文字の大きさが違うのである。

わかりやすいように、上端部分を拡大して並べてみよう。


20200921-02.jpg


この文字大ジャケットと文字小ジャケット、まずは、前後関係があるのかそれとも地域差なのかが問題だ。

ボクの持っている盤は、文字大ジャケットにはモナーク工場(Monarch Record Mfg. Co)プレスの盤(マト末尾MでMRが刻まれている)が、文字小ジャケットにはRCAインディアナポリス工場(RCA Records Pressing Plant, Indianapolis)プレスの盤(マト末尾RCAでIが刻印されている)が入っていたので、地域差という可能性もないわけではない。

しかし、地域差ではないと思う。
というのも、このレコードのUS盤には、Discogsを見ると、モナーク工場プレスとRCAインディアナポリス工場プレスのほかに、エレクトロサウンド中西部工場(Electrosound Group Midwest, Inc)プレス(マト末尾ESでEMWが刻まれている)が存在するが、RCAインディアナポリス工場プレスとエレクトロサウンド中西部工場プレスいずれにも文字大ジャケットと文字小ジャケットが存在するからである(モナーク工場プレスに文字小ジャケットが存在するのかは不明)。

つまり、このジャケットの違いには前後関係があることになる。
では、どちらが先なのか?

ずばり文字大ジャケットが先だと思う。

まず、上端部分を拡大して並べた写真をもう一度よく見てほしい。
文字小ジャケットは、単に文字を小さくしただけではない。
"BRYAN"のほうの文字間(狭い)と"ADAMS"のほうの文字間(広い)をかえるというこだわりぶりである。
確かに、デザイン的にはこれが良い。
つまり、こちらが完成形だと思う。

それから、US盤にひと月弱遅れて11月28日にリリースされた日本初盤は文字大ジャケットだ。
日本盤の場合、本国でのジャケット変更があっても変更されずにずっと初盤ジャケットのままのことも多いが、このレコードの場合は、アルファレコード/ワーナー・パイオニア時代にすでに文字小ジャケットに変更されている。
その後、キャニオンから再発されたときは、当然文字小ジャケットである。

いつの時点で文字大ジャケットから文字小ジャケットに変更されたのかは不明だが、初盤は文字大ジャケットというのは間違いないんじゃないかと思う。


インナースリーブのバリエーション


このレコードには、歌詞が印刷されたインナースリーブが付属している。
さらに、ビデオの注文用フライヤーも附属していることがあるが(ボクのは文字小ジャケットのほうに入っていた)、ビデオの発売時期によっては初盤にはついていなかったかもしれない。


20200921-03.jpg


このインナースリーブが違っている。
違っている部分を拡大して並べてみよう。


20200921-04.jpg


向って右が文字大ジャケットに入っていたもの(初回IS)で、左が文字小ジャケットに入っていたもの(セカンドIS)だ。

まず、"All songs written"で始まるパラグラフが2行から3行に変更されている。
これは特に追記があるわけではないので、[コピーライト]1984の前に改行を入れ忘れたのを修正しただけだろう。

次に、"Crew"のところだが、最後の"Halsey"にスペルミスがあったので"Hallsey"と正しいスペルに修正されている(エルが一つ増えている)。
その下の行も ”Road Keyboards"とされていたのが"Tour Keyboards"に修正されている。

"Thank you"で始まる謝辞のパラグラフでは、対象が追加されたので、2行から3行になっている。

以上、文字大ジャケットに入っていたものが初回ISで、文字小ジャケットに入っていたものはセカンドISであることは明らかだろう。


レーベルのバリエーション


このレコードにはカスタム・レーベルが存在する。
文字小ジャケットには、カスタム・レーベルを使用した盤が入っていた。


20200921-05.jpg


それに対して、A&Mの通常レーベルを使用した盤も存在する。
文字大ジャケットには、この通常レーベルを使用した盤が入っていた。


20200921-06.jpg


カスタム・レーベルを使用したモナーク工場プレスは確認できなかったが、RCAインディアナポリス工場プレスとエレクトロサウンド中西部工場プレスには、カスタム・レーベル盤と通常レーベル盤のいずれも存在するので、これまた地域差ではなく前後関係があると考えられる。

カスタム・レーベル使用と通常レーベル使用の前後関係としては、当初はカスタム・レーベルでリリースしていたが、再発の際にコスト削減で通常レーベルを使用したという可能性もあるのだが、このレコードの場合は、その可能性はありえない。

通常レーベル盤のほうが、初回IS付きの初盤文字大ジャケットに入っていたということもあるが、何よりも、通常盤レーベルがモナーク工場でプレスされているというのが決定的である。
後述するように、モナーク工場が再発盤をプレスできるわけがないんである。

とはいえ、このカスタム・レーベルへの変更は相当早い時期に行われたと思われる。
何故なら、ひと月弱遅れでリリースされた日本盤ですでにカスタム・レーベルが使用されていたからである。

レコードのプレスは、リリースのひと月くらい前から行われるだろうから、もしかしたらその初回プレスの過程でレーベル変更が行われ、リリース日には、通常レーベル盤とカスタム・レーベル盤が両方並んでいたという可能性もある。

そうだとしても、初盤レーベルは、カスタム・レーベルではなく通常レーベルだということになると思う。


カッティング・エンジニアのバリエーション


上述したように、また拡大したインナースリーブ写真のクレジットでもわかるように、このレコードはラディックがマスタリングをしているが、カッティングまでラディックが行ったものは発見できなかった。

ボクが所有しているレコードでは、カスタム・レーベルのマトRCA3/RCA3が両面ともMASTERDISK BKでビル・キッパー(Bill Kipper)カッティング、通常レーベルのマトM2/M1のほうは両面ともMASTERDISK刻印のみでサインがないのでカッティング・エンジニア不明である。


20200921-07.jpg
(RCA3/RCA3のMASTERDISK BK刻印。M2/M1のMASTERDISKのみはレーベル写真の横にしっかり写っているので割愛 笑)


で、どちらが先かだが、これについてはどっちが先かというのはないんじゃないかと思っている。
もともとマスタリングまではラディックがやって、ラッカー・カットは若いのにまかせたということなんだろうし、カナダまで含めて相当数のラッカー・カットなので、複数の人間にまかせたというだけなんじゃないかと思うのである。

Discogsで確認する限りでは、RCAインディアナポリス工場とエレクトロサウンド中西部工場にはビル・キッパーがカットしたラッカーが、モナーク工場には別のエンジニアがカットしたラッカーが送られたということのようだ。

ちなみに、うちにある二枚では、BK盤ほうは腰高で音が被るのに対して、サインなし盤のほうは低域が沈みこんで見通しがよくなり、好印象だ。
とはいえ、プレス時期がサインなし盤のほうがかなり早いと考えられるので、スタンパーのへたり具合も影響している可能性があり、一般的にBK盤のほうがダメとも言い切れない。

いずれにせよ、BK盤でもサインなし盤でも、どちらも初回盤でいいと思う。


モナーク工場の最後の輝き


ボクの持っている通常レーベル盤は、モナーク工場プレスである。


20200921-08.jpg


MR Δ 26627というモナーク工場産であることを示すメッキ処理番号が刻まれている。
そして、これが特に重要なことなのだが、モナーク工場プレスであれば、初期盤であることの証なのである。

なぜなら、モナーク工場は、1985年1月にはエレクトロサウンドに吸収され、その長い歴史を閉じたからである。
1985年1月からは、エレクトロサウンド・ロサンジェルス(Electrosound Los Angeles)という名前で新たな一歩を踏み出している。

つまり、1984年11月5日リリースの”RECKLESS"については、10月からプレスが始まったとして、モナーク工場プレスであれば、翌1985年の1月までの4か月(1月つまり新年に再出発ということは、月頭から再出発の可能性が高いと思われるが、その場合は、84年12月までの3か月)の間にプレスされたものということになる。

それ以降であれば、送り溝にはELAという文字が刻まれるはずだ。

1945年創業の長い歴史の最後に、"RECKLESS"という大ヒットアルバムの初回盤をプレスしたという事実も、「最後の輝き」と呼ぶのに値するものだと思うが、ボクが「最後の輝き」というのには別の意味もある。

この時期のA&Mのレコードは半透明盤で、RCAインディアナポリス工場プレスの盤でも十分に透けるのだが・・・・


20200921-09.jpg


モナーク工場プレスの盤はさらに透ける。
光に翳さなくても、ちょっと明るいところなら、反対側が透けて見えるくらいである。
だから、光に翳すと、透けるというより、黄金に輝く。


20200921-10.jpg


まさに「モナーク工場の最後の輝き」なのである(笑)

アトランティック盤のオリジナルを探している人なんかは、誰かさんの影響で(笑)跨いで通ることも多いモナーク工場プレスだが、ボクはアトランティック盤のモナーク工場の音も好きだ。
A&Mに関しては、モナーク工場は昔からのメイン工場である。

そんなわけで、モナーク工場が「最後の輝き」を見せるこの"RECKLESS"を聴いていると、なんだかこみ上げるものがあるのだ。

ありがとう!
モナーク!
ラベル:Bob Ludwig BRYAN ADAMS
posted by 想也 at 15:26| Comment(6) | Bob Ludwig(RL)の仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする