4年ほど前のことになるが、次のような記事を書いた。
https://sawyer2015.blog.ss-blog.jp/2017-10-14ノラ・ジョーンズ(Norah Jones)"Come Away with Me"の2002年製ボーナスCD付EU製限定盤(Blue Note 7243 5 81880 0 4)の音と、2003年製US製SACD(Blue Note 7243 5 41747 2 8)のCD層の音がずいぶんと違うのだが、その理由がわからないという内容の記事だ。

手前が2002年製ボーナスCD付EU製限定盤で奥が2003年製US製SACD
CDとSACDで音が違うのは当然だが、Hybrid SACDのCD層に記録されているデータは、普通に考えれば通常CDのデータの流用だろう。
だったら、音は同じはずである。
しかし、実際には、ずいぶんと音が違うのである。
主観的な印象が違うというだけでなく、客観的なデータとしても明らかに違う。
"Don't Know Why"の波形を見てみよう。
通常CDの波形
Hybrid SACDのCD層の波形
どう見ても同じデータには見えない。
しかし、何故こんなことが起こるのか、さっぱりわからなかった。
ところが、今日、ひょんなことからTLでこの話題になって、答らしきものが見つかった。
Hybrid SACDのCD層に記録されたデータは、通常CDのデータを流用したものではないようなのだ。
Hybrid SACDは、製品としてはSACDであってCDではないので、そのCD層というのは、「SACDの音源を通常のCDプレーヤーでも聴けるようにしたものでなければならない」ということのようだ。
Hybrid SACDのCD層には、SACD層に記録されるDSD音源を16bit/44.1kHzのPCM音源にダウンコンバートしたものが記録される、というのがHybrid SACDの仕様というわけだ。
つまり、こういうことだ。
通常CDに記録されるデータは、デジタルのマスター音源(よく知りませんが、24bit/96kHzのPCM音源が標準なんでしょうかね?)からCDフォーマットの16bit/44.1kHzのPCMに変換され、マスタリングを施されて完成する。
一方Hybrid SACDの場合(マルチの場合もあるがそれは割愛)、デジタルのマスター音源からSACDフォーマットの2.8MHzのDSDに変換され、マスタリングを施されて、SACD層に記録されるデータは完成するが、CD層に記録されるデータは、その2.8MHzのDSDデータをCDフォーマットの16bit/44.1kHzのPCMにダウンコンバートして作られる、ということらしい。
なるほど、そういうことなら、客観的なデータとして違うというのも当然だよね。