2020年09月06日

初盤道に触発されて・・・

<リンクの不具合を修正しました。>(2025年10月13日)

レコード・コレクターズ10月号の発売まで10日もないこの時期になって、9月号がらみの話題である。

というのも、9月号掲載の初盤道第41回に触発されて発注したレコードが、ようやくアメリカから届いたからだ。


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(二枚写っているが、一枚は以前から持っていたステレオのプロモ盤。)



「初盤道第41回で取り上げられてたのはジョビン(Antônio Carlos Jobim)の"Wave"(A&M LP2002(mono)/SP3002(stereo))なんだから、そっちを買えよ」って声が聴こえてきそうだが、"Wave"については購入予定リストに入っているものの、実は聴いたことがないので、「どうしても欲しい~」モードにスイッチが切りかわらない(笑)

一方、"Wave"と双子みたいなレコードであるウェス・モンゴメリー(Wes Montgomery)の"A Day in the Life"(モナーク工場のメッキ処理番号を見ると、"Wave"のモノラル盤△10832→"A Day in the Life"のモノラル盤△10833→"Wave"のステレオ盤△10834→"A Day in the Life"のステレオ盤△10835となっていて、両者の製造が同時に進められたことがわかる)については、以前にもこのブログで取り上げたことがあるように(https://sawyer2015.seesaa.net/article/2019-04-29.htmlをごらんください)、ずっとボクの愛聴盤である。

ずっと愛聴盤なのだが、RVG録音&カッティングとはいえ、これをモノラル盤で聴きたいと思ったことはなかった。

しかし、紙ジャケ探検隊は、"Wave"のモノラル盤を「レコードという形態での一つの完成形」「ジャズの魂が宿っている」とまで評した。
この評に触れて、"Wave"のモノラル盤を聴いてみたくもなったのだが、どうしても聴いてみたい衝動にかられたのは、"A Day in the Life"のモノラル盤の方である。

なにせ"Wave"とは双子みたいなレコードだ。
"A Day in the Life"のモノラル盤だって、「レコードという形態での一つの完成形」で「ジャズの魂が宿っている」に違いない。

ということで、"A Day in the Life"のモノラル盤(A&M LP2001)なのである。


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下にずらして裁断すれば上にステレオ表記が現れ、上にずらして裁断すれば下にモノラル表記が現れる、この頃の典型的な作りのジャケットだ。

モノラル表記が現れる下部を拡大しておこう。


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このレコードにもコロンビア・カットが存在するが、ボクが手に入れたのはもちろんRVGカットである。


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「レコードという形態での一つの完成形」で「ジャズの魂が宿っている」のはRVGカットの方なんだから、VAN GELDER刻印は絶対になきゃいけないんである。

まぁ、ボクが入手したのはWLPなので、たぶんRVGカットしか存在しない。

しかーし・・・


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なんじゃこりゃぁ!?



これは、どう見ても、モナーク工場のWLPではない。
レーベルは光沢がないザラっとした紙質だし、ロゴに輪郭もない。
送り溝には△10833もMR刻印もない。

送り溝に刻まれているのは、CTLP-2001 CT 2001/CTLP-2001 CT 2002という手書き文字と、Side 1に11-/Side 2に1-という手書きの数字?だけである。
西海岸のWLPがモナーク工場で製造されたとすると、これは東海岸で製造されたWLPなのか?

そう思ってセラーの住所を確認すると、コロラド州デンバーである。
ってことは中部で製造されたWLP?

いずれにせよ、この時期のA&Mのプレス工場は、モナーク工場しか頭になかったので、完全に想定外であったが、ターンテーブルに載せて聴いてみれば、出てくる音はまさにRVGのモノラル・カッティングの音である。

実に暑苦しい、ジャズの熱が伝わってくる。

「モナーク工場以外のWLPなんて、コレクションとしても、ちょうどいいか」なーんてことも思い始めた。
音がよければ、何でも受け入れてしまうのだ(笑)

でも、これって、どこの工場で製造されたものなんだろ?
とりあえず、素性が知りたいと思う今日この頃なのである。
posted by 想也 at 12:28| Comment(0) | Rudy Van Gelder(RVG)の仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月29日

Wes Montgomery, A Day in the LifeのUSオリジナル

さて、考レコ学クイズ5の解答編である。

正解は、3の「1968年にカリフォルニアのモナーク工場で製造されたセカンド・プレス」だ。

まぁ、レーベル画像だけでは、1968年産であることまでは判定できない(1968年~1973年の間に製造されたものであることまでしかわからない)のだが、択一問題だからいいのである(笑)

では、解説にうつろう。

まず、このブログの読者であれば、A&Mロゴの大きさからモナーク工場産であることを導けるはず(わからない方は、「Carpenters, Now & ThenのUSオリジナル」の記事https://sawyer2015.seesaa.net/article/2019-02-10.htmlをご覧ください)だから、答えは1か3に限定される。
問題は、ファースト・プレスかセカンド・プレスかである。

このレコードには、MONO盤(A&M Records LP-2001)もあるが、リリースされたのが1967年の後半のこと(リリース月までわからないのだが、録音は6月に行われている)なので、MONO盤にもセカンド・プレスがあるかどうかはわからない。
少なくともDiscogsには1968年以降に製造されたセカンド・プレスは掲載されていない。

一方、STEREO盤(A&M Records SP-3001)のほうは、1974年にレーベルがシルバー・グレイに切り替わるまでのブラウン時代でも、少なくともサード・プレスまでは区別する必要があるので、厄介だ。

ボクは、20年くらい前に、まず、ロックのオリジナル盤を集め始め、しばらく経ってからジャズのオリジナル盤にも手を出し始めたのだが、最初は、レーベルとMatrixしか気にしていなかった。

だから、このサード・プレスもオリジナルだと思って買ったんである。


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ブラウン・レーベルでMatrix末尾は両面P1だ。


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(これはSide 1のRunoutだが、Side 2も同じくMatrix末尾はP1である。)


しかし、「ブラウン・レーベルでマト1なんだからファースト・プレスに違いない」なんていうのは浅はかな思い込みにすぎない。
これは間違いなくサード・プレスである。

別にサード・プレスでも音が良けりゃいいんだが、このレコードは、サード・プレスじゃダメなんである。

このブログの読者であれば、ボクが最初に手に入れたのが、レーベルのA&Mロゴの大きさとP1というMatrix末尾から、コロンビア・レコードのピットマン工場プレスだということはすぐにわかったかと思うが、別にピットマン工場産だからダメというわけではない。
確かに、A&Mは西海岸の会社だから、モナーク工場産が良さそうだが、別にピットマン工場産でもアレがあればいいのだ。
しかし、このサード・プレスには、アレがないんである。


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(サード・プレスの内ジャケットから、RVG録音であることのクレジット。)


そう、オリジナルがRVG(Rudy Van Gelder)録音でRVGカッティングである以上、レイトプレスで満足するにしても、最低限VAN GELDER刻印がRunoutになきゃいけないのだが、このMatrix末尾両面P1盤のRunoutにはVAN GELDER刻印がないのだ。
もうこれは絶対にダメである。

それに、ジャケットも違うのだ。
このレコードのオリジナル・ジャケットは、艶消しラミネート・コーティングされていて、吸い殻画像ともあいまって何とも雰囲気のある風情なのだが、このサード・プレスはラミネート・コーティングされていないのである。
ジャケットの内側も、オリジナルはカーキ色なのだが、サード・プレスは真っ白だ。


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何もかもダメである。

ブラウン・レーベルだから1973年までのプレスであること(ゴールドマインの簡易レーベルガイドによる)は間違いないのだが、もう73年ギリギリのプレスに違いない。
そう思ってCSを見ると、住所がBeverly Hills, California 90213になっている。
A&MがBeverly Hillsに本拠を移転したのは1973年なので、ほら、やっぱり1973年産じゃないか。


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そんなわけで、これはもう聴く前からダメなことがわかる。
実際、聴いてみても、RVGらしく鳴らないという以前に、マスターの劣化をひしひしと感じるもので、とうてい満足できるものではないのだ。


だから、すぐさまVAN GELDER刻印のある盤を探した。
A&Mは西海岸の会社だから、二枚目ということもあるしモナーク工場産がいい。

売れたレコードなので、VAN GELDER刻印のあるブラウン・レーベルでモナーク工場産、艶消しラミネート・コーティングのジャケットという限定で探しても、簡単に見つかった。


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(クイズの出題に使ったレコードである。)


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(ジャケットの表裏は艶消しラミネート・コーティングが施されている。)


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(内ジャケットはカーキ色だ。)


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(これはSide 1のRunout。Side 2のRunoutには、3002-3とある。)


Matrix末尾は4/3と微妙だが、VAN GELDER刻印はしっかりある。
音もRVGらしく鳴るし、悪くない。


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(Side 1のRunoutにあるVAN GELDER刻印。Side 2にも、もちろんある。)


ってことで、この考レコ学クイズ5の出題に使ったレコードも、ファースト・プレスのバリエーションだと信じて、ずっとこれで聴いてきたのである。
しかし、他のA&Mのレコードを掘っている過程で、ボクはこのレコードがセカンド・プレスであることに気づいてしまった。

気づいてしまうと、やはり、ファースト・プレスが欲しくなる。
で、ebayで探してみたら、運よくモナーク工場産のWLPが出ていたので買ってみた。


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もちろんVAN GELDER刻印ありで、Matrix末尾は2-RE/1と若い。
(メッキ処理番号も、4/3が△11031だったのに対して、WLPは△10835と若い。)


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(Side 1のRunout。Side 2のRunoutには、3002-1とある。)


ジャケットは、艶消しのラミネート・コーティングで、内側はカーキ色だ。
裏側にはプロモ盤であることを示す”AUDITION RECORD”のスタンプがある。


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「ちょっと待て。WLPだったら、レーベルが違うのは当たり前だろう。」と思った貴方。
貴方は正しい(笑)

まず、レーベル上のどこに注意しなければいけないかだが、A&Mのロゴの中、右下の角のところ、トランペットのベルのすぐ下のあたりである。
A&Mのブラウン・レーベルは、ここにRが付いていないものから、Rが付いたものへと変遷する。

もっとも、WLPのホワイト・レーベルでは、Rが付く時期がずれていて、通常レーベルではR付きがファースト・プレスになっても、WLPではあいかわらずR無しだったりする。
だから、WLPのホワイト・レーベルがR無しだからといって、通常レーベルもR無しがファースト・プレスということにはならない。

"A Day in the Life"の通常レーベルR無し盤は持ってないので、とりあえず状況証拠として手持ち盤を引っ張り出すと、SP-3005のナット・アダレー(Nat Adderley)”You, Baby”がR無しである。
SP-3001の”A Day in the Life”のファースト・プレスもR無しがあるはずだ。


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CSを見てみると、WLPに付属していたCS上のA&MロゴはR無しである。
やはり、通常レーベルのファースト・プレスもR無しと考えてよさそうだ。


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って、このアルバムの通常レーベルR無し盤て、別にレアでも何でもないので、Discogsで検索してもebayで検索しても、ざくざくと画像がひっかかる(笑)
"A Day in the Life"のファースト・プレスは、レーベル上のA&MロゴにRが付いていないものだと断定してよい。

それじゃ、SP-3005の後、どこまでR無しがファースト・プレスかというと、これはジャケット上のA&Mロゴで判断できるんじゃないかと思う。

ジャケット上のA&Mロゴは、ファースト・プレスのときからレイトになってもずっと変わらないのだ。
”A Day in the Life”のジャケット上のA&Mロゴは、ずーっとR無しのままである。


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(サード・プレスのコーティングのないジャケットでも、A&MロゴはR無しのままだ。)


だから、逆に、ジャケット上のA&MロゴにRが付いていれば、レーベル上のA&MロゴにもRが付いていたと考えるのが合理的だと思う。
Discogsでジャケット上のA&MロゴのRの有無を確認すると、ロゴにRが付くのは1968年だ。
SP-3009のSoul Flutes ‎, Trust In MeまではR無しで、SP-3010のRichard Barbary, Soul MachineからRが付く。
おそらくレーベル上のA&MロゴもSP-3010以降がR付きだろう。
(ただし、レコードは必ずしもカタログ番号順にリリースされたとは限らないので、おおよその目安とお考え下さい。)

ってことで、”A Day in the Life”も、レーベル上のA&MロゴにRがついているのは、1968年以降のプレスということになる。
ちなみに、ボクの持っているものを1968年産と特定したのは、付属していたCS(もちろん掲載されているロゴもR付き)にSP-4141のLiza Minnelliまでしか出ていないからだ。


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(R付きのA&MロゴとSP-4141のLiza Minnelliの部分の拡大。)


こうして、クイズの答えは、3の「1968年にカリフォルニアのモナーク工場で製造されたセカンド・プレス」ということになるわけである。

音の方は、マトが若いからなのか、WLPだからなのか、ファースト・プレスだからなのかはわからないが、同じようにRVGらしく鳴るといっても、やはり鮮度感が違う。
厄介なことに、ちょっとどころじゃなく違う(笑)

セカンド・プレスしか持っていない人は、とりあえずファースト・プレスを買って聴いてみるべきだと思うよ。
posted by 想也 at 11:41| Comment(0) | Rudy Van Gelder(RVG)の仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月12日

SONNY ROLLINS, ALFIEのUSオリジナル

<リンクの不具合を修正しました。>(2025年11月3日)

すっかり忘れていたが、思い出したので、ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)”ALFIE”のUSオリジナルについて書いておくとしよう。

1966年にリリースされたこのアルバム(モノラルはA-9111、ステレオはAS-9111)、内容も素晴らしいが、音質も素晴らしい。
カッティングは、当然ルディ・ヴァン・ゲルダー(Rudy Van Gelder)だが、当時のImpulse!の数多あるヴァン・ゲルダー録音の中でも屈指の優秀録音じゃないだろうか。
USオリジナルも高くないので、是非手に入れて聴いてほしい一枚である。
ヴァン・ゲルダーにしてはステレオも素晴らしいので、モノラルにこだわる必要もない。

で、このUSオリジナル・ファースト・プレスについて何が書きたかったかというと、少なくとも日本では定説のように言われている「赤顔がオリジナル・ジャケット」というのは、果たして本当なのか、ということである。

「赤顔」というのは、表ジャケットのタイトル”ALFiE”の”i”の上の点になっているマイケル・ケイン(Michael Caine)の顔写真が赤く塗りつぶされているものを言う。
これが塗りつぶされていないものを「白顔」という。


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ボクは「赤顔」のジャケットは持っていないのだが、何故かというと、どうにも所有欲がわかないからである。
それにボクは「赤顔がオリジナル・ジャケット」説に大いに疑問を持っている。

そもそも赤顔ジャケットは、デザインとして破綻しているとしか思えない。

表ジャケットのタイトルは”ALFiE”となっていて、”i”以外は大文字である。
その赤い文字の中に女優たちの顔が描かれ、それは赤く塗りつぶされているが、この女優たちの顔はイラストもしくは写真をイラスト風に加工したものであるのに対して、マイケル・ケインの顔は写真そのままだ。

どう考えても、マイケル・ケインの顔を赤く塗りつぶすことは、デザイン的にありえない。
この赤顔は、ミスによって生じたエラー・ジャケットにしか思えないのである。
ってことで、ボクは、この赤顔を「オリジナル・ジャケット」とはどうしても呼びたくない。

さて、エラー・ジャケットだとすると、「ファースト・プレスはエラー・ジャケットだった」ということは、よくある話だ。
では、この”ALFIE”もそうなのだろうか。
ボクは違うんじゃないかと思っている。

第一に、Discogsを見てもそんなことはどこにも書いていない。
まぁ、Discogsの場合は、書いてあったとしても俄かに信用できないのではあるが(笑)、逆に、書いてないということは、少なくとも、世界的には赤顔がファースト・プレスというのが定説ではないということだと思う。

第二に、ボクの持っているモノラル盤は、ホワイト・レーベルのプロモ盤なのだが、そのジャケットは赤顔ではなく、白顔である。
ちなみに、Discogsに出ているWLPのジャケットも白顔である。


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もちろん、西海岸か東海岸か中部かわからないが、ミスから生じたエラー・ジャケットがそのまま使用された可能性、したがって、ファースト・プレスの一部に赤顔があった可能性はある。
しかし、すべてのファースト・プレスが赤顔だったとは、どうしても思えない。

それから、これは先日Discogsを見ていて気づいたのだが、キャピトル・レコ―ド・クラブ盤(ステレオはSMAS-91026、モノラルはMAS-91026)のジャケットが赤顔なのである。
そこで、ふと思ったのが、赤顔ジャケットは、このクラブ盤の発注にからんで生まれたエラー・ジャケットなんじゃないかということだ。
もしそうだとしたら、赤顔ジャケットは、ファースト・プレスでもなんでもないことになる。

真相は不明なので、もし「赤顔がオリジナル・ジャケット」説の根拠を御存じの方がいらしたら、ぜひ教えてくださいな。


レーベルによるオリジナルの判定については、下記の記事をご覧ください。

https://sawyer2015.seesaa.net/article/2019-01-14.html
posted by 想也 at 21:45| Comment(0) | Rudy Van Gelder(RVG)の仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする