2020年02月08日

Carpenters, A Kind of HushのUSオリジナル

3日ほど前になるが、2月4日はカレン・カーペンター(Karen Carpenter)の命日だった。

で、今年はなんとなくこのレコードを聴いていた。


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カーペンターズ(Carpenters)が1976年6月11日にリリースした7枚目のスタジオ・アルバム"A Kind of Hush"(日本盤タイトルは『見つめあう恋』)のUSオリジナル(A&M Records SP 4581)である。

二枚あるのは、ステッカー付きを見つけたので、もう一枚ぐらい持っててもいいかと思って買ったというだけだ。
このアルバム、"I Need to Be in Love"(日本盤では『青春の輝き』)が収録されているし、他の収録曲も佳曲が揃っていて、とても良いアルバムだしね。

ステッカーは、この緑の長方形のもののほかに、赤い正方形のものもあるが、どちらが先なのか知らない。
いずれも、「"I Need to Be in Love"と"There's a Kind of Hush"の2曲のヒット・シングルが収録されているよ」というものなので、前後関係はなく、地域的な違いなのかもしれない。

ちなみに、どちらも先行シングル("There's a Kind of Hush"は2月12日、"I Need to Be in Love"は5月21日のリリース)なので、初回盤に貼られていた可能性もあると思う。
まぁ、"I Need to Be in Love"は20日しか違わないので微妙だが(笑)

カーペンターズのアルバムというと、前作"Horizonまではジャケットが凝った作りだったが、このアルバムはいたって普通の作りである。
ただ、少しだけ凝ったところがあって、内側にCarpentersロゴが敷き詰められている。


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見えないところにお金がかかっているのである(笑)


さて、手持ちの2枚だが、最初の写真で気づいた方もいるかもしれないが、若干色味が違っている。
ステッカー付きジャケットのほうがナチュラルな色あいで、もう一方は赤が強い。

これは、裏ジャケットを見ると顕著だ。


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(向かって右がステッカー付きジャケット)



このレコードには、厚紙製の歌詞付きインナースリーブが付属しているが、これまた、ステッカー付きジャケットに付属していたほうがナチュラルで、もう一方は赤が強い。

写真の側はそうでもないが、歌詞側は歴然と違う。


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(向かって右がステッカー付きジャケットに入っていたもの)


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(二枚重ねてひっくり返したので、こちらは逆に、向かって左がステッカー付きジャケットに入っていたもの)

この違いが、単なる個体差なのか、それとも地域差なのか、あるいはまた、時間的前後関係があるのかは、わからない。
まぁ、個体差の可能性が一番高い気がするが、地域差の可能性や時間的な前後関係がある可能性もないわけではないと思う。


レーベルは、どちらもまったく同じで、次のようなものだ。


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ただし、ステッカー付きジャケットに入っていたのは、マトT2/P5という「ピットマンかテレホートかどっちのプレスなんじゃいっ!」というもの(つまり、東部か中部産)だったのに対して、もう一方はマトS2/S4で、これは西部のサンタマリア・プレスであることが明らかである。

そんなわけで、色味の違いは地域差の可能性もあるのかな?と思ったわけだ。

時間的な前後関係はわからないが、音を聴いた感じでは、マトT2/P5盤のほうが鮮度の高い音がする(まぁ、でも、もう一方も悪くはないが)。

ちなみに、マスタリングについては、今回はBernie Grundmanではなく、同じA&M Mastering StudiosのエンジニアであったFrank DeLunaだ(インナースリーブに明記されている)。

そんなわけで、「西部サンタマリア産は、赤味が強い。」あるいは「レイトになると赤味が強くなってくる。」な~んて可能性もないわけではない気がしたのである。

まぁ、この時期のA&Mなら、やはりモナーク産がオリジナルなので、こんな問題はどうてもいいっていえばどうでもいいんだけど(笑)

っていうか、聴き比べもしてたので、何度も再生していたのだが、そしたら、このアルバム、どんどん好きになってしまった。
好きになればなるほど、モナーク産のオリジナルが聴きたくて仕方なくなってくる。

この欲求は、ジャケットの微妙な違いの探求欲求より、はるかに強い(笑)

で、ちょっと探してみたら、たまたまモナーク産のプロモ盤を発見してしまった。
USからの送料込みだとかなり割高になるので躊躇したのだが、時間とともに聴きたくて我慢できなくなってしまい、とうとう発注ボタンを押してしまったのだった。

ボクをこんな身体にしたのは、紙ジャケ探検隊である(笑)

早々に発送連絡が届いたので、来週末ぐらいには届くだろうか?
楽しみである。
ラベル:CARPENTERS
posted by 想也 at 01:27| Comment(0) | Carpenters | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月30日

ふしぎなプロモ

ふしぎなプロモを手に入れた。
カーペンターズ(Carpenters)”Now & Then”のUS盤(A&M Records ‎SP-3519)プロモである。


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このレコードのUS盤を買うのはこれで6枚目になる(プロモも2枚目になる)が、好きだから、いいのだ(笑)
それに何と言っても「ふしぎなプロモ」(以下「ふしぎなプロモ」と呼ぶことにする。)である。
買わないという選択肢はない。

このプロモ、どこが不思議かといえば、すでに持っているプロモ(以下「通常プロモ」と呼ぶことにする)といろいろ違っているのである。

まずはレーベルだ。

通常プロモはこうなっている。


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ふしぎなプロモはこうである。


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そう、A&Mロゴの下に”PROMOTION COPY NOT FOR SALE”がない。
まぁ、この記載がないだけなら、単純なミスということも考えられるが、他にも少し違っているところがある。
たとえば、Side 1では、スピンドルホール上下のスペースがずいぶん違う。
どーも単純なミスとも思えない。

それに、レーベル以外のところも、あれこれ違うのだ。

Side 2の溝を見てみよう。

通常プロモはこうなっている。
ラジオ局が使いやすいようにバンドが切ってある。


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ふしぎなプロモはこうである。
通常盤と同じように、バンドが切られていない。


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「要するに通常盤と同じなんでしょ?」と思った貴方!
違うんである。

通常プロモのMatrixは、次のようなものだ。

Side A: A+M SP3555-M1 -EX (MR) Δ17883(5)
Side B: A+M SP3556(DJ VERSION)-M2 (MR) Δ17936(3)

ふしぎなプロモのMatrixは次のようなものである。

Side A: SP3555
Side B: SP3556

ウソではない。
ホントにこれだけだ。
SPの前のA+Mさえない。


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で、通常プロモより、さらに鮮度の高い音がする。
何だこれ?

一番不思議なのは、Runoutのどこにも製造工場を示す刻印がなく、しかも、レーベル形状が、この時期にA&Mが使っていたどの工場のものとも一致しないことだ。


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この縁が少し隆起したレーベル形状ってどこだ?
知らないぞ・・・

「フェイクなんじゃないの?」と思った貴方!
ボクも一瞬そう思ったのである。
しかし、こんな売れまくってゴロゴロしているレコードなんか、フェイクを作るとも思えない。
マニア向けにプロモ・オンリーのフェイクとかならありうるかと一瞬思ったが、そんなもの元がとれるほど売れるとも思えない。

それに、音は確かに、以前から持っていたプロモより鮮度が高いのだ。

しかも、入っていたジャケットの鮮明度も、以前から持っていた5枚のどれよりも高い。
(車の中のリチャードとカレンの顔がどれよりもはっきりわかる。)


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そもそも、紙質が違っていて、通常盤のジャケットよりも上質っぽいが薄く、大きさも数ミリだが小さい。
重量を計ってみると、以前から持っていたものが210g~230gぐらいなのに対して、185gしかないのだ。

どーも、試作品の匂いがする。
まぁ、ただの直感だけど(笑)

ちなみに、音の方は、鮮度が高いというだけではなく、かなり違っている。
ミックス違いに聴こえるくらい違う。
ただ、ミックス違いと断定できるようなところはいまのところ発見できていないので、マスタリング違いなだけかもしれないが、少なくとも、かなり大袈裟に違うことだけは確かである。

というわけで、ボクはこの「ふしぎなプロモ」、テストプレスとWLPの中間的なものの気がしているんだが、どうだろう?

平成最後の日に、ツイッターのTLで数多の教えをいただいている廃盤廃人界重鎮の方々(昨日、関東では天上会議が開かれたとのこと。おそろしやおそろしや 笑)の審判を乞うのである。
ラベル:CARPENTERS
posted by 想也 at 13:47| Comment(4) | Carpenters | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月10日

Carpenters, Now & ThenのUSオリジナル

<小説中の画像は、喫茶店の雰囲気を出す目的でライトをあてて撮影しているため、レーベルの色調が実際とは若干異なって写っています。こちらの記事では、自然光下で実際に近い色調となるように撮影した画像を掲載しています。>

さて、今回のオリジナル盤探求は、趣向をかえて小説仕立てだったので、あらためて情報整理と音質比較の記事で補っておくとしよう。
まぁ、音質比較については、売れたアルバムのUS盤は個体差が激しいんで、手持ち盤の比較なんて参考程度のもんだけどさ。


レーベルの変遷

まず、レーベルの変遷を時系列にしたがって、まとめておこう。

1 Monarch工場産のホワイト・レーベル・プロモーション盤
“Yesterday Once More”にも”Reprise”にも“Sweet Harmony Music”のクレジットはない。

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Runoutは下記の通り。

Side A: A&M SP3555-M1 -EX (MR) Δ17883(5)
Side B: A&M SP3556(DJ VERSION)-M2 (MR) Δ17936(3)


2 Monarch工場産のファースト・プレス
クレジット関係はプロモ盤と同じ。
レーベルはオリーブで左のA&Mロゴが大きい。

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Runoutは下記の通り。

Side A: A&M SP3555-M3 -EX (MR) Δ17883(15)
Side B: A&M SP3556-M3 -EX (MR) Δ17883-X(12)


3 Pitman工場産のファースト・プレス
クレジット関係はモナーク工場産のファースト・プレスと同じだが、レーベルはブラウンで左のA&Mのロゴが小さい。

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Runoutは下記の通り。

Side A: A&M SP3555-P1
Side B: A&M SP3556-P1

当然、同じクレジットのTerre Haute工場産ファースト・プレスも存在する。ボクは持っていないがDiscogsで確認できる。


4 Terre Haute工場産のセカンド・プレス
Terre Haute工場産なのに、A&Mロゴが大きいオリーブのレーベルが使用され、1曲目の”Yesterday Once More”にだけ“Sweet Harmony Music”クレジットが太字で追加されている。

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Runoutは下記の通り。

Side A: T1 A&M SP3555-T1
Side B: T1 A&M SP3556-T3

まったく同じレーベルでPitman工場産ものもDiscogsで確認できる。
Monarch工場産は確認できなかったが、おそらく存在するんじゃないだろうか。
このレーベルはMonarch工場で応急的に作られ、PitmanやTerre Hauteにも送られて使用されたものと考えられる。


5 Monarch工場産のサード・プレス
MonarchなんでレーベルはオリーブでA&Mロゴが大きい。
1曲目の”Yesterday Once More”だけでなく最後の”Reprise”にも“Sweet Harmony Music”のクレジットが追加されている。太字ではなく、通常字体だ。

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Runoutは下記の通り。

Side A: A&M SP3555-M3 -EX (MR) Δ17883(14)
Side B: A&M SP3556-M3 -EX (MR) Δ17883-X(14)

このクレジットのブラウン・レーベルでPitman工場産やTerre Haute工場産が存在するのかは不明である。
ブラウンからホワイトにレーベルが切り替わった後のPitman工場産にこのクレジットのものが存在することはDiscogsで確認できる。
ちなみに、ホワイト・レーベルの盤には“Sweet Harmony Music”クレジットがないものが存在するが、これはミスというより、どこかの時点でこの会社自体が消滅して、そのためにクレジットも消えたんじゃないかと思う。


音質比較

ジャケットの内側にクレジットされているように、このアルバムはバーニー・グランドマン(Bernie Grundman)によるマスタリング・カッティングである。
僕が所有している5枚とも、すべて彼のカッティングであることは、Runoutの筆跡鑑定でわかる。
だから、どの盤の音質も一定水準をクリアしている。

どれが一番音が良いかといえば、そりゃホワイト・レーベルのプロモ盤だが、Monarch工場産ファースト・プレスもそんなに大差はない。プロモ盤のほうが、若干キレが鋭いって程度の違いである。

確かに手持ちのファースト・プレスはマト3なのだが、マト1とメッキ処理番号(Δ17883てやつね。)が同じだし、さらに、そのメッキ処理番号が、プロモ盤のB面よりも若いことを考えると、マト3までは同時にカッティングされてメッキ処理にまわされたんじゃないかと推測される。
(逆に、プロモ盤のB面は、バンドを切る処理をするために、あとからカッティングしなおされたものと推測される。)
だから、マト1もマト3も(A面にマト2があるのかは不明。B面については、DiscogsにDJ VERSIONではないマト2が出ているので、それは存在するのだろう。B面のマト1は存在しないかもしれない。B面のマト1も存在するそうである。)そんなに変わらないんだと思う。

Pitman工場産のファースト・プレスも、鮮度的にはそんなに変わらない。
うちにあるのは偶々両面マト1だが、これまた多少進んでいてもそんなに変わらないと思う。
もっとも、MonarchとPitmanの差はあるが、これは好みの差だ。
ふんわりと音場が広がるMonarchに対して、Pitmanの音場はタイトだ。
僕はMonarch工場産が好みである。

Terre Haute工場産のセカンド・プレスは、やはり少し鮮度感が落ちるが、楽器の分離はまだ十分に明快だし、そんなにがくんと落ちる感じでもない。
ただ、カレンのボーカルの音像が微妙に小さい。Monarch工場産やPitman工場産のファースト・プレスが目の前でカレンが歌っているようであるのに対して、Terre Haute工場産のセカンド・プレスは、ちょっと遠くなる。

5枚の中では相対的にがくんと落ちるのが、Monarch産サード・プレスである。
ふんわりと広がる音場やボーカルの音像などはファースト・プレスと変わらないが、いかんせん鮮度感がかなり落ちる。ボーカルや個々の楽器の音色が少々曖昧になって、分離も明快ではなくなる。

まぁ、このあたりの差は、解像度の高いシステムで聴いてればでっかい差に聴こえるだろうし、雰囲気重視のシステムならそんなに差は感じないって程度のものだと思う。
どの盤で聴いても名盤は名盤だし、バーニー・グランドマンのこのアルバムのカッティングは、かなりの冴えを見せてると思うよ。
posted by 想也 at 00:00| Comment(0) | Carpenters | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする