2019年02月10日

Now & ThenのUSオリジナル

<小説中の画像は、喫茶店の雰囲気を出す目的でライトをあてて撮影しているため、レーベルの色調が実際とは若干異なって写っています。こちらの記事では、自然光下で実際に近い色調となるように撮影した画像を掲載しています。>

さて、今回のオリジナル盤探求は、趣向をかえて小説仕立てだったので、あらためて情報整理と音質比較の記事で補っておくとしよう。
まぁ、音質比較については、売れたアルバムのUS盤は個体差が激しいんで、手持ち盤の比較なんて参考程度のもんだけどさ。


レーベルの変遷

まず、レーベルの変遷を時系列にしたがって、まとめておこう。

1 Monarch工場産のホワイト・レーベル・プロモーション盤
“Yesterday Once More”にも”Reprise”にも“Sweet Harmony Music”のクレジットはない。

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20190210-02.jpg

Runoutは下記の通り。

Side A: A&M SP3555-M1 -EX (MR) Δ17883(5)
Side B: A&M SP3556(DJ VERSION)-M2 (MR) Δ17936(3)


2 Monarch工場産のファースト・プレス
クレジット関係はプロモ盤と同じ。
レーベルはオリーブで左のA&Mロゴが大きい。

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Runoutは下記の通り。

Side A: A&M SP3555-M3 -EX (MR) Δ17883(15)
Side B: A&M SP3556-M3 -EX (MR) Δ17883-X(12)


3 Pitman工場産のファースト・プレス
クレジット関係はモナーク工場産のファースト・プレスと同じだが、レーベルはブラウンで左のA&Mのロゴが小さい。

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Runoutは下記の通り。

Side A: A&M SP3555-P1
Side B: A&M SP3556-P1

当然、同じクレジットのTerre Haute工場産ファースト・プレスも存在する。ボクは持っていないがDiscogsで確認できる。


4 Terre Haute工場産のセカンド・プレス
Terre Haute工場産なのに、A&Mロゴが大きいオリーブのレーベルが使用され、1曲目の”Yesterday Once More”にだけ“Sweet Harmony Music”クレジットが太字で追加されている。

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Runoutは下記の通り。

Side A: T1 A&M SP3555-T1
Side B: T1 A&M SP3556-T3

まったく同じレーベルでPitman工場産ものもDiscogsで確認できる。
Monarch工場産は確認できなかったが、おそらく存在するんじゃないだろうか。
このレーベルはMonarch工場で応急的に作られ、PitmanやTerre Hauteにも送られて使用されたものと考えられる。


5 Monarch工場産のサード・プレス
MonarchなんでレーベルはオリーブでA&Mロゴが大きい。
1曲目の”Yesterday Once More”だけでなく最後の”Reprise”にも“Sweet Harmony Music”のクレジットが追加されている。太字ではなく、通常字体だ。

20190210-09.jpg
20190210-10.jpg

Runoutは下記の通り。

Side A: A&M SP3555-M3 -EX (MR) Δ17883(14)
Side B: A&M SP3556-M3 -EX (MR) Δ17883-X(14)

このクレジットのブラウン・レーベルでPitman工場産やTerre Haute工場産が存在するのかは不明である。
ブラウンからホワイトにレーベルが切り替わった後のPitman工場産にこのクレジットのものが存在することはDiscogsで確認できる。
ちなみに、ホワイト・レーベルの盤には“Sweet Harmony Music”クレジットがないものが存在するが、これはミスというより、どこかの時点でこの会社自体が消滅して、そのためにクレジットも消えたんじゃないかと思う。


音質比較

ジャケットの内側にクレジットされているように、このアルバムはバーニー・グランドマン(Bernie Grundman)によるマスタリング・カッティングである。
僕が所有している5枚とも、すべて彼のカッティングであることは、Runoutの筆跡鑑定でわかる。
だから、どの盤の音質も一定水準をクリアしている。

どれが一番音が良いかといえば、そりゃホワイト・レーベルのプロモ盤だが、Monarch工場産ファースト・プレスもそんなに大差はない。プロモ盤のほうが、若干キレが鋭いって程度の違いである。

確かに手持ちのファースト・プレスはマト3なのだが、マト1とメッキ処理番号(Δ17883てやつね。)が同じだし、さらに、そのメッキ処理番号が、プロモ盤のB面よりも若いことを考えると、マト3までは同時にカッティングされてメッキ処理にまわされたんじゃないかと推測される。
(逆に、プロモ盤のB面は、バンドを切る処理をするために、あとからカッティングしなおされたものと推測される。)
だから、マト1もマト3も(A面にマト2があるのかは不明。B面については、DiscogsにDJ VERSIONではないマト2が出ているので、それは存在するのだろう。B面のマト1は存在しないかもしれない。B面のマト1も存在するそうである。)そんなに変わらないんだと思う。

Pitman工場産のファースト・プレスも、鮮度的にはそんなに変わらない。
うちにあるのは偶々両面マト1だが、これまた多少進んでいてもそんなに変わらないと思う。
もっとも、MonarchとPitmanの差はあるが、これは好みの差だ。
ふんわりと音場が広がるMonarchに対して、Pitmanの音場はタイトだ。
僕はMonarch工場産が好みである。

Terre Haute工場産のセカンド・プレスは、やはり少し鮮度感が落ちるが、楽器の分離はまだ十分に明快だし、そんなにがくんと落ちる感じでもない。
ただ、カレンのボーカルの音像が微妙に小さい。Monarch工場産やPitman工場産のファースト・プレスが目の前でカレンが歌っているようであるのに対して、Terre Haute工場産のセカンド・プレスは、ちょっと遠くなる。

5枚の中では相対的にがくんと落ちるのが、Monarch産サード・プレスである。
ふんわりと広がる音場やボーカルの音像などはファースト・プレスと変わらないが、いかんせん鮮度感がかなり落ちる。ボーカルや個々の楽器の音色が少々曖昧になって、分離も明快ではなくなる。

まぁ、このあたりの差は、解像度の高いシステムで聴いてればでっかい差に聴こえるだろうし、雰囲気重視のシステムならそんなに差は感じないって程度のものだと思う。
どの盤で聴いても名盤は名盤だし、バーニー・グランドマンのこのアルバムのカッティングは、かなりの冴えを見せてると思うよ。
posted by 想也 at 00:00| Comment(0) | Carpenters | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月26日

Close to YouのUSオリジナル

<些末なことではありますが、新たに発見したことがありますので、追記しました。2018年6月26日>

ツイッター上で、カーペンターズ(Carpenters)"Close to You"のUSオリジナル(A&M Records ‎SP-4271)は、表にA&Mロゴのないものが初盤ジャケットでいいのかという質問を受けた。

ボクはこのUS盤を2枚持っているが、どちらにもジャケット表にA&Mロゴはない。


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でも、Discogsを見てみると、確かに表ジャケット右上のレコード番号A&M ‎SP-4271表記の下あたりに、A&Mロゴのあるものが存在する。

ちょうどこのあたりだ。


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ボクの持っているものには、A&Mロゴはない。

調べてみると、このA&Mロゴのないものが初盤ジャケットでよさそうなのだが、レーベル上のパブリシャー表記に変遷があって、初盤鑑定にはそちらのほうが重要だという情報がひっかかってきた。

まずはジャケットをひっくり返してみよう。


20180624-3.jpg


ここに表記されているパブリシャーが初盤リリース当時のものだ。
つまり、この裏ジャケットと同じパブリシャー表記なら初盤ということになる。
重要なのは、次の2点である。

① A4のパブリシャーが"Faithful Virtue Music Co., Inc."であること。
(後に、"Koppelman & Rubin Music"にかわる。※)
② Richard Carpenter/John Bettisの楽曲(A3, B3, B4, B6)のパブリシャーが"Almo Music Corp. ASCAP"であること(後に、"Irving Music, Inc. BMI"にかわる)。

※モナーク・プレスには、②の条件を満たしていて、かつ、①のパブリッシャー表記のないバージョンがあることがDiscogs上で確認できるが、ジャケット的にもMatrix的にも「②の条件を満たした①“Koppelman & Rubin Music"表記」盤よりレイトのものなので、「②の条件を満たした"Koppelman & Rubin Music"表記」が利用されていた時期に、一時的に"Koppelman & Rubin Music"表記が欠落していたことがあった、と考えざるを得ない。

さて、それでは、ボクのもっている2枚を見てみよう。

一枚は、ピットマン・プレスでMatrix末尾はP3/P2である。

20180624-4.jpg
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①②どちらの条件も満たしている。
どうやら初盤のようだ。

もう一枚は、モナーク・プレスでMatrix末尾はM2/M2である。


20180624-6.jpg
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②の条件は満たしているのだが、A4のパブリシャーは"Koppelman & Rubin Music"なので①の条件は満たしていない。
くぅ・・・残念!

レーベル上のA&Mロゴの大きさが違うが、手持ちのA&M盤を確認したら、ピットマンやテレホート産は小さいロゴ、モナーク産は大きいロゴだったので、地域差であって、時間的な前後関係はないと思う。

ってことで、手持ちは、ピットマンのファースト・プレスとモナークのセカンド・プレスだということが判明した。

この時期のA&Mのオリジナル工場はモナークのはずだから、モナークのほうがファースト・プレスだったらよかったのになー

さて、では、音質の話である。
マスタリングは、A&Mだし、Matrixの筆跡鑑定からも、Bernie Grundmanだと思う。
初期盤であれば、素晴らしい音で鳴るはずのレコードなのだ。

ちなみに、ボクはずっと、モナーク・プレスのほうが音が良いと思っていてそればっかり聴いていた。
しかし、最初に手に入れたのがピットマン・プレスで、後にMatrixの数字がより若いモナーク・プレスを手に入れたので、ボクの判断はプラシーボ効果の可能性もある。

なにしろ、モナークはセカンド・プレス、ピットマンはファースト・プレスなのだ。

ってことで、あらためて比較視聴してみたのだが・・・
結論は変わらず(笑)

どこをどう聴いてもモナーク・プレスのほうが鮮度が高い音がする。
個々の楽器、ボーカル、コーラスが綺麗に分離して、広い空間に浮かびあがるのである。
それに対してピットマンは音の輪郭が滲んだ、少し歪みっぽい音だ。

もちろん、ピットマン・プレスが一般に歪みっぽい音なわけではなく、たまたま手持ち盤のスタンパーが摩耗してたんだろう(盤の状態に大差はないので)。

それにしても、ここまではっきりとモナーク・プレスが良いと、うちのピットマンがホントにファースト・プレスなのか疑いたくなる。
案外、①のパブリシャー変更はモナークではすぐに対応したのに対して、ピットマンはなかなか対応しなかったんじゃないか。
そうだとすると、レーベル表記的にはセカンド・プレスのモナークでも、プレス時期自体はファースト・プレスのピットマンより先だったとかってことも、もしかしてありうるんじゃないかと、ちょっと妄想してみたりするのであった(笑)

いずれにしても、モナークのファースト・プレス(Matrix末尾M1/M1もあるらしい)を手に入れなきゃなー続きを読む
ラベル:CARPENTERS
posted by 想也 at 00:12| Comment(10) | Carpenters | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする