2024年12月02日

Christine McVie, Christine McVieの日本盤~Ted Jensenの5mm刻印

一昨日11月30日は、クリスティン姐さん(Christine McVie)の命日だったのだが、オール・シングス・マスト・パス(All Things Must Pass)を聴いていたら時間がなくなってしまった。

昨日は、ゆっくり音楽を聴く時間がなかったので、今夜になって、彼女のアルバムを聴いている。


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1984年にリリースされたセカンド・ソロ・アルバムの日本盤(ワーナー・パイオニア P-11454)である。
見てのとおり、帯はないが見本盤である。

2年前、彼女が亡くなったときに、このアルバムのUSオリジナルのことを書いた(https://sawyer2015.blog.ss-blog.jp/2022-12-03)が、そのときにはまだ、この日本盤は手に入れていなかった。
何故手に入れたのかと言えば、日本盤もUSカッティングなので、音質的にはUSオリジナルと遜色ないはずで、それどころか、ビニールの材質やプレス品質からすれば、USオリジナルを凌ぐかもしれないと思ったからだ。

それに、2年前の記事にも書いたことだが、テッド・ジェンセン(Ted Jensen)のカッティングなのに、USオリジナルのSTERLING刻印は6mm刻印なんである。
日本盤はどうなのか知りたくなるじゃないか(笑)

音質については、見本盤ということもあり(スタンパーは両面とも1M-A-1)、すこぶる良い。
驚いたのは、STERLING刻印が5mm刻印なんである。


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5mm刻印は、ジョージ・マリノ(George Marino)じゃないんかいっ!
(詳しくは、https://sawyer2015.blog.ss-blog.jp/2022-09-03 をどうぞ。)

って、USオリジナルとは別のカッティングなので(日本盤は、両面ともINTL SET2と刻まれている。)、別日にカッティングされたと考えれば、説明できないこともない。
テッド・ジェンセン自身の刻印は10mm刻印だが、自分の刻印が紛失や破損で使えなくて急遽他のエンジニアの刻印を借りたとして、USオリジナル用のカッティングをした日はリー・ハルコ(Lee Hulko)の刻印を借り、日本向けのカッティングをした日はジョージ・マリノの刻印を借りたってことなのかと。

このあたりのことは、今後いろいろ調べながら確認していくことにしよう。


このレコードには、非常に興味深いことがもう一つある。

これである。


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PMが、43SZ12なのだ。

これは、1983年12月に一度使用され、1984年1月に再度使用されたスタンパーで、翌2月にプレスされたものであることを意味している。
見本盤のくせにこのPMというのは、第二見本盤(第二見本盤については、https://sawyer2015.blog.ss-blog.jp/2021-10-12 をどうぞ。)ということなんだろうけど、興味深いのは1983年12月に最初に使用されているという点である。

このレコードの日本盤の発売日は、1984年2月22日なのだ。


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発売前々月に、日本での最初のプレス(テスト・プレスかな?)は行われていたんである。

まぁ、本国アメリカでの発売が1984年1月27日だから、その前月にアメリカ国内向けカッティングと同時に海外向けカッティングも行われて、各国にメタル・マザーが送られたんだとすれば、届いたらすぐにスタンパーを作ってテスト・プレスはするだろうから、辻褄は合うんだけど、そういう事情を推測させるところが興味深いでしょ?(笑)

R.I.P.
ラベル:Christine McVie
posted by 想也 at 22:41| Comment(2) | STERLINGの仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年05月12日

Foreigner, Double Visionのこと

5月号の初盤道で取り上げられたフォリナー(Foreigner)の"Double Vision"について書こうと思っていたのに、レコード・コレクターズは、まもなく6月号の発売日である。

ってことで、慌てて書くのである。


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USオリジナルの初盤について、紙ジャケ探検隊が書いていることに何か付け加えることがあるわけでもないので、別に慌てて書かなくてもいいと言えばいいのだが、個人的に、初盤道で触れられていないことに不満なことがあるのだ。

それはこれである。


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って、画像だけ示されてもわからないか(笑)

これは、日本初回盤の送り溝の画像である。
つまり、日本初回盤も、USカッティングなのだ。

マトは両面とも末尾Aで、もちろん、STERLING刻印もある。


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USファースト・プレスのジャケットには(日本盤ジャケットにも)書かれていないが、セカンド・プレスのジャケットから明記されることになるように、このレコードのカッティングはジョージ・マリノ(George Marino)の仕事なので、刻印は、彼の使用していた9mm刻印だ。
(STERLING刻印のバリエーションについては、https://sawyer2015.blog.ss-blog.jp/2022-09-03 をどうぞ。)

日本には、ラッカーではなく、マザーが送られたようで、マトもLではなくMが使用されている。


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追加プレスをまかなえるほどのマザーは送ってもらえなかったようで、Discogsを見ると、PMが8-XY(つまり1978年11月)の追加プレスで、すでにマトは1-A-23/2-A-13と日本独自カッティングになっているので、USカッティングなのは初回盤だけなのかもしれない。
ちなみに、うちのはPMが8-6で1978年6月プレスである。

ビニールの材質やプレス品質は日本盤が最高で、輸入ラッカーや輸入マザーの日本盤は、本国オリジナルを凌ぐ音質だったりするので、このレコードも日本初回盤で持っていたい一枚なのである。

しかも、このレコードには、本国オリジナルにはないオマケがついている。


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先着2万名に日本公演写真集がプレゼントされたのだ。


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この写真集、大きさ的には、ジャケットの中に綺麗におさまるので、いっしょに保存していた人も多いんじゃないかと思う。

それに、これは個人的な好みかもしれないが、ボクは、USオリジナルよりも、日本盤のほうが、ジャケットの色味が好きなのだ。

うちには、PRプレスとMOプレスのUSオリジナルがあるが、ジャケットの色味はまったく同じである。
これらUSオリジナルと日本盤とは、明らかに色味が違う。


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表ジャケットの上半分は、USオリジナルが若干赤味を帯びているのに対して、日本盤は綺麗な白黒である。


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表ジャケットの下半分は、日本盤のほうが青が強くて、はっきりしている。


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裏ジャケットも、上半分は表ジャケットと同じ傾向の違いだが、下半分は日本盤のほうが緑が強くて綺麗だ。

音質については、日本盤最強だと思い込んでいたのだが、今日、じっくり聴き比べてみたら違った。
うちにあるのは、MO(モナーク Monarch)プレスが両面ともマト末尾A、PR(プレスウェル Presswell)プレスがマト末尾B/Aなのだが、日本盤は、MOプレスより良いが、PRプレスには劣る。
鮮度感が違うし、末尾BのSide 1は重心が低くてかなり違う音で鳴る。

マト違いによる音の違いはともかく、鮮度感については、おそらく、うちのPRプレスが初期プレスでスタンパーが若いおかげだと思うのだが、US盤は若いスタンパーを探すって言っても、手がかりがないよねぇ・・・

やっぱり、一般的には、輸入ラッカーや輸入マザーの日本盤は最強だと思うのである。
(探せば鮮度抜群の本国オリジナルが存在するとしても、特にUS盤の場合、売れたレコードでは、個体差が大きすぎて・・・)
ラベル:Foreigner
posted by 想也 at 22:33| Comment(0) | STERLINGの仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年04月20日

R.I.P. Dickey Betts ~ The Allman Brothers Band, Brothers and SistersのUSオリジナル

4月18日、オールマン・ブラザーズ・バンド(The Allman Brothers Band)のオリジナル・メンバーだったディッキー・ベッツ(Dickey Betts)=リチャード・ベッツ(Richard Betts)が亡くなった。

ベッツがボーカルをとったバンド最大のヒット"Ramblin' Man"が収録されているせいか、あるいはベッツ作曲の代表曲"Jessica"が収録されているせいか、ボクのTLには、このレコードで追悼している方が多かったので、ボクもつられて引っ張り出した。


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1973年8月にリリースされたオールマン・ブラザーズ・バンド5作目のアルバム"Brothers and Sisters"である。

このレコードのUSオリジナル(Capricorn Records CP 0111)についてはいくつか書きたいことがあるのだが、追悼記事で書くのも野暮なので、またの機会に・・・

と思ったのだが、ここのところ、このブログの更新は非常にのんびりしている。
(ごめんなさいm(_ _)m)
またの機会なんて、金輪際訪れない気もする(笑)

ってことで、野暮は承知で書くことにしよう。

どこまでをオリジナルと呼ぶかは難しい問題だが、少なくともうちの盤はファースト・プレスではなさそうである。

サンタマリア工場プレスのマト末尾は1B/1Bで、スタンパーはB12/D20なので、ファースト・プレスの仲間に入れてもらえそうなのだが、そうはいかないらしい。

このレコードにはインサートが付属しているのだが、正しく"Jelly Jelly"がクレジットされているものと、間違って"Early Morning Blues"とクレジットされているものがあるというのだ(ピットマン工場プレスでも、テレホート工場プレスでも、同様に2種類ある)。

まぁ一般的に言って、間違っている方が先で正しい方が後なのだが、どうやら"Early Morning Blues"が"Jelly Jelly"に差し替えられたということらしく(だから裏ジャケットにはどちらもクレジットされていない)、その点でも、"Early Morning Blues"クレジットが先だと考えられる。
裏ジャケットの曲順やインサートの曲順が実際と異なっているし、マトには両面ともREがついているので、曲の差替えに伴って、アルバム全体の曲順の見直しも行われたんじゃないかと推測する。

そういうことを踏まえて考えると、間違って"Early Morning Blues"とクレジットされたインサートが付属しているのがファースト・プレスで、正しく"Jelly Jelly"とクレジットされているインサートが付属しているのはセカンド・プレスだと考えるのが合理的だと思う。

そのうちどこかで、"Early Morning Blues"クレジットのインサート付きと出会えるのを願うばかりである。

このレコードについては、もう一つ興味深いことがある。

マスタリング&カッティングがSTERLINGで行われていて、送り溝にもSTERLING刻印はあるのだが、この刻印なんである。


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この刻印、正確には5.5mmくらいだが、面倒なのでボクは6mm刻印と呼んでいる。
6mm刻印はリー・ハルコ(Lee Hulko)が使っていたものだが(詳しくは、https://sawyer2015.blog.ss-blog.jp/2022-09-03 をどうぞ)、両面ともLHというイニシャルは刻まれていない。

「さては、書き忘れたな。」と思ったのだが・・・


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ジョージ・マリノ(George Marino)なの?
インサートにはっきり書いてあるんだから間違いないか・・・
マリノなら、もうちょっと小さい5mm刻印のはずなんだけどなー

ここで、ボクはあることに気づいた。

STERLINGって書いてないじゃん!

そう、インサートのクレジットには、”George Marino, Record Plant, New York"とクレジットされていて、”STERLING”の文字はどこにもないのだ。

あらためて調べてみると、マリノがSTERLINGに移籍したのは1973年、その前は、The Master Cutting Roomに所属していた。
The Master Cutting Roomは、Record Plant, New Yorkのマスタリング担当部門である。

つまり、このレコードのマスタリングをマリノが依頼された時点では、彼はまだSTERLINGに移籍していなかったんじゃないか。
このレコードがSTERLINGに移籍しての初仕事(かそれに近い仕事)だったんじゃないか。
そうだとすると、彼自身のSTERLINGスタンプはまだ出来上がっておらず、ハルコのスタンプを借用することになったんじゃないか。

そんな推測をしてみたのだが、さて、真相やいかに?


R.I.P.
posted by 想也 at 21:41| Comment(0) | STERLINGの仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする