2026年02月16日

Genesis, A Trick of the TailのUKオリジナル

2月13日がリリース記念日ということで、一昨日引っ張り出したこのレコードを、今日も聴いている。


20260215-1.jpg


ジェネシス(Genesis)が1976年にリリースした7作目のスタジオ・アルバム"A Trick of the Tail"のUKオリジナル(Charisma CDS 4001)である。
ピーター・ガブリエル(Peter Gabriel)が脱退して4人になったジェネシスのアルバムということで、(「ピーターのいないジェネシスなんてジェネシスじゃない」的に)心の狭かったボクは、当時はあんまり聴かなかった。

そのせいか新鮮に聴けるので、一昨日から毎日数回聴いている。
素直になって聴けば、実に良いアルバムである。
まぁ、前作までの方が好きではあるんだけど(笑)

さて、このUKオリジナル、初盤道でも取り上げられたことがあるが(第78回「トリックだらけの”超”初盤」レコード・コレクターズ2023年10月号)、初盤判定がややこしいうえに、”超”初盤問題まである(笑)
さらに、初盤道の記事には”超”初盤問題にとって重要な送り溝の長さに誤植があって、次号の編集後記のあるページに訂正記事が載せられているので、混乱に拍車をかけている。

ってことで、情報整理もかねて、初盤道を参考に、うちの盤の初盤判定と”超”初盤判定をしてみよう。


20260215-10.jpg


まずはレーベルである。
初盤は、パブリシャーがCopyright Controlになっている。


20260215-5.jpg


パブリシャーは、その後、Fuse Music Ltd.になる。


見開きジャケットは表側だけでなく内側もテクスチャーで、厚紙のピクチャー・インナースリーブが付属する。


20260215-3.jpg


テクスチャーの感じやインナースリーブの厚みがわかるように、少し拡大してみよう。


20260215-4.jpg


ジャケットは、Charisma Recordsの住所が変わる関係で、いつ頃製造されたものであるかがわかる。
1976年の初盤では、Charisma Recordsの住所は、"37 Soho Square"だ。
うちのも"37 Soho Square"である。


20260215-6.jpg


Charisma Recordsの住所は、1976年中に"70 Old Compton Street"にかわる。
さらに翌1977年には"90 Wardour Street"にかわる。

じゃ、"37 Soho Square"ならファースト・ジャケットでいいのかというと、"37 Soho Square"ジャケにも二種類あるからややこしい。

内ジャケ右側右下隅に"Printed in The Netherlands"という表記があるものと、内ジャケ左側右下隅に"Printed and made by Bruin BV - Zaandam/Holland"という表記があるもの、という二種類だ。

初盤道では、前者をファースト・ジャケット、後者をセカンド・ジャケットとしている。


20260215-7.jpg


「ちぇっ、うちのはセカンド・ジャケットかよー」と思ったのだが、Discogsを見ると、確かに、"Printed and made by Bruin BV - Zaandam/Holland"表記で"70 Old Compton Street"(引越し後の住所)ジャケも確認できるのだが、"Printed in The Netherlands"表記で"70 Old Compton Street"ジャケも確認できるのだ。

ってことは、どっちも最初からあって、前後関係はないんじゃ?

前作"The Lamb Lies Down On Broadway"の初盤ジャケットもBruin BV - Zaandam/Holland製だったから、基本的にはBruin BVに発注したものの、生産能力の関係ですべては受注してもらえなくて、オランダのほかの小さな印刷会社に足りない分を発注したのが"Printed in The Netherlands"ジャケだったってところなんじゃないかと思うのだが、どうだろう?

ボクの推測が正しければ、うちのも初盤ジャケということになる。


さて、さらにややこしいのは、”超”初盤問題である。
上述したように、初盤道の記事に誤植があった(次号で訂正)こともあり、混乱している人もいるんじゃないかと思う。
っていうか、ボクが混乱していた(笑)

"超”初盤問題というのは、このレコードにはマトA1/B1が二種類あって、初回マトはA1/B1ではあるものの、レイトで別カットのマトA1/B1が現れるのだが、初回マトA1/B1に比べるとラウド・カットなので、リカッティングではなくて、ラウドすぎてボツ・カッティングになったものがひょっこり後から出てきてしまったものなんじゃないか、というものである。

シン・リジー(Thin Lizzy)の"Live and Dangerous"みたいなこと(詳しくは、https://sawyer2015.seesaa.net/article/2017-08-18.html をどうぞ。)が、このレコードでも起きたんじゃないかというわけだ。

では、初回マトA1/B1(ノーマル・カットと呼ぶ。)と別カットのマトA1/B1(ラウド・カットと呼ぶ。)は、どのように識別するのか。

このレコードはトライデント・スタジオ(Trident Studios)でのカッティングなので、マトのあとにTという刻印があるのだが、ノーマル・カット盤のA面では、そのTの後の数字が1の場合鏡文字(反転文字)になっていて、送り溝の幅は6.5mmほどだ。
B面の方は、とくに際立った特徴はなく、送り溝の幅は16.5mmである。

一方、ラウド・カット盤のA面では、Tの後の数字が1の場合でも鏡文字ではなく、送り溝の幅は5mmしかない。
B面の方は、Bの前に*があり、これは間違ってAと刻印したものを消したもので、送り溝の幅は15mmである。

送り溝の幅が両面とも1.5mmほど違っているし、B面にいたってはマトのBの前に*があるので、別カッティングであることは歴然としている。

では、うちの盤はどうだったのか。


20260215-8.jpg
20260215-9.jpg


A面は1が鏡文字で送り溝幅が6.5mmということはノーマル・カットである。
B面は*があって送り溝幅が15mmなのでラウド・カットだ。

ミックスかいっ!

ラウド・カット盤は、ラウド・カットで"超”初盤という点ではちょっとうれしいが、レイトという点ではちょっと残念である。
ノーマル・カット盤は、初盤という点ではちょっとうれしいが、”超”初盤が存在すると思うとちょっと残念だ。

ミックスだと、初盤の喜びはなくなり、ラウド・カットの喜びは半減、レイトの残念感は倍増である(シクシク)

いやでも、ちょっと待て。
うちの盤のジャケットは"37 Soho Square"だし、ボクの推測が正しければ(もちろん正しいかどうかはわからないが)、初盤ジャケットの一種である。
そこから考えれば、ラウド・カットというのも、必ずしもレイトと考えなくてもいいんじゃないかという気がしてくる。

そもそもマト1が二種類あるというのは、トライデント内でエンジニアにカッティングを振り分けたときに、間違って二人のエンジニアに振り分けてしまったことに起因するんじゃないかと推測する。
いくらなんでも、一人のエンジニアが、同じ機会にマト1を二つも切らないと思うのだ。

で、これは通常あまり起こらない間違いだから、気づかれなかった。※
ラウド・カットのマト1はボツだったわけではなく、ノーマル・カットのマト1にGOが出た時点で、区別できずにメッキ処理にまわされてしまったのだ。

マト1がボツなら、マト2がカッティングされたはずだ。
マト1が二つあることに気づいていてどちらかを採用するということになったとすれば、混乱を避けるために、どちらかに修正を入れるだろう。
そう考えると、ボクの推論には一応の合理性があると思う。

ってことで、ボクは、初盤ノーマル・カットも、”超”初盤ラウド・カットも、最初から存在していたんじゃないか(つまり、どっちも初盤)という仮説を立てているのだが、どうだろう?

※ 通常あまり起こらない間違いなのかは、トライデント・スタジオの場合、実は微妙である。"Duke"にもエンジニア違いでマト1が二種類あるのだ(詳しくは、https://sawyer2015.seesaa.net/article/2023-03-29.html をどうぞ)。Dukeにも、同じ間違いが起こっていた可能性がある。


20260215-2.jpg
ラベル:GENESIS
posted by 想也 at 00:16| Comment(5) | Genesis | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年03月29日

二つのマト1~DukeのUKオリジナル

<Kaori Eさん、ノイさん、ネイトさんから、マトA1/B1に関する情報を頂いたので追記しました。>(2023年3月31日11:00)

3月28日は、ジェネシス(Genesis)の10作目のアルバム"Duke"のリリース記念日である。
USでは1980年3月24日にリリースされたらしいが、UKでは3月28日にリリースされたんだそうだ。

ってことで、UKオリジナル(Charisma CBR 101)をターンテーブルに載せた。


20230328-02.jpg


初盤には、期間限定の特別価格であることを示すステッカーが貼ってある。
まぁ、リムーバブルなので、剥がされちゃってることもあるだろうから(小さい子どもはシールを剥がすの好きだよねぇ)、ステッカーが貼ってなければ初盤じゃないとは言えない。


20230328-03.jpg


ただ、ご覧の通り、内ジャケの"DUKE'S TRAVELS/DUKE'S END"のところにあるイラストをシルエットにして使っているステッカーなので、やはり、このステッカーはどうしても欲しいよねぇ。

ステッカー付きなので、うちの盤も、おそらくリリース日に店頭に並んでいたものという意味では初盤だと思う。
ただ、一番最初にカッティングされた盤かというと、そうではない。

うちの盤は、マトがA2/B1なのだが、両面とも、送り溝にはこんなサインがある。


20230328-04.jpg


この"S.A."というのは、当時トライデント・スタジオ(Trident Studios)にいたスティーヴ・エンジェル(Steve Angel)のサインなのだが、内ジャケットには、同じトライデント・スタジオのレイ・スタッフ(Ray Staff)がマスタリングしたと明記してあるのだ。

ってことは、やはり、レイ・スタッフのカッティングした盤というのが存在しているに違いない。
うちのはSide 1がマト2だから、マト1がレイ・スタッフのカッティングということだろうか?

Discogsを確認すると、確かにそういう盤が存在する。
つまり、A1/B1で、Side 1がレイ・スタッフ(Raysというサイン入り)、Side 2がスティーヴ・エンジェル(S.A.というサイン入り)という盤である。

しかし、Discogsには、A1/B1で両面ともレイ・スタッフのカッティングという盤も登録されているのである(Kaori Eさんとノイさんがお持ちだということで、確かに存在するという裏がとれました)
つまり、Side 2のマト1には、レイ・スタッフがカッティングしたものと、スティーブ・エンジェルがカッティングしたものの二種類があるのだ。
(ネイトさんが、A1 Rays/B1 S.A.の盤をお持ちだということで、A1/B1には、少なくともRays/RaysのものとRays/S.A.のものの二種類があることは、裏がとれました。もし、A1/B1で、S.A./S.A.をお持ちの方、あるいは、S.A./Raysをお持ちの方は、ぜひ情報をお寄せください。Side 1のS.A.がホントに存在しているのか裏がとれていないのです。)

それどころか、注意深くDiscogsの登録を見ると、S.A.サイン入りのSide 1のマト1も登録されているんである。
この登録が誤登録でなければ、Side 1のマト1にも、レイ・スタッフがカッティングしたものと、スティーブ・エンジェルがカッティングしたものの二種類があることになる。

マト2以降はすべてスティーヴ・エンジェルのカッティングのようだが、マト1は二種類あるらしい。

しかし、なんでまた、こんな紛らわしいことが起きたんだろうね?
ラベル:GENESIS
posted by 想也 at 00:48| Comment(0) | Genesis | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年02月13日

Nursery CrymeのUKオリジナル

<"JB"について新たな情報を入手したので、追記しました。>(2025年2月14日)

昨日がスティーヴ・ハケット(Steve Hackett)の誕生日で、今日はピーター・ガブリエル(Peter Gabriel)の誕生日ということで、今宵もジェネシス(Genesis)を聴くのである。

昨日は"Foxtrot"だったので、今日は、一つ前の"Nursery Cryme"だ。


20230213-01.jpg


もちろん、UKオリジナル(Charisma CAS 1052)である。
初回盤はピンク・スクロールと呼ばれるレーベルで、マトは1U/2Uだ。
両面1Uは存在しないはず。

うちの盤のマザー/スタンパーは1GL/1GAで、一桁スタンパーとはいかなかったが、まぁ、よしとしよう。

"Nursery Cryme"を選んだのには、もう一つ理由がある。
土曜の集まりのときに、urbantango82さんが"Nursery Cryme"のフランス盤を持ってきたんである。
「『サルマシスの泉』のメロトロンが歪まないんだよ」と。

フランス盤も、確かに綺麗な音で、悪くない。
ただ、ボクは、特に良い音というわけではないが、ちょっと湿り気のある独特の質感をもったUKオリジナルの音の方が好きだ。
あくまで個人的な好みだが、このアルバムの内容には、UKオリジナルの音が合っている気がするんである。
それに、使用カートリッジのせいか、『サルマシスの泉』のメロトロンの歪みというのも、ボクはあんまり気になったことがない。

そういや、このレコードのカッティングって誰なんだろう?
Side 1には"HILTOP"、Side 2には”JB”というサインがあるが、他で見た記憶がない。


20230213-02.jpg
20230213-03.jpg


Discogsでは明らかにされているかと見てみたら、ちゃんと解明されていた。

"HILTOP"というのは、トライデント・スタジオ(Trident Studios)のエンジニアだったBob Hillが使っていたサインだという。
Bob Hillのサインといえば"Bobil"だと思っていたが、"HILTOP"なんてのもあったのね。

Discogsには、"JB"についての言及がないのだが、”JB”の"B"はやっぱりBobの"B"なんじゃ?
トライデントに当時在籍していたエンジニアに、他に該当しそうな人も見当たらないので、おそらく両面ともBob Hillのカッティングだと思うのである。

Discogsを確認したら、"JB"について言及されていた。
John Burnsというエンジニアらしい。
もっとも、ペカム(George Peckham)がカッティングした"Foxtrot"にエンジニアとしてクレジットされているので、カッティング・エンジニアというわけではなさそうだ。
ってことで、やっぱり、Side 2のカッティングもBob Hillだと思うのである。
posted by 想也 at 22:58| Comment(0) | Genesis | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする